表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/21

身代金の額

 それにしても……やっぱり、何か変。


 普通は誘拐された人質と言うのは、恐怖に怯えているものだ。


 【ストックホルミング症候群】というのがある。


 人質立てこもり事件などにおいて、閉鎖された空間に長い間、犯人と一緒に時間を過ごすことで奇妙な絆が生まれ、少なからず親しくなるというものだ。


 けど。それとも違う気がした。


 この手のことに関しては素人の私だってそう考えたのだから、プロはもっと変だと思ったに違いない。


「ねぇ、坊や」

 北条警視が隆人に声をかける。

「弟をさらって行ったのは、本当に、知らない人だった?」


「……」

 それこそ知らない大人に話しかけられ、隆人は困惑した顔をする。


 彼はプイっ、と私の方に向かって走り出す。


「隆人!!」

 母親が彼の腕を掴んで引き留める。


「ねぇ、大事なことなのよ!! 拓斗が無事に帰って来られるかどうか、あなたにかかってるのよ?!」


 お母さん、そんなにプレッシャーをかけないであげて……。


「知らない!!」

「隆人!!」

 母親は彼の小さな頬を思い切り叩いた。


 すると。

 火がついたように幼子は泣きだしてしまう。


 私は思わず、彼の小さな身体を抱きしめた。


挿絵(By みてみん)


「美羽子!! お前、隆人に八つ当たりしたって仕方ないだろう?!」

「あなたはどうしてそんなに呑気なの?! 拓斗が、あの子に何かあったら、どうするつもりなの!!」

「わかってるよ!!」


 再び、着信音。


『……警察に報せたのか……?』


 さっきも聞いていた。


 こういう事件の場合、必ず犯人は【警察には報せるな】という。だけど。


 報せない親なんていない。

 自力で何とかできる事件じゃないもの。


「い、いいえ!! そんなことはしていません!!」

 母親がそう答えたところで、果たして犯人がどれほど信用するだろうか。


『……まぁ、いい』


「要求は、どうしたら息子を返してもらえるんですか?!」


『今夜午後10時……比治山公園展望台に来い。家族全員でだ』


「え……?」


『いいか、遅れるな』


「あ、あの。お金、お金は……?」


『……500円』


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ