〝黒〟の称号
〝黒〟。
それは原始の色。
そして、最期の色。
朝には夜が、太陽には月が、火には水が。
対極が存在する、此れ即ち世の理。
表があるのならば必ず裏が在る。
光り輝く豊かな国でさえ、闇の世界は存在する。
闇の世界は一つの巨大な〝世界〟として繋がっており、暗黙のルールや序列が存在する。
その世界の中でも、〝黒〟の称号をその名に戴く暗殺者たちは一流の闇の住人として君臨し、同じ世界に生きる者たちには崇拝され、光の世界に住む人々には恐れられ、忌み嫌われる。
中には〝黒〟の名を語る者もいるが、実力が無い限り抹消されることが必至だ。
現在、世界に君臨する〝黒〟は五つ。
序列第一位、最強と謳われ、そのやり口の凶悪さゆえに〝惨き〟暗殺者と呼ばれる集団。
Black lily―――黒百合。
序列第二位、まるで芸術品を創るかのごとく暗殺をする〝美しき〟暗殺者集団。
Perle noire―――黒真珠。
序列第三位、毒針による暗殺を得意とする〝鋭き〟暗殺者集団。
Negra seda―――黒絹。
序列第四位、依頼された翌日には任務をこなす〝疾き〟暗殺者集団。
Cairngorm―――黒水晶。
これら四つの〝黒〟は集団であり、暗殺の任務を終えた後、証として必ずそれぞれの名を冠するものを現場に残す、隠れた者たちだ。
そして。
序列不明、性別、年齢、容姿等が知られておらず、唯単独でナイフでの暗殺を得意とすることのみ知られている、孤高の〝黒き〟暗殺者。
その実力をもってして〝黒〟の名を得た者。
Schwarz wald―――黒い森。
〝黒〟に狙われれば最後、その生に先はない。
惨く殺される未来を待つか。
美しく命を散らす未来を待つか。
鋭く貫かれる未来を待つか。
疾く世を去る未来を待つか。
――――全てを闇に葬り去る未来を待つか。