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居酒屋の放談

作者: らいこう

ちょっときいてくれる?

少しでいいからさぁ。

あー、ねえちゃん、俺の伝票でこの人にお銚子入れてちょうだいな。

でな、ちょいと愚痴になるんだけど、きいておくれよ。

おれな、昔から世話役みたいな仕事をしていたんだよ。

今風にいえばコンサル業とかディレクターみたいなもんかねぇ?

でね、最初に請け負った仕事というのがさ、ゴーダさんっていったかなぁ、その人からこの辺りの地域参入を手伝ってほしいって言われたのね。

で、当時仕切っていたここいらの統領たちに売り込みをかけてさぁ、受け入れてくれたところから、たんまりと資金援助して広げていったわけよ。

その仕事はな、割とうまくいってさ、その統領たちのグループがこの辺りを仕切りはじめてからは、ずいぶん長いこと寡占状態で安泰だったのよ。

途中でベンチャー系の新規参入なんてこともあったけど、だいたい資金と付き合いの深さで寡占状態は譲らなかったのよね。

統領たちも長くなるとさ、若手が力付けだすじゃない。

だから、若手のほうにも飯おごったり、物を与えたりして面倒見たのよね。

そうしたら、大事にしてくれてさ。

いろんなところで頼りにされて使ってくれたのよ。

でもって、ほかから参入しないようにまでしてくれたりな。

そのころは、独占っていってもよかったなぁ。

業務提携をするところまでいって、羽振りもよかったんだけどねぇ。

そこは昔の話しだから、今みたいなコンプラぁとか、ありえない時代でな。

義理と人情の時代だったから。

でもその義理人情が仇になっちまったんだなぁ。

それまで、あんまし統領たちをかまってやってなかったら、へそまげてさ。

そのへそを曲げたのを見たら、若手も若手で引っ込んじゃってさ。

統領たちが、そんなに付き合いが大事なら、あんたんところより古くからの付き合いあるほうを大事にするとか言われてさ。

俺らの仕事が日干しになってな。

それで少しのあいだ、お茶を引いたわけだよ。

でもな、人生何があるかわからない、一寸先は闇というやつでな。

その古株たちが自滅しちまったってよ。

おかげで昔ほどではないにしても、少しは仕事が回ってきてたわけなんだけど。

それからというもの、訳の分かんないベンチャーがにょきにょき出てきてなぁ、それにあわせて古株連中も息を吹き返してきてよ。

パイがすくなってきているところに、同じようなものが乱立するものだから仕事がなくなってきたってわけよ。

そうしたらな、古株連中がまた訳の分からん事言い出していてな。

あんたさんにも、割り食う話になるかもしれんけどな、またぞろ統領たち、というよりその取り巻き連中があることないこと言い始めてな。

まあ、今思えば独占を狙うとしたことが間違いだったかもしれん。

だからと言って、いまの古株たちがやろうとしていることは、いまのあんたさんたちには受け入れられないもんだと思うんだよねぇ。

まあ、ちょっと愚痴聞いてもらって、すまんかったな。

おーい、ねえちゃん、もう1本お願い、伝票は俺に。

ああ、ついでに清算もお願い。

じゃあ、ありがとな。

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