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第九話:襲撃計画

舞は夜のジョギングを欠かさないという。舞を襲うとなると、そのジョギングの時になるだろう。

「Y」の閉店時間まで外で待ち、舞が店から出てきたら自転車で後をつけていき、彼女の自宅を確認する。そして彼女がジョギングをするために家から出てきたら再度後をつけていき、ジョギングコースを把握する。そしてジョギングコースの中で、人通りの少ない場所、襲撃に適した場所などをチェックしてから舞を襲うわけだ。しかし、襲撃に成功したとしても、気絶した舞の体をどうやって触るのか。路上で触るわけにはいかないだろう。通行人に目撃されてたちまち通報されてしまう。それを防ぐには、どこか絶対に人が来ない場所に舞を運ばなければならない。だがそんな場所などあるだろうか。T市は人口二十万人のそれなりに開発された都市である。人気のない場所でも、何時間も人が通らないわけはない。数分おきに通行人が来るはずだ。それに、誰も来ない場所があったとしても、そこまでどうやって舞を運ぶのか。自転車で運べるものなのか。

「スタンガンの威力を把握できないうちにごちゃごちゃ考えてもしかたがない。とにかく、ジョギング中の舞さんを襲うという仮定のもとで、実験を進めよう」

圭太は第一回目の実験方法を練った。

日が沈んでから自転車で市内を巡回し、適当な女性を見つける。その女性が人気のない場所に行くまで自転車でつけていき、襲撃のチャンスがきたら自転車を降り、走っていって一気に距離をつめ、背後から左腕で女性の胴体を締め付け、右手で背中にスタンガンを押し付ける。そしてトリガーを押して通電させ、心の中で「一、二、三」と数える。この三秒間の通電による効果をよく観察し、今後の目安とする。

「まず、相手が失神した場合だ」

相手女性が失神した場合、死亡していないか確認をとる。この確認をするには、心音を図るため女性の胸の中央に手をあてる必要がある。この時ついでに胸も触りたいが、それは相当に余裕がある時だけにした方がいいだろう。欲を出してこの段階で逮捕されたら元も子もない。胸を触ることは今回はあきらめ、心音の確認に専念することとした。相手女性が仰向けに倒れた場合は胸に手をあて心音の確認を、うつぶせに倒れた場合は、手首の脈拍の有無で生死を確認することとした。心音も脈拍も確認が困難な場合は、生死の確認にはこだわらず、逃走を最優先させることに決めた。

「相手が失神しなかったらどうする?」

次は、三秒間の通電により相手女性にダメージを与えたものの、失神までには至らなかった場合である。

この場合、失神させることにこだわって通電時間をいたずらに延長させると、相手女性を死亡させる恐れがある。そのため、失神しなくともあくまで通電は三秒でやめることとした。

「このスタンガンが実はポンコツで、相手にダメージをほとんど与えられなかったら?」

最後に考えられるのが、三秒間の通電でも、相手女性がさほどダメージを受けなかった場合である。

この場合、女性からの反撃が予想される。男とはいえ子供の圭太だから、大人の女性との格闘は不利である。格闘を避けるため、女性から反撃された時は何をおいてもまず逃げることとした。

「逃げようとしても追いつかれたらどうする?」

逃走しても女性に追いつかれ格闘となった場合には、ためらわずに三秒以上の通電を行い、逃走時間を稼ぐこととした。格闘の際、スタンガンを落としてしまうことも想定し、飛び出し式ナイフを携行することに決めた。ナイフを使用すれば相手女性を殺傷する可能性が極めて高い。威嚇用にとどめておきたいが、ナイフを見せても女性がひるまずに襲い掛かってきた場合は、ある程度切りつけるのもやむを得ないだろう。相手女性の腕、顔などをためらわずに切りつけ、逃走することとした。

実験全体を通じて特に気をつけることは、誰にも目撃されないことである。相手女性にさえ、自分の姿を見られないことが望ましい。とはいえ顔を見られる可能性は非常に高い。襲う直前にストッキングをかぶって顔貌を変形させ、さらに帽子を深くかぶることとした。

「夜の闇の中、相手と二人っきりになるのを待ち、チャンスがきたら後ろから一気に襲ってすぐに逃走し、自転車に乗って現場から離れるんだ」

相手女性が警察に事情を聞かれた時に「後ろから突然襲われたので犯人の姿は全く見えなかったし、何が起きたのかも分からなかった」と答えるのが理想である。


いよいよ決行の意思を固め、八月一日午後七時十分。圭太は黒色のTシャツ、迷彩色の長ズボン、足には動きやすいよう運動シューズを履き、百円ショップで買ったストッキングと黒い帽子をバッグにしまい、真っ赤なスタンガンを左のポケットに、飛び出し式ナイフを右のポケットにしまい、マンションから出発した。

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