贈り物
「はい、どーぞ」
そう言って実さんが俺に紙袋を手渡してきた。
プレゼント用にラッピングされたのだと一目で分かる包みを受け取ると、見た目から受けた印象よりも軽い重量が両手に乗った。
「何これ」
「開けてみて」
促され包みを開けてみると黒地にアーガイル柄のマフラーが出て来た。
ぬくそうな手触りだ。
「何これ」
「アンゴラだよ」
「そうじゃなくて、何で」
「そろそろ寒くなってきたから必要だと思って」
「そうじゃなくて」
確かにそろそろ冬物の服を出さねえと、とは思ってた時分だけど。
何で、
「難しい事考えてねぇで、贈り物は素直に貰っとくもんだぜ」
声がした方を向くと隆弘がいた。
奴が何故かこちらに向けているアイフォンのLEDが点滅しているので鋏を投げつけてやろうとしたら実さんに制された。
何故止めるんだ。点滅してるって事はカメラが起動してるって事じゃないのか。
色々言いたい事はあったがこちらに向けてカメラ起動させてる理由なんか知りたくもなかったので黙る事にする。
「そうだよー!俺も理由ないのにリリアンから冬用の上着を買って貰っちゃったんだよー!」
「何故だ!」
「寒くなるからって」
「その理屈はおかしい!」
通りかかった紫乃と膝を折った隆弘がくだらない会話を繰り広げはじめたのでもう無視する事にする。
「貰う理由がねえよ」
「実おにーさんがかわいい弟にプレゼントしたいと思ったからだよ」
「誰が誰の弟だよ」
「もー!つべこべ言わず隆弘君の言う通り素直に受け取ってくれたらいいの!一生懸命選んだのに、受け取ってくれないとショックだよ!」
そう言いながら実さんが俺からマフラーを取り上げて俺の首にぐるぐると巻く。
マフラーを巻くのにも上手い下手ってあるんだな。
「ね、あったかいでしょ」
確かにぬくいので頷くと、実さんが「でしょ!」と笑った。
それでも、やはり正直突然こんな贈り物を渡されても困るのだけど。
多分、俺の首の傷跡を隠せるようにと気にかけてくれた結果の贈り物なのだろうけれど。
そんな事に一切触れないところも含めて、実さんだなあと思ってしまったので。
「……どうも」
ぼそりと呟くと、実さんが満足そうに笑った。
「どういたしまして!」