26話 戦いの後
その後残ったゴブリン達は他のプレイヤーに狩り尽くされ1体もいなくなった。
街の住人達からは感謝されたがその中でも
「なんで!!!なんでもっと早く来てくれなかったんだよぉ!!!そしたら...そしたら父ちゃん助かったかもしれないだろ!!!」
と住人の子供が俺に向かって八つ当たりのように怒ってきたのを俺は。
「済まなかった。もう少し早く来ていれば助かった命もあったかも知れないのに。」
少年は両目から流れ落ちる涙を気にもせず俺をその小さな拳で殴りかかってくるが俺はそれを全部受け止める。
「リオル!何をやっているの!」
そう言いながら少年の腕を掴む女性......多分この子の母親なんだろう。
「この子がすいません。」
「いえ。助けられた命を助けきれなかった俺のせいなので。」
俺はそう言う。
「それでも。私たちを助けてくれてありがとうございます。」
それでは。と言って少年の手を引いた母親は何処かに行ってしまった。
後ろで今の光景を見ていたプレイヤー達は
「なんだよ......今の...」
「あの子のお父さんが死んで悲しんでた...?」
「俺たちと一緒じゃねーか...そんなの」
そうだ。エルフの都の店主アンジュさんだって、ギルドの受付の女の子だってルミナーレさんだって、全員まるで生きている様に......俺たちと同じように話して...笑って...怒って...そして悲しんで......ゲームだから。その言葉で済むほどこのゲームは甘くない。住人1人1人が今を真剣に生きている。
他のプレイヤーも俺と同じことを思ったのか俯いていた顔を上げ、各々色んな所に走っていく。
それから1週間......俺は学校に行き、家に帰ったらAWにログインする毎日を送っている。
AWのプレイヤーは住人に対して住人だからと言って乱暴したりする事はなくなり、普通に世間話をしたり呑みあったり一緒に狩りにいったりする様になった。
「アンジュさん、今日も来ましたよ」
「おっ!酒持ってきてくれたかい?」
「はい、持ってきましたよー。傷に響くんであまり飲み過ぎないでくださいね」
「なんだー?あん時から妙に大人しくなりやがって」
「そりゃそうなりますよ。」
俺はアンジュさんの左腕を見ながらそう呟く。
そこには真っ白なエルフ特有の肌ではなく、メタリックなゴツゴツとした義手が取り付けられていた。
「またこれかい......昨日も言っただろう?命が助かっただけ儲けもんさ。左腕なんてくれてやるよ。私は錬金師だぞ?材料さえ有れば義手義足なんて作りたい放題さ」
そう言って俯いている俺の頭をぽんぽんと撫でてくれた。
これで1章が終わりになるのかな?
またいろいろ手直ししていくのでだいぶ変わると思いますが、ストーリーは同じです。
最初アンジュさんは死んじゃう予定でしたが、死ぬよりいい使い道があるやん!と思い腕一本貰っときました。
次は精霊編です。お楽しみに。




