第一話:実力調査
ぐだぐだですが、読んで頂けたら幸いです。
「なぁ、ローイッ!! 一緒に昼飯食べに行こうぜ!!」
「あぁ。……どこでだ?」
先刻まで気絶していたはずなのに、かなりのハイテンションでロイを誘うレクに対し、そのテンションにはもう見飽きた、と言わんばかりに素っ気なく返すロイ。
「んーー、食堂とかは?」
「……朝夕以外は閉鎖だ」
「……じゃあ、じゃあ、バーベキュー場みたいな所は……ないの?」
「ない」
そんなやり取りが15分ほど続いた後、先に我慢ならなくなったのレクの方だった。
「だーーっ!! もうっ!! 結局は、材料もなし、食べる場所もなしで昼飯は食べるなってことかよ!! 俺は腹が減ってるんだ! メーーシーーッ!!」
この台詞だけ聞けばどこの幼い子供が叫んでいるのかと勘違いされかねない言葉を大声で言って、そのまま地面に倒れこんだ。
ロイは何気なく周囲を見回す。 ヴァインは、どこかに行ってしまったきり見つからない。
アースは、木の日陰の下で寝ている。
カルムは、木に上り精神統一をしている。
リアスは、分厚い本に読みふけっていたのだが、ふと、ロイとレクの方へと目をやった。
「レク、君がそんなに腹を空かせている理由は、一重に君が叫びすぎているだけだと僕は思うのだが……」
「それは違うのだよ、リッ君!!! ボクの腹が減っているのは、一重にあのバンちゃんに手加減無用といわんばかりに吹っ飛ばされたからなのだよ!!」
レクはリアスの真似をして眼鏡を上下する動作をやりながらリアスに反論した。
「き……君までこの眼鏡を侮辱するのか!! 折角人が食べないから昼食を君にあげようとしていたというのにっ!!」
「そうなの?」
リアスは高速で眼鏡を上下させ、顔を真っ赤にしながら叫んだ。どうやら眼鏡の上下運動はリアスの気持ちの高ぶりによって速くなっていくらしい。レクは目を輝かせながら起き上り、リアスの方を期待をこめた目で見つめた。
「そ……そうなのだよ。一応、家の者に持たされた昼食があるのだが、結局僕はエネルギーをそこまで消費していない。だから、僕に昼食は不要なのだ。そこで、君にあげようと思ったのだが、」
「おおおおお!! リッ君、リッちゃん、リー君、最高だぞっ! さっすが、眼鏡をかけているから用意もいいんだなっ!! ホラ、さっさと頂戴っ!!!」
レクは目を輝かせ、両手をリアスに向けて突き出す。
「しかし、僕の眼鏡を侮辱しておきながら昼食をあげるのも癪に障るというもので、ですね、レク君?」
リアスは侮辱された眼鏡を上下に忙しなく動かしながら口元を吊り上げる。
「眼鏡なんだから仕方ねぇじゃん!! てかメシ!! 早く寄越せ!!」
レクは早く早くとリアスを急かす。
「仕方なくありません!! 眼鏡は僕の象徴ではありますが……」
リアスが眼鏡の良さについて語りだした!! レクの笑顔がだんだんと消えていく。
するとどこからともなくカウントダウンが始まった。リアスはいまだに語り続けている。
3、2、1、0ぶちっ☆
何かが切れた音がロイの耳に聞こえた。
「眼鏡は僕が〜〜って、聞いてますか? レク君?」
「てめぇ、俺が腹減ってるっつってんだから早くメシ準備しろや!! ああん? てめぇの糞眼鏡なんざ知らねぇんだよ!! この金持ちのボンボンが!」
レクはいつもの笑顔からは考えられないほどの冷徹な顔つきで、リアスの首を絞める。
リアスは顔を青ざめさせ、少し震えている。
「レク」
それを見兼ねてかロイがレクを呼ぶ。レクは視線だけロイに送る。
「そいつ、放さねぇと、飯ねぇぞ」
レクは無表情にリアスを放し、リアスに昼食を出すように促す。
リアスは木の根元に置いておいた重箱をレクに献上する。レクは受けとり、パカリとふたを開ける。
重箱の中には、バランスのとれた、とても美味しそうな様々な国の料理が入っていた。
「うわぁ!! めっちゃ旨そう!」
レクは座り、一口食べるとすぐにいつものレクへと戻った。ロイはレクが腹が減ると危険だと認識する。
それから、軽く胃に入れ、ヴァインを待つ。しかし、約束の15時になってもヴァインが来る様子はない。
「バンちゃん遅いなぁ〜、早くロイの実力が知りたいのに……」
レクは重箱を全て平らげてぼやいている。
アースは爆睡しており、カルムは目を閉じたまま、リアスは本に没頭しており、ロイは空を仰いでいた。
すると遠くから走ってくる人影が見えた。
「遅れて悪かったな」
ヴァインはロイの前に来た。ロイは無表情に間合いを取るように歩き出す。
ヴァインは、上着を脱いで身軽になる。ヴァインはロイの実力を買っているのだろうか。
2人は対峙し、レクとカルムとリアスとアースは真剣に見つめる。
「レク、開始の合図をよろしく」
ヴァインの言葉にレクは頷き、片手をあげて2人を見やる。
「じゃ、始めるね。よぉーい……始めっ!!」
と、レクが言って片手を下ろした瞬間、ロイとヴァインが消えた。
「な……あの2人はどこに……」
カルムは声をあげ3人はヴァインとロイを捜す。すると、2人がお互いに反発するように距離をとって着地する。2人はお互いに息を切らし、汗をかいている。