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Zwei Schwarz  作者: aswad
黒い森から舞い降りた、一枚の木の葉
8/14

遭遇、そして知る

真面目なままで終わらない。

それがヴァンクオリティ。


こちらは二話更新したうちの最新話になります。

跪いたカイザの隣で、イリスザートは深々と頭を下げた。


「兄上の覚悟も知らず、不躾な質問をしてしまった非礼をお許し下さい。

私は大神官位を継ぎ、次期王と共に国を支えてゆこうと思います」


その言い回しに、カイザははっと顔を上げる。

ヴァンは相変わらず感情の読めない表情で言った。


「俺と、だろ?」

「そうなれば良いですが、先は見えませんから」


では、と立ち上がり、扉に向かったイリスザートに兄は問うた。


「イリスは、どちらの立場を持つ?」


彼は肩越しに振り返り、穏やかに笑う。


「僕は介入しません。静観していようと思います・・・・・・例え、悲しい結末が待っていようとも」


もう一度頭を下げ、イリスザートは自分の護衛に扉を開けてもらい、部屋を出た。

扉が閉まると同時に、ヴァンがテーブルの上に突っ伏す。


「無駄に疲れたし緊張したー。初めてだよ、誰かに言ったの。ふぅー」

「・・・・・おい、今までの緊張感と威厳と感動はどこへ行った?」

「遥か彼方じゃない?」

「即答するなっ!俺のとった礼を返せ!」

「あ、そうだカイザ」

「ん?」


ヴァンの表情が至極真剣なものになる。


「あのね」

「・・・・おぅ」


ごくりと唾を飲み込み、カイザは次の言葉を待つ。


「・・・・・・・おやすみー」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・っておいっ!?」


カイザの叫びも虚しく、ヴァンはベッドに入ると寝息を立て始めた。


「・・・・・・・・・俺、」


なんでこいつの親友やってるんだろう。

何度目になるか分からない問いを呟き、残った紅茶を一口飲む。


「本当、なんで王と王妃からこいつが生まれたのかが分からねえよ。

考え方は確かに受け継がれているけど」

「だが、次期王としての評判はなかなかのものだろう。

良き王となるための最重要条件は、国民の大半に好かれることであるからな」

「まぁそうだろうけど」

「その点で鑑みるに、兄弟は三人とも、か。最も好かれているのは長兄であろうが」

「・・・・分かるがな、気持ちは。後は悪戯さえ無ければ・・・・・・・・、

・・・・・・・・・っ!?」


ようやく気づく。

独り言として呟いた言葉に返事が返ってくることに。

眠っているヴァンの傍らに立つ、黒き影。

それは、招かれざる来客。


「なっ・・・・・!」

「これがヴァン・クレイト・シュライエルか。噂に違わず、整った顔立ちをしている」

「何者だっ!」


剣を抜き払ったカイザに、影はゆっくりと顔を向けた。

白い肌に、よく映える漆黒の瞳。

誰何の声には答えず、その影は言う。


「Guten Abend、ヴァン付きの騎士、カイザ・ルーイントゥック」

「何が『こんばんは』だっ!」


繰り出された初撃をひらりと躱し、相手はほぅ、と感心したように声を上げる。


「言葉が通じるのか。地理的に見ても遠い国の言葉だろうに」

「どうでもいい話だっ!」

「あまり騒ぐな。王子を起こすつもりはない」

「黙れ!」


幾度かの攻撃を躱し、影が距離をとる。

カイザは剣を構え直し、影に問うた。


「何者だ。一体、何をしに来た」

「そうだな・・・・・・自己紹介がまだ、だったな」


漆黒の瞳がひたりとカイザを見据える。


「全てを無に帰す、森だよ」

「何?」

「命を失う者のみが入ることを許される、黒い森だ」

「っ!」


一瞬動きが止まったカイザの背後に、影がまわる。


「挨拶に来ただけだ。仕事がいつになるかは分からない。

それではGute Nacht(おやすみ)、カイザ」


(しまったっ・・・!)

手刀が降り下ろされる、直前。

反射的にカイザは体を捻り、剣を横に薙ぎ払う。


「くっ・・・・!」


何かが剣先に触れた。

思い切って払うと、布の切れる音がした。


「・・・・成程、な。やられた」


淡々と呟かれた言葉はしかし、カイザの耳には入ってこない。

彼の目は影を見ていた。

否、正確に言うならば、影の髪を。

彼の目に映っているのは、濡れたように艷めく長い髪。

整った美しい容姿。

バンダナが取れた〝黒い森〟は。


「お前・・・・・・・まさか・・・・!!」

「あぁ」


至極あっさりと、目の前の影は頷いた。



「私の名はシュヴァルツ・ヴァルト。生物学上は、女だよ」


イリスザートはどちらのことも大好きです。

けど、やはり王族としての覚悟を持って静観しています。


そしてまぁ、予想していた方もいらっしゃったのではないでしょうか。

「彼女」なんです。

ちなみに、ここに至るまで実は一人称を使っていません。

苦労しましたよ・・・・・・・・。

良ければ読み直してみてください。

・・・・・・うっかり使ってるかもしれません・・・・・・(笑)。

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