さくらといっしょのピクニック
私の大切な人が描いた桜の絵から生まれた作品です。
緑の野原に立っているたくさんのさくらの木が、淡いピンク色の花びらを空に飛ばしているシーンを想像してお楽しみください。
「うわぁ、まんかいだわ!」
「そうだねぇ、ちょうどみごろだねぇ」
うさぎのミミ子とクマのクマ吉は、たくさんのさくらの木がまあるく立っている緑色の野原にいました、
きらきらした水色の空に、あわいピンクのはなびらが、ふうわりふわふわ舞っています。
「きれい……」
そうつぶやくミミ子に、
(そう思うミミ子さんの心もきれいだよぉ。もふもふしてかわいいしねぇ)
と、クマ吉は口をもごもごさせました。
「え?なに?クマ吉さん」
「えっ?ううん、何でもないよ」
あわててごまかすために
「ここらへんで、お弁当をたべようか?」
と、早口でいいました。
「うん。じゃ、ここにシートをひこうね」
とミミ子。
てきぱきシートを広げるミミ子にに対して、クマ吉はのんびり大きな背中からリュックを下ろしました。
「クマ吉さん。今日はおにぎりとにんじんのフライとスモークサーモンのサラダを作ってきたのよ」
「やったー!ありがとう、ミミ子さん。ぼくは木の実のケーキを焼いてきたよ!」
二匹は、シートの上で仲良くお弁当を食べ始めました。
ほわほわと優しい風が、さくらの花びらを運んでいきます。
二匹とも、とてもとても幸せでした。
お弁当を食べ終わり、しばらくすると、ミミ子は遊びたくてうずうずしてきました。
クマ吉とさくらの花びらを追いかけて、緑色の野原を駆け抜けたら、どんなに気持ちがよいでしょう。
「クマ吉さん、私とさくらの花びらといっしょにかけっこしよう~」
一方、クマ吉は大きいので、体を動かすよりゆっくり一つの所にいるのが好きなクマでした。
「え~、ぼく、お腹がいっぱいになったし、お昼寝でもしたいなぁ。ぽかぽかのお日様にてらされて、さくらの木の下で眠るのは、きっと気持ちがいいよぉ」
「え~、わたしはクマ吉さんと遊びたい!」
「ぼくは、ミミ子さんとお昼寝したい……」
「「…………」」
うふふふふ、うふふふふ、あはははは、あはははは。
その時、風に乗って、小さな声が聞こえました。
『あのね。ぼくね。お日様にあいさつしたいの』
『わたしはね、高い空にぐんぐんのぼって雲をピンク色にしたいの』
二匹は、耳をすましました。
『雲の上には何があるとおもう?』
『きっとふわふわのまっしろなお城があるとおもう』
『お日様が雲に隠れたときって、もしかしてお城にいるのかな?』
『きっとそうよ。お城でちょっとお茶でものんでいるのかもしれないわ』
『お茶にピンク色の花びらをうかべてね』
『いきたいね。雲の上』
『風さん、はこんで』
『あちらの小川に流れるのも、楽しそう』
『花びらがゆらゆらうかんでいてきれいだ』
『さっきちいさなお魚のうろこがきらりと光ったのよ』
『海までいけるかな?』
うふふふふ、うふふふふ、おはははは、あはははは。
なんてかわいくて、楽しそうなおしゃべりなのでしょう!
二匹は、顔を見合わせました。
そして、しばらく考えてからいいました。
「クマ吉さん、わたし、かけっこはがまんして、クマ吉さんとたくさんたくさんおしゃべりすることにする」
「ミミ子さん。ぼくもお昼寝はがまんして、ミミ子さんとたくさんたくさんおしゃべりすることにする」
ミミ子とクマ吉は、にっこり笑いあって、緑色の野原とさくらの木が夕焼け色にそまるまで、おしゃべりをつづけました。
うふふふふ、うふふふふ、あはははは、あはははは。
あの小さな小さなおしゃべりも、ミミ子とクマ吉と同じに、やっぱり夕方まで続いたのですって。
おわり
お読みくださり、ありがとうございました!
ちなみに同じ絵からインスピレーションを受けた作品として、『桜と涙とありがとう』がございます。そちらもどうぞ宜しくお願いいたします。
『織花童話集』は、次回でひとまず完結となります。