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Zwei Schwarz  作者: aswad
黒い森から舞い降りた、一枚の木の葉
4/14

国王一家

家族紹介篇。

家族全員で大きなテーブルを囲み、朝食を摂る。

上座に座るのは父たる国王、ウィンドゥル・クレイト・シュライエル。

四十に程近い王は、黒髪に青い瞳、鼻筋の通った顔をしている。

彼の父である前王は、成人前のウィンドゥルを置いて身罷ってしまった。

王子の成人と同時に受け継がれる筈の王位が空いた。

空位を巡って親類縁者が争うも、埋まることは無く。

結果としてウィンドゥルが王位を継ぐこととなった。

その後、王位争いに乗じた内乱や争いは鎮圧され、民衆のための政策が次々と行われた。

故に、彼は〝英雄王〟と呼ばれている。

〝英雄王〟ウィンドゥルは気づいたようにヴァンを見た。


「ヴァン、レオにお前の部屋に、妃候補たちの肖像画を持っていくよう命じておいた。

 後で渡す情報と共に目を通しておきなさい。

 明日からは午前中に勉強、午後からは見合いという形をとるからな」


告げられたヴァンは、鮮やかな紫の瞳で父を見た。

髪を父から、瞳は母から受け継いだ第一王子は、整った顔立ちをしている。

白い肌にすらりと高い背、常に落ち着いた雰囲気を纏う。

また頭の回転も早く、年頃の娘を持つ貴族たちがこぞって狙っている。

王たる素質、そして民からの絶大な支持。

クレイト王国を継ぐに、これ以上ふさわしい人はいないと思われる。

但し、口を開けば。


「えー、嫌ですよ俺。大体、俺の性格についてこられる人がいるとお思いですか?

 いたら奇跡ですって」

「お分かりなら、少しでも改善する努力をなさってはいかがです?」


護衛として控えていたカイザが口をはさんだ。

聡明で見目麗しい第一王子はしかし、悪戯が大好きだった。

なまじ頭が良いだけに、その規模も中身もただでは済まされない。

一度など、民衆と協力して国王の度肝を抜いたほどだ。

そして、そんな彼に唯一苦言を呈することが出来るのが。

護衛にして幼馴染のカイザである。

これまた眉目秀麗であるカイザは、国一番の剣の使い手とも言われている。

ヴァンはカイザを対等の者として扱っており、カイザもまたヴァンの友として傍に在る。

共に行動することが多い故に、悪戯の一番の被害者となっている。

そんな苦労の絶えない彼だが、ヴァンには絶対の忠誠を誓っている。

大公爵家出身という身分も相まって、これまた多くの貴族に狙われているのだ。

本人は結婚する気は無いと公言しているが。

半眼のカイザを見て、ヴァンは口角を吊り上げた。


「カイザと出会って早約十年、俺が一度たりとも性格を直そうと努力していたことは?」

「ありませんね。寧ろ、皆無でしたね」

「ヴァン・・・・そろそろ自覚を持ちなさい。というか、ひとまずカイザをからかうのをやめなさい」


頬に手を添えて溜め息をついたのは、王妃マリアンヌだ。

栗色の髪を背中に流した紫の瞳のたおやかな女性はしかし、芯の通った人である。

政略でありながら結果的に恋愛結婚となったウィンドゥルとマリアンヌの仲は、国民が

憧れる程に良い。

〝英雄王〟と、良き妻、善き母の手本のような王妃。

カイザは思う。

何故こんなにも偉大な国王、王妃から、あの悪戯大好きな第一王子が生まれてくるの

だろうか、と。


「無理を仰らないで下さいよ、母上。自覚ぐらい持っております」

「ならば、妃選びをなさい。将来あなたと共に国を支えるのだから」


―――ぴくり、と。

反応した人に気づいたのは、恐らくカイザのみ。



続きます。

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