気になって仕方ないけど、でも……。
それがきっかけで、私は和泉さんのことが気になり始めた。
元々顔がタイプだったというのもある。
でもまさか、私の同期で、友人の婦警と同じ班に所属する刑事だとは思いもしなかった。
これは天から降ってきたチャンスだわ!!
なんだけど……気がつけば苦節何ヶ月。
こうして、念願のデートに漕ぎつけることができたのは……私の日頃の行いがいいからよね?
あっという間に時間が経過して、気がついたらデザートとコーヒーが出ていた。
そういえば。
この後、どうするんだろう?
食べ終わったら、はいさようなら、なの?
いやでも、こんな貴重な時間を過ごさせてもらっただけ感謝しないと。欲張ってはいけないわ。
……と、思っていたら。
「ちょっとごめんね」
和泉さんが突然、席を立つ。
え? なんで?! どうしたの?!
まさかこんな時に事件発生の呼び出し?
私も咄嗟に携帯電話を確認する。
あ、違う。
ということは……プライベート?
ちく、と胸が痛んだ。
そりゃね。私はまだ和泉さんの彼女ですらないし、かといって彼女になったからって逐一誰に電話してるの、とか訊いたりしたら……ダメよね。
そういうの『重たい』とか言われて、フラれる可能性が高いのよ。
気になる。
でも訊けない。
そうこうしているうちに、和泉さんが戻ってきた。
「あ、ごめんね。綺麗なケーキだね~」
彼はテーブルの上に置かれたケーキを見て、一言。
赤と緑を基調にしたセロファンの上に乗っているケーキは、季節もののイチゴが彩りよく飾られていて、いかにもクリスマスっぽい。
そうですね、と相槌を打ってから私はコーヒーを口にする。
ひどく苦い気がした。
それからなぜか、少しの沈黙。
「あれ……?」
突然、何気なく窓の外を見ていた和泉さんが、声をあげた。
「どうしたんですか?」
「さっきから、気のせいかなって思ってたんだけど……下で小さな男の子がウロウロしてるんだよね」
まさか。
嫌な予感。
さっき、私をモミじーと呼んだあの子じゃないだろうか。
おそるおそる、窓から外を見下ろしてみる。
間違いない、あの子だ。
「どうしたんだろう、迷子かな?」
なんで?
どうしてあの子、何してるのよ?!
「僕、ちょっと様子を見てくるから。郁美ちゃん、お会計よろしく」
和泉さんは突然立ち上がり、カードをテーブルの上に残して行ってしまった。
「わ、私も行きます!!」
私も慌ててコートを羽織り、カバンとカードと伝票を手に、レジに向かった。