システム
しかし、
世界を救うと言っても、
俺に何ができる。
「ところで、俺に何ができる」
俺は尋ねた。
「その機械で、住民たちに指示を出すの」
ジュノは答えた。
なるほど、シミュレーションゲームのようなものか。
「それで、誰に指示が出せる?」
俺は尋ねた。
「人間なら誰でもよ」
ジュノは答えた。
不思議だ。
人間なら誰にでも指示ができる。
それならなぜ危機になっている。
協力体制さえ作れば、
何だってできるのではないか?
「なぜ前任者達はそれだけのことができたのに?」
俺は尋ねた。
「・一度に指示できる回数は3人まで。
・指示は夢のお告げという形。
・データ量に制限がある。
そういう制約があるの」
ジュノは答えた。
「夢のお告げということは、無視する奴も多いのでは?」
俺は尋ねた。
「そうよ。大概無視するわね」
ジュノは答えた。
悪夢で終わったら、
3人の選定を間違えたら村ごと死ぬのか?
なんてムリゲーだ。
セーブもリセットもできないし、
命令は無視される可能性もある。
シミュレーションゲームなんて生半可なレベルじゃない。
「君の世界に神はいないのか?」
俺は尋ねた。
「もちろんいるわ。私は神から遣わされたのだから」
ジュノは答えた。
「じゃあ、神はなぜ何もしない?」
俺は尋ねた。
「しているじゃない。
夢のお告げを与える権限を、異世界の民であるあなたに与えている」
ジュノは答えた。
「こんな、ちっぽけな権限を……、
与えただと」
俺は呟いた。
「君たちは、みんな言うよね。ちっぽけな権限と……。
そのちっぽけな権限を行使するのに、
私たち妖精がどれだけ負担に耐えているか知らないくせに」
ジュノは唇を噛んだ。
そうか……、
この子の身体に負担がかかるんだ。
「そういう意味じゃないんだ。神に対して憤っているんだ」
俺は言った。
「神様は人間達にあまり干渉ができない。
そういう掟なの。
破れば神の座を追放されるわ」
ジュノは答えた。
そうか。
これが精一杯なのか。
仕方ない。
受け入れよう。
「まず全体像が見たい。どうすればいい?」
俺は尋ねた。
「そうね。まずはマップを見ることね。
そこを触って」
ジュノは指をさす。
俺がカーソルをあわせると、
「そう、そこ。
あっ……。」
声を上げた。
心配そうに、俺は顔を覗き込む。
「うん、大丈夫。
そこ、うん。大丈夫。一度読み込むと安定する」
ジュノは答えた。
大きなマップが読み込まれた。
各々、街の名前や人数などが書かれてある。
赤く塗りつぶされた街もあった。
「この赤く塗りつぶされた街ってまさか……?」
俺は尋ねた。
「そうよ。滅びが確定した街。
この国の街や村は6000ある。そのうち1000はもうムリよ」
ジュノは答えた。
ということは、5000の街や村を救えと、そういうことか。
「お告げは1日のうち1回、3人までか?」
俺は尋ねた。
「そんなにないわ。一つの街や村につき、1回3人まで。つまり1回で成功させないと、そこは終わり」
ジュノは答えた。
厳しすぎるだろ。
トライ&エラーが試せないなんて……。
俺は前任者の重圧を、
ようやく少し理解できたのかもしれない。
1回3人まで、つまり15000人に夢を見せて、魔王軍から救う。
そんなことができるのか?
しかし王国なら軍はどうしている。
「王国の軍はどうしている?」
俺は尋ねた。
「活動しているわ。ただ治安悪化を恐れて、情報統制に動いているだけだけどね」
ジュノはため息をついた。
「守ろうという気はないのか?」
俺は尋ねた。
「王国と言っても、王直轄の部隊は多くはない。大多数が貴族達の私兵よ。
そんなので統一的に動けると思う?」
ジュノは答えた。
「ムリだな」
俺は言った。
「そうでしょ。神様も尽力なされた。しかし権力構造が原因だから、神様でもなんともならないのよ」
ジュノは答えた。
俺に助ける義理はない、
でも助けないと俺も生きてはいられない。
しかし、
完全に詰んでるじゃないか?
「正味、俺に勝ち目はないと思うんだが……」
俺は力なくため息をついた。
「君には仲間がいるじゃない」
ジュノは答えた。
「仲間?引きこもりの俺に?」
俺は笑った。
ジュノはパソコンを指さす。
インターネットの匿名掲示板、魔除けのツボだった。
「そこに仲間がいるんじゃないの?」
ジュノは尋ねた。
「仲間?顔も知らない。話したこともない連中が?」
俺は尋ねた。
「そうよ。頼りになるんじゃないの?」
ジュノは答えた。
頼りに……。
なるのか?
「あいつら、頼りになるのか?」
俺は尋ねた。
「さぁね。相談してみなさいよ」
ジュノは答えた。
「いいのか?」
俺は尋ねた。
「いいわ。ただ信じてもらえないでしょうけどね」
ジュノは答えた。
俺は考えた。
魔除けのツボの連中が、
話を聞いてくれるのかと。
ちょっと待てよ……。
異世界運ちゃんのスレが立って盛り上がったくらいだから、
案外いけるのかもしれない。
それに連中は俺と同じで暇だから、
怒るとかより、
話に乗っかってくれるかも。
しかし、
どう言えばいい?
俺はスレを立てたこともない。
でも、
この状況では、
連中しか頼れない。
俺は魔除けのツボのヘルプを見ながら、
スレを立てることにした。
「じゃあ、スレを立ててみる」
俺は言った。
ジュノはうなづいた。
ーーーーーー
【スレタイ】 異世界を救うことになったけど、ムリゲー過ぎて泣きそう。
1 :さすらいの自宅警備員:
初めてスレ立てます。
急遽、異世界を救うことになりました。
設定がムリゲー過ぎて、俺だけではムリそうなので、
助けて欲しい。
2 :すらいむ:
釣りなのか?
3 :さすらいの自宅警備員:
俺もこのスレタイを見たら釣りだと思う。
釣りと思ってくれても良い。
でも本当に困っているから、アドバイスはガチで欲しい。
ネタ消費感覚でやってくれないかな?
4 :名無しのオカルトマニア:
設定がムリゲーって、
どんな設定よ、
……
その書き込みで、
俺はしばらく書き込みをやめた。
どこまで公開してもいいものか悩んだからだ。
しかし隠し事をしたら、それでややこしくなる可能性もある。
できるだけ正確に答えよう。
そう決心した。




