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ダンジョンは、そうして始まった

ようやく(´・ω・`)再開

「カビくさっ」


 扉(?)を越えて、最初の呼吸で取り込んでしまった余りの異臭に、思わず眉を蹙めて、涙目になりながら咳き込む。なんと言えばいいだろうか、長年給食の残りを入れっ放しにしておいた小学校の机の中を、冬期休暇前の大掃除で初めて封印を解いた、解いてしまった時のあれに似ている。

うん、前科ありだが何か?


 或いは、良く報道番組とかで取り上げられる、ゴミ屋敷周辺の臭いを思い返して頂ければ、お分かり頂けるだろうか? あれを密閉空間に閉じこめたらこんな風になる、きっと。

解りたくない?

ですよねー。


「ひでぇ臭い…それにあれだ、長年トリートメントして無い、飼い犬の脂ぎったあれ…獣臭って奴も混じってないか、これ」


 服の襟元を引っ張り挙げて、口と鼻を覆う。若干マシにはなるが、それで完全防臭とは行かないのは、もう仕方無い。

 タスタスというか、そんな感じに足音を立てながら、先ずは石室を歩き観察する。先刻まで居たコレクション部屋(?)と造りは一緒だが…こちらは古さと言うか、長い年月を過ぎ去った独特の渋さというか、苦味という物が感じられる気がした。

そこから『遺跡』という単語が、すんなり違和感無く頭に浮かぶ。


「百歩譲って無理矢理現実的に考えるとして、だ。…あの地下室から更に地下に、この古代遺跡だか何かを見つけて、爺様はそれを隠匿していた? でも何の為に。自分の土地の地下なら、公表しても所有権は主張できる筈だよな」


 ぶつぶつと呟きながら考えを整理しつつ、続けて石室をうろつく。

 エジプトの様に、盗掘は犯罪とか言う法律、日本にもあったっけ? 法律関係、興味ないから分からん。

 そもそも、隠匿して何のメリットがある。

 爺様は、よく言えば資産家だが、それだけだ。学者でも無いから、研究なんてしようも無いし、遺跡の宝物目当てだとして、そう云うのは換金手段に難があるんじゃないか?


 まあ、猜疑心の強さで人付き合い壊滅してたらしいから、そっちの意味でも無理だったろう。金にあかせて蛇の道は蛇、なんて伝手があったとしても、だったら親父がまったく知らないのも不自然だ。

その手の輩なら、爺様の死後に親父に接触してきてもおかしくない。引き続き取引目当てか、或いは宝物の大元を手に納れようと画策したり、な。

 欲望に際限を付けられないのが人間だと、俺は信じている。何しろ“生きたい”というそれ自体が、既に欲望なのだから。際限が付けられるなら、そいつはすぐに自殺してるだろう。それ以外に止めようが無いのだから。


「……考えるだけ無駄だな。本人に確認が取れないんだから、今更だ。それよりも――」


 足を止めて、先を見る。そう、この小部屋からは続いているのだ、通路が。

 石室と同じ様に、天井から壁、床まで淡い輝きを生じさせているので視界の確保は容易。後は進む意思さえ在れば、新たな展開が見えるだろう。

或いは、ここで引き返して戻ってもいい。多分、あの魔法陣の中心をもう一度踏めば、元の地下室に戻れる――筈だ。恐らく、否きっと。…ふ、不安になんてなってないからな!?


「…うしっ、行くか。千里の道も一歩から。雉も鳴かずば撃たれまい」

 ぱんっ、と左掌に拳を当てて、気合をいれる。諺はなんとなく最後が間違っている気がしたが。正直恐怖心はあるが、好奇心が勝った。

 俺にとって、そういう心境になるのは稀なのだ。感動が薄い、感情が平坦だと、以前付き合っていた女からも言われたが、反論し様が無く、それが原因で別れた位だ。

 ヤルコトハきっちりヤッテタケドナ。

 おう、爆発しろとか言うなそこ。結局リア充にはなれないんなら、俺もお前も同じ側さ。

 童貞? はっはっはっ、後生大事になんてせず、店にいけ店に。

 何の店かって? ハッ、呆けるんじゃねえよむっつりが!……おっと、なんか話が脱線したな、戻そう。


 思い返せば小学生以来かも知れない、これほど胸が踊ったのは。だからこそ、選択を間違った。


 不可解、理不尽から目を外らし、不用意、無用心、日本人特有の平和ボケのコンボ。

 ともかく、未来の俺がこの瞬間に戻れるのならば、ぶん殴って簀巻きにして高周波ブレードもかくや如く揺さぶってゲロ嘔かせた床に顔面から叩き込んで気絶させた後、魔法陣に投げ込む位するかもしれない。


 ……後悔先に立たずと言う真理は、後悔してからじゃないと身に沁みないという、本末転倒の見本である。

教訓は実感しないと意味が生さないが、意味を生した時には手遅れ。

ここテストにでるよー(でません)

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