23話 崩拳
それから土曜日まで、毎日学校から帰ってAWにログインするという生活を続けている。
そして、じーさんとの気の使い方も同時に学んで、物を殴った時の反動を無くすことが出来るようになった。
他にも崩拳や螺旋拳という技を教えてもらった、螺旋拳は気を螺旋状に回転させて打つ技だ。
じーさん曰く、「これを1日で身につけたのはわしが知ってる限りゆうが初めてじゃ...」
と言っていた。
実際にAWゲーム内でやってみたら崩拳は衝撃で全てを破壊した。
そして、螺旋拳は貫通力に特化した技だった。
物理攻撃がほとんど効かないはずのストンが貫通して光になっていた。
日曜日......俺は家事をしてから、AWにログインした。
「おい!ポーション持ってこい!重傷者だ!!」
「こっちもだ!!!内臓が出てる!!」
「俺たちプレイヤーは後回しだ!!住人達を優先しろ!!」
と、街の中は荒れていた。
いや、正確にはさまざまなところで負傷者を治療したりしている。
その中で俺を見つけた男が駆け寄ってくる。
「おい!今ログインしたのか!!ゴブリンが攻めてきたんだ!戦ってくれ!」
俺に向かって言ってきた男は右手に剣を持った剣士だった。
「わかった!何処に行けばいい!!」
「南だ!南門!いや俺も一緒に行く!着いてこい!」
男の後を追いながらも俺は男に質問をする。
「なんでゴブリンが攻めてきたんだ?」
「ゲーム的にはイベントだろうが、この世界においてはスタンピート......俺たちがゴブリンの獲物を狩りすぎてゴブリンが餌を求めて街に攻め込んできたんだ」
確かに。ゴブリンが出てきているのは南、木漏れ日の森とは違う森だ。
普段住民たちが適度に狩るだけだったのが、今はプレイヤーが弱い魔物......ゴブリンがいつも狩っていた魔物を乱獲してしまった、というわけか。
「ゴブリンってのはそんなに強いのか?」
「一体一体で対処すれば弱い。武器を使ってくる小学生並みだ。
だが、群れてくると強さは格段に上がる。
そして、今回のゴブリンの群れの推定数は約1万...」
「1万......」
「今はルミナーレさんが魔法で消し炭にしているが、流石に1万という数は多すぎてな。周りの人に被害が出てしまっているんだ。」
ルミナーレさん?聞いたことない名前だな。
「そのルミナーレさんってのはどんな人なんだ?」
「ん?知らないのか?。まぁ、あの人は普段はクエストに出てるからな。掲示板で一時期話題になった、ギルドでプレイヤーを一瞬で燃やしたロリエルフだよ」
あ、あの目の前で消し炭になった男がナンパしていたエルフの方でしたか......
あの人とはあれ以来会っていないが、掲示板でワイバーンを納品してる話とかがあった。
さらに近づいて行くとバァン!!と言う爆発音が響いてくる。
「よくあれだけあの魔法を連発して魔力が切れないなぁ」
男は呆れたように笑いながらそれでも「頼もしいが」と言う。
そして、俺たちとすれ違うように軽傷の人が運ばれて行く。
どうやら重症の人はその場から動かさずポーションを身体にぶっかけたりしているようだ。
その光景を見て
「早く行かないと!!」
俺は身体に気を流し、一気に加速する。
そのまま南門から外に出る。
その視界の中には埋め尽くすようにゴブリンの大群がいた。
「崩拳ッ!!!!」
その場で気をフルに流した状態の現在打てる最大の技を打った。
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