モミじー!!
そうして、とうとうその日がやってきた。
約束の時間は午後7時。
場所は紙屋町の駅から歩いてすぐの場所にある、フレンチレストラン。お店の前で待ち合わせとなっている。
店のチョイスは和泉さんがしてくれたのかしら?
だとしたら、なんて素敵なセンスなんだろう。
かなり早めに到着し、店の場所を確認した私は思わず、うっとりしてしまった。
玄関先に小ぶりのクリスマスツリーが置いてあり、扉にはリースが飾られている。
外から見ただけだけど、照明もほんのり明るいっていう感じでとってもロマンチック。
時計を確認すると、約束の時間まであと30分近くある。
そこで私は通り沿いにある、ショーウインドーを眺めて歩くことにした。
まさかこんな夜に限って、事件が起きたりしませんように。
その可能性が否定できないから、もうほんとに……ダメダメ、今はもうそんなこと考えないでおくの!!
気を取り直して歩いているとふと、ウエディングドレスを着ているマネキンを見つけた。
私もいつか、和泉さんと……!!
思わずガラスに両手をついて、食い入るように見てしまう私。
その時だった。
くいくい、とコートの裾を引っ張られた。
和泉さんかしら?
とびきりの笑顔を作って振り返る私。
ところが。
誰よ、この子。
知らない小さな男の子が、私のコートの裾を掴んで見上げてくる。
見たところ、5、6歳ぐらいっていうところ。
私をママと間違えているのだとしたら、迷子かしら?
ちらりと時計を確認する。
まだ余裕があるから、最寄りの交番に連れて行こう。
「どうしたの、僕? ママとはぐれちゃったの?」
私はしゃがみこんで男の子に話しかけた。
「……」
「ごめんなさいね、私はあなたのママじゃないの。すぐそこに交番があるから、一緒に行きましょう?」
「モミじー!!」
「……はい?」
いきなり男の子が私に抱きついてきた。
「モミじー、助けて!!」
なになに何?! 何が起きたの?!!
「弟がさらわれちゃったの!!」
イラストは深森様からいただきました♪