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第四話:芳樹の秘密アルバム

芳樹は右手に青い表紙のアルバムを持ちながら、息を切らしている圭太に話し掛けた。

「久しぶり。何で走ってんの?」

圭太はそれには答えずに、芳樹に問い返した。

「風邪じゃなかったの?何で外にいんの?」

芳樹は左手でポケットからハンカチを取り出すと、額の汗を拭い、今度は右手でアルバムを圭太の顔前に突き出した。

「これを見てもらおうと思ってさ」

アルバムは大学ノートほどのサイズで、写真が大量に収められているらしく、大きく膨らんでいた。

表紙にはボールペンで「秘密アルバム」と書かれていた。

芳樹はアルバムを圭太に渡すと、中身を通りすがりの大人達に見られないようにするためだろうか、ハンカチを両手で広げて、アルバムの周囲を囲った。

そして、「早く開けてみろよ」と促した。


圭太はアルバムの表紙をめくった。

一ページに三枚ずつ貼られた写真には、見慣れぬ制服を着た女子高生達が写っていた。

紺色のミニスカートを履き、白いワイシャツに紺と白の縞模様のネクタイを締めた彼女達は、マイクを握って歌を歌っている様子で――カラオケボックスで撮影されたのだろう――中にはカメラ目線で写っている少女もいた。

彼女達は全部で四名いるようだったが、気になるのは、常に彼女達の真ん中に、マイクを握った芳樹が写っていることだった。

写真からは、彼ら五人がただならぬ関係であることが伝わってきた。

圭太は心中穏やかでなかったが、それは顔に出さずに、

「これが何なの?」

と芳樹に聞いた。

芳樹は、圭太の質問には答えずに、

「もっと先のページを見てみろよ」

と促した。

圭太は言われるまま、先のページへと急いだ。ページがめくられるたびに、女子高生達のネクタイはゆるみ、ワイシャツははだけていった。そして、いつしかマイクはほったらかしになり、芳樹とじゃれあう方に夢中になっていった。

ページがさらに進むと、彼女達の胸を触っている芳樹の写真が現れ、他には、芳樹の手が、彼女達の太ももに伸びている写真もあった。

そして、彼女達が上半身裸になってしまうと、急に場面が変わり、別のカラオケボックスで、また別の女子高生達と写っている芳樹の写真が現れた。

圭太は写真から目を放した。

芳樹はつまり、学校を休んで女子高生達とカラオケ三昧の日々を送ってきたというわけだ。

それにしても衝撃的だったのは、芳樹が何のためらいもなく、少女達を裸にし、そしてこれまた何のためらいもなく、彼女達の体に触っていたことである。

これまで、圭太も数多くの女性達に声をかけては、トイレに連れ込むなどしてビデオ撮影に励んできたが、相手の服を脱がして裸にするようなことはなく、せいぜいスカートをめくるぐらいだった。ましてや、直接相手の体に触れる――例えば、胸を揉む――ことなど一度もしたことはなかった。圭太がしてきたことは、文字通りのビデオ撮影に過ぎなかったのである。

女性の体を触るなどというのは、大人だけがするとんでもない行為であり、もしも自分が触るのであれば、自転車で追い抜きざまに不意打ちの痴漢行為をするぐらいしか方法はないと思っていた。

呆然とする圭太を見て、芳樹はハンカチでアルバムを隠しながら、

「見終わったなら返せよ」

と言った。

圭太は青ざめた表情で、アルバムを芳樹に渡した。

芳樹は「秘密アルバム」を大事そうに抱えると、立ち尽くす圭太には何も言わずに帰っていった。


夏本番の日差しが照りつけ、セミがけたたましく鳴いていた。

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