マッチングアプリは難しい
社会人に恋愛は難しい。
昔、5歳上の従兄弟の太郎君が言っていた言葉だ。
冗談言うなよと笑い飛ばしていたが、27歳になってみると、その言葉が真実であることがよく分かる。
まあ、俺彼女できたことないんですが。
本当に社会人は出会いがないのだ。職場はむさ苦しい野郎どもばっかだし、休日もたまーに友達の女の子(野郎含む)と遊ぶだけ。気が付けばアラサーまで後少しの命となっていた。
後、太郎君はこんなこと言っているが、先日美人な奥さんと結婚したばかりだ。おめでとう。
学生時代は嫌でも出会いはあった。
俺の高校は男女比が3:7くらいあって、嫌でも女の子との関わりはあった。
しかし、それも彼氏彼女の関係に至ることはなく、俺は悶々とした日々を送りながら大学生になった。
大学なら彼女できるだろう。そんな淡い期待を抱いて。
大学生になって多少はお洒落に目覚め、髪を少し染めてみたり服にこだわったりして、男女混合のテニスサークルに入ることで少しは女の子の友人は増えた。
そう、友人は増えた。
彼女は出来なかった。ここ重要です。
「宮野君っていい人だけど……」
「友達なら大丈夫だよ!」
「ごめんなさい! 宮野君のことはいいと思ってるけど、友達として関係を続けたいの!」
分かってますよ。代弁すると、友達以上の関係にお前はなれねーよバーカってことだろ? 告白30連敗の実績を持つ俺だが、皆決まって友達でいたいと仰るのだ。優しすぎるのか俺? もっとイケイケオラオラの男になれば良いのか?
そんなことを考えているうちに俺の大学生活は終わっていた。いや、まだ社会人がある! 待ってろよ俺の薔薇色パラダイス!
そして現在、俺はマッチングアプリの画面を鼻くそをほじりながら眺めていた。
不細工という訳ではないが、お世辞にもイケメンとは言えない顔。フツメン、いや、地味メンというのだろうか。俺の顔はそんな感じだ。
女の子の目にも止まらないのか、国内会員数No. 1のアプリにおいても自分のいいねの数は5。この不動の数字は巨大戦艦でも破られることはないだろう。
『ピロリン』
おめでとうございます! カナさんとマッチングしました!
え? マッチした! 何ヶ月ぶりだよオイ!
マッチングしたことに歓喜しながら、俺は女の子のプロフィールを眺めた。
カナ。23歳。職業保育士。
マッチングアプリ初心者です! 分からないので色々と教えてください!
ありきたりのプロフィールだが、顔はそこそこ可愛い。俺のテンションは上がりに上がっていた。
「初めまして! 宮野って言います! よろしくお願いします」
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3日経っても、カナさんからはメッセージは返ってこなかった。
チクショー! 話す気ないなら最初からいいねしてくるなよ! バーカ!