下心満載でごめんなさい
なにはともあれ、ほっとした。
万が一、子供が犠牲になるようなことがあれば……そう考えただけでゾッとする。
「お前達、茶番に付き合わせてしもうてすまんのぅ」
子供達の祖父は皺だらけの顔に笑顔を刻んで、和泉さんと北条警視に話しかけた。
「まったくですよ、こっちは非番だったっていうのに」
北条警視は苦笑いしている。
え? なに、この人達は知り合いなの?!
「あの~……」
何がなんだかさっぱりな私は、誰にともなく話しかけた。
「結局のところ、何がなんなんですか……?」
モミじー、と隆人は相変わらず私にひっついてくる。
「あら、郁美ちゃん。ごめんなさいね、妙なことに巻き込んで」
特殊捜査班の隊長、北条警視は見た目からしてちょっと違うけど、しゃべるともっと普通じゃない。
「この人はね、昔の県警捜査1課長だった岩井さんよ。HRTの創設者でもあるの」
へぇ……そう言われてみれば確かに、小柄ではあるけれど年齢の割に背筋はしゃきっとしてる。
「娘夫婦が最近、上手く行っていないみたいだからなんとかして欲しいって協力を頼まれた訳よ。そこで考えたのが、あのシナリオ」
それはつまり……。
「子供が誘拐されたなんていう一大事になれば、夫婦で協力せざるを得ないでしょう?」
どうりで。
何か変というか、緊張感が足りないというか……おかしいと思ったのよ。
でもね。緊急事態に限って、嫌な一面が表に出て……却って上手くいかなくなるケースだってあると思うのよね。
ま、この夫婦に関しては成功だったみたいだけど?
「……」
「悪かったわね、せっかく念願の初デートだったのにねぇ?」
まったくだわ。
胸の内ではそう思ったけれど。
「そんなことありません。子供達があんなふうに、笑顔になれるなら……良かったと思います。私のことよりも、そっちのほうがずっと大切です」
どう?
この台詞、かなりイケてない?!
和泉さんの私に対する印象アップ間違いなし!!
……と、思ってたら。
和泉さん、スマホ画面に見入ってる。
なんてことなの!!





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