父の裏切り
なぜ私の後ろに居るのだろう?
「どうしたの?」
「一緒に帰らない?美咲しか、友達居なくて」
「そっか。じゃあ一緒に帰ろっか」
わたしは自転車を押しながら歩いた。その隣には太一君。
なんか恋人みたい。
「自転車せっかくあるんだから乗りなよ」
「いいよ別に」
「一緒に乗るか?」
「え?」
「貸して!」
そういって太一君は私から自転車を奪った。
「なに~?返してよ」
太一君は自転車にまたがった
「後ろ乗って」
「え?」「ほら、早く」
「うん」
太一君の良い香りがした。
サラサラな髪の毛。大きな背中。
確かに今、あなたの存在を感じていた。
「家どこらへんなの?」
「うんとねぇ○○書店を右に曲がってそれから...」
それから...それからなに?続きが出てこない。
「それからどこに行けばいいの?」
答えられない。
何も考えられない。
「どうしたの?美咲?」
なんで...?今の人って...
お父さんが居た。絶対。写真で見たときよりも
ちょっと老けているけど間違いない。
しかも若い女の人と、小さな子供と。
それは私が夢で描いていたような
そんなあったかい家庭だった。
「おい美咲!?無視?」
私は自転車から飛び降りていた。
「てめぇなにしてんだよ!」
私は無意識のうちにお父さんの目の前に立っていた。
「お前誰だ?」
「へーぇ捨てた娘のことは覚えていないんだ」
私は嫌みったらしく冷たい言葉を投げ飛ばした。
奥さんは
「だれこの子?どうゆうこと?」
と、心配そうに聞いている。
「え?お前あいつの子か?」
「どうゆうこと?なに言っているの?」
「奥さん聞いてないの?こいつバツ1だよ~」
私は今まで喋った事のないような荒々しい口調で話していた...
「おい!どうしたんだよ!」
太一君が私の手を握って引っ張っている。
「うるさい!ちょっと黙ってて!」
太一君の手を振りほどいた。
「良く聞いて!この男は私の父親!昔私とお母さんを捨てたの!」
「どうゆうことあなた!聞いてないわよ!」
「いやぁこれは色々あって...」
「どうゆうことだよ」
太一君が混乱している。
「この男の人が美咲の父親なの?」
「そうなの!私はずっと交通事故で死んだって聞かされてきた!
昔写真を見せてもらったの!だから顔はわかるの。」
いつのまにか私は泣いていた。
太一君が肩を抱いてくれている。
「どうゆうことだよおっさん!」
太一君がキレた。かなり怒っている。
お父さんはビビッて
「き、きみはなんなんだ?関係ないだろう」
と怖がっている。
「俺は美咲の彼氏!だから美咲を悲しませる人はゆるさねぇ!」
そういってお父さんの頬を殴った。
「ちょっと!太一君止めて!」
お父さんは体が一瞬宙に浮いた後、お尻からおもいっきり転んだ。
「痛ぇ!なにをする!おい!美智子!警察に通報しろ!」
奥さんの名前は美智子なんだろう。
でも奥さんは「自分でしてください」
そういって子供とどこかへ行ってしまった。
「捨てられる辛さわかった?」
そう言ってやった。
「あんなやつどうでもいい」
そう、確かにいったんだ。
バシッ!!
もう一度お父さんが宙に舞った。
お父さんはさっきより驚いた顔をしながら
こちらを見つめている。すごく手が痛い。
こんなに手が痛いのに太一君はお父さんを
私のために殴ってくれたんだね。
「お前父親を殴るとはいい度胸だな」
「今さら父おや..」
「今さら父親面すんじゃねぇ!」
私の言葉をさえぎって太一君が言った。
「そうだな。こんな女なんかしらねぇ」
「さっさと消えろくそじじぃ!!」
お父さんは腰とお尻を痛そうにしながら
ゆっくりだけど逃げていった。
また涙が出てきた...
「大丈夫?」
「うん。ごめんね巻き込んじゃって」
「気にしないで」「ありがとう」
それから泣き止むまでずっとそばに居てくれた。
私の息が整うと、
「乗って」
そういって自転車の後ろへ招いた。
自転車が走り出した。
「家どっち?」「まだ真っ直ぐ行ってそれから左」
「はいよ」
また無言...
気まずい空気が流れる。
そんな空気が嫌で、
「ねぇ」
「どうした?」
「駅前に新しいアイス屋さん出来たの知ってる?」
「えー!知らないよ来たばっかりなんだから」
「今度行かない?」「お!デートの約束?」
「まぁそんなとこ」「やった!!本当?」
「嘘で言うわけないじゃん」「そうだよね。嬉しい!」
やった!断られなかった!
嬉しさに浸っているうちに家に着いてしまった。
「家ここだよ」
「そっか」「うん。じゃあね」
「待って!?」「どうしたの?」
「アドレス教えて?」「うん」
アドレスを教え合った。
「家着いたらメールしてくれる?」
「わかった。じゃあね美咲」「バイバイ」
家に帰ってからずっと携帯を握っていた。
「早く来ないかなぁ...」
自転車は私のだから太一君は歩いて帰った。
そりゃあ遅いか。もう20分はメール来ないな。
ティロリロリン♪...
携帯が鳴った。私は急いで携帯を手に取った。
震えてうまく開けない。もどかしい。
やっと開いた!
[美咲は家着いたらって言ってたけどメールしちゃった☆]
やったぁ!メール来た!
[まだ家に着かないの?まあ太一君は短足だからね(笑)]
なんて返信来るかなぁ
「ただいまー」
お母さんがパートから帰ってきた。
お父さんの事を嘘付いていた事にプツプツと
怒りがこみ上げてきた。
「美咲居ないのー?」
「お前ふざけんなよ」「どうしたの?」
「てめぇ父さんは交通事故で死んだって言ってたよな?」
「え?そうよ」
一瞬困った顔をしたけどお母さんははぐらかした。
「今日会ったよ」
「え?」
「こんな近くに居るとは思いもしなかったよ」
「どうして?」
「こっちが聞きてぇよ!なんで嘘をついてた!?」
「それは言ったら美咲が悲しむと思ったから。ごめんなさい」
お母さんは私のことを思って内緒にしていてくれたなんて目に見えてる。
お母さんも捨てられて辛かったって分かってる。
でも怒りがおさまらなかった。
「いいわけすんじゃねぇよ!」
そういって家を飛び出した。




