どうしてもドラゴンスレイヤーが欲しい
『ドラゴンスレイヤー』
「剣と魔法のファンタジー世界では定番とも言える武器です。
竜の鱗を裂き、牙を砕き、命を狩り得る・・・
私はその剣を振るうことを夢見ていたんですよ!」
「・・・なるほど」
私こと、菱村竜治は目の前の存在に熱弁していた。
煌びやかな女性の姿、まごうことなく女神と思しき者へ。
「貴方の望むとおりの力を与え転生させる、それが此度の私の勤めです・・・しかし」
女神は言い淀んで。
「お勧めしません」
「えっ!?なにゆえ!?」
「貴方がこれから征く世界には・・・竜がいないのです」
「そんな!?」
「正確には、存在したのですが皆封印されています」
「ならば、私が封印を解いてドラゴンスレイヤーで全ての竜を滅ぼせばいいじゃありませんか。燃えてきた」
「無理です。貴方の望む武器を与えたならば、貴方自身に竜に抗う力までは与えられません。よしんば封印を解いたとして、竜の抵抗があらば為す術もなく滅ぼされるでしょう。もっと汎用な、絶対的な攻撃力や防御力などを望むべきです」
「ぬう・・・いいえ!私は何としてでもドラゴンスレイヤーが欲しいのです!これは譲れません!一度死んだ身、憧れの武器を手に死ねるなら本望です!」
「しかしそれでは世界の救済が・・・ええいもう、分かりました。貴方の望む力、いえ剣を与えましょう。そして望むままに生きてください」
「やった!ありがとうございます女神様!」
(上位神の予言ではこの者は救世の勇者と成る筈であったが・・・否や、竜の封印を解くなどと、世界を破滅に導き得る不穏分子だ・・・ならば、もはや使い道のない『ドラゴンスレイヤー』なる剣を与えて早々に退場願おうか。次なる勇者の召喚の準備を進めねば)