きらわれものだって、すごいんだ!
この世で嫌われ者と思われている存在に光を当てたくて、この童話を書きました。
「タケシがいると、うまくいかないかのうせいがあるぞ」
「なんでタケシが、同じグループなんだよ~」
「しかも、あいつ暗いしなぁ」
ぼくはクラスメイトにいわれたことを思いだして、思わずおれたえだでイライラと畑の土をほりかえしたけれど、やっぱりすぐにしゅんとした。
(ぼくがどもるから、農作物をしらべるグループ発表はうまく行かないと思われているんだ)
畑では、おじいちゃんとお父さんがニコニコ話をしながら農作業をしている。
(はぁ、ぼく、どうしたらいいんだろう?)
その時、カがいっぴき、ぼくのうでにとまった。
いつもならおもいきりひっぱたいているところだけれど、おちこんでいたこともあって、そのままにした。
「カよ。ぼくと同じでお前もきらわれものだな」
それを聞いたお父さんが、すかさずいった。
「タケシ、何かあったのか?」
「ううん。何にもないよ」
「そうか、それならいいんだが。カはたしかにきらわれる存在だけれど、すごい力をもっているんだぞ。カの幼虫のボウフラは、水をよごすバクテリアを食べて水をきれいにしてくれているし、血をすうハリは、ちゅうしゃしてもいたくないハリのしくみにつかわているのだよ」
「え!?カってすごいんだねぇ」
ぼくの血をすってヨロヨロととんでいったカにそんなすごいところがあったなんて。
「ざっ草もきらわれものだけどな、これもまたすごいぞ」
草とりをしていたおじいいちゃんがいった。
「ざっ草は、根っこからとうぶんを出してび生物をあつめて、土をゆたかにしているんだよ。それにぬけたらぬけたで、土にかえってまた農作物をそだてるんだ」
「び生物ってなに?」
「び生物は、目で見ることがなかなかできない小さな生きもののことさ」
「そうなんだ。それもすごいね!ざっ草、どこでも生える根性だけじゃないんだね!」
「そろそろ麦茶をのんで、おしまいにしてくださいな。今夜は台風がやってくるそうですよ」
お母さんが麦茶とお茶がしをもって、やってきた。
「台風!ねぇ、お父さん、台風もきらわれものだけれど、もしかして台風にもすごいやくわりがあるの?」
「あるぞ。台風は海の水を風なんかでかきまぜて、酸素をいきわたらせたり、ちょうどよい海水の温度にしたりして、魚たちが住みやすいかんきょうを作っているのだよ」
「そうなんだ!なんだか自然ってすごいなぁ!ぼくにもそんなすごいところがあればよかったのに」
お母さんが、ボクの顔をのぞきこんだ。
「タケシ。なやみごとがあるなら、お母さんに話して」
「そうだぞ。家ぞくはいつでもみかただからな」
「うん。じつはね。こんどぼく、学校で地いきの農作物をしらべて発表するんだ。一位をとりたいって、みんなはりきっている。でも、ぼく人前にでるとどもるでしょう?だから……」
お母さんは、そっとぼくをだきしめた。
「そうね。どもるのはすぐにはなおらないものね」
「なら、こんなあんはどうだ?」
と、お父さんがいった。
「発表はなるべくかんたんで少ないところにしてもらう。そのかわり、本をあつめたり、ききこみちょうさをしたり、しらべることで一生けんめいにがんばるんだ」
「そうだ、それがいいわ。タケシはこまかい作業がとくいだから、そのもちあじを生かせばいい」
「たしかに、ぼくしらべることやまとめることがとくいだよ!」
(ぼくにも、できることあったんだ!)
おじいちゃんが、ニコニコしていった。
「それまでにどもるのが少なくなるよう、家ぞくの前でも何度も練習するといいさ」
「うん!ぼくも、カやざっ草や台風みたいにきらわれても、やるべきことをするよ」
「あら?タケシ。きっと今話したことを実行すれば、きらわれることなんてないわよ」
「そうだね。ぼくもカやざっ草、台風をきらわないよ!」
「アハハハハハ!そうだな。この世でむだなものなんてないのかもな」
「アハハハハハ!なんだかぼくもやる気がでてきたぞ!」
ぼくらのわらい声と話し声は、夏の青い空にとどくのではないかというほど晴れやかにひびきわたった。
最後までお読みくださり、ありがとうございました!