六十三話『表面だけじゃ語れねぇ優しさってモンがあんだよ』
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目隠しを付けられた状態でクロウサギアジトに怜士が連れて来られる。…それは取引の成立を意味した。クロウサギアジトの玉座に座るダークマスター。跪くダーク戦士たちを前に、ムクロとマツに腕を捕まれた怜士が、一歩ずつ、一歩ずつとダークマスターがいるほうへ距離を詰めていく。
ダーククイーンが、怜士に黒いウサギのネックレスをかける。同時に、怜士は「はァッ…」と息を漏らした。
『目隠しを外せ』
ダークマスターが言うと、ムクロとマツが目隠しを外す。ムクロにブーツの長いヒールで後頭部を蹴とばされる怜士。怜士は「ッ…!」とダークマスターがいるほうへ近づく。
「…宇佐美さ…」
怜士が男の名を呼ぶが、ダーククイーンが間髪入れずに「ダークマスター様と呼べ」と怜士に言う。
「は?」と困惑する怜士。
「くッ…お前さてはクロウサギの⁉」
とダークマスターを睨みつける怜士に、ダークマスターは『…斬』と小さな声で呟く。途端、ウサギのネックレスが赤く光り出し、怜士の首を絞めるような感覚を与える。
「うぐぐぐぐぐぐぐッ…」
と首を押さえる怜士。その感覚は、ダークマスターが指を鳴らした事で、一度止まる。
「なぜだッ!なぜお前のような男が…⁉それに、佐野本部長は、宇宙警察はなぜ俺を⁉」
声を荒げる怜士に、ダークマスターは『スーパーイエロー、葛城怜士の身柄引き渡しをもって宇宙警察本部との取引は成立した。よって私、クイーン、葛城怜士以外の者をこれにてクロウサギから追放する!』と、突然意味不明な事を言い出した。
ミドハラは「はァッ⁉俺たちゃ用済みってか⁉」と声を張り上げながら言い返す。
他の末端たちまで、ザワザワと近くのダーク戦士たちと会話をはじめる。
「ダークマスター様、正気ですか⁉私たちは全員ダークマスター様に誠心誠意仕えてきたのですよ⁉それをいきなり切り捨てるだなんて」
と言うサルジマに、ダークマスターは『私の命令は絶対だ』と答えた。
マツは「ダッ、ダークマスター様、私の諜報員としての立ち場は」と慌てるが、ダークマスターは『当然、今日をもって終わりだ』と答えた。
「はぁッ⁉」と信じられない様子のマツ。
ムクロが、「私は一体どうなるのでしょう」とダークマスターに尋ねる。
ダークマスターは『直に警察が来て刑務所だろうな。ムクロ(おまえ)は未成年だからまだ減刑も望める』と説明した。
マツは「くッ…」と悔しそうに言葉を詰まらせる。
「まさか…取引って」と何かに勘づくマツに、
ダークマスターは『嗚呼そうだ‼お前らのリストを渡し逮捕させる代わりにスーパーイエローの身柄をこちらへ引き渡す事で取引が成立した‼』と高らかに言うダークマスター。
「最低だ‼」なんて、末端のダーク戦士から声が飛ぶ。
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「ダークマスター、外の世界に出たらお前が最低で最悪の人間だと言いふらしてやる‼俺たちは最悪な人間に振り回されただけなんだと‼お前に仕える必要なんてハナッから無かったんだ!おかしいと思っていたよ!」
と怒りを顕にする末端のダーク戦士。
ダークマスターが仮面でどんな表情を浮かべているのか目にすることは出来ないが、足を組み余裕そうな態度をダーク戦士たちに向けている。
ダークマスターは、『好きなだけ言えばいい。好きなだけ嫌えばいい。』と末端たちに言った後、『お前らが不要になった事実はもう帰られない』と冷酷な声色でダーク戦士たちに告げた。
『ヒビキ‼』
ダークマスター名前を呼ぶと、「はッ!」と赤髪の高校生ぐらいの女性がクロウサギアジトにライフル銃を構えながら現れる。
『トウマ‼』
ダークマスターの声と同時に、「はいはい…」と面倒くさそうにこれまたライフル銃を構えながら現れる。
『イズミ‼』
ダークマスターに呼ばれた調子のいい関西弁の若い男が、「ほないっちょやったろかー‼」とライフル銃を構えながら現れる。
『なんだなんだ⁉』と慌てる一同。
クロウサギアジトのロビーの照明が消える。
クロウサギアジトから締め出されるダーク戦士たち。
怜士は、その様子を見て「あァ…」と黄色の瞳を震わせた。
「入れてくれよ‼」
と扉をガンガン叩くサルジマの声が遠くから聞こえるが、ダークマスターは何の対処もしなかった。
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クロウサギアジト、外。
「ももたんのグッズも全部あの中…」と泣き崩れるサルジマ。
ミドハラは「テメェら、これからどーすんだ?」と末端たちに問いかける。
「…捕まるのはイヤ」と言うムクロに、マツも「当然ですよ‼」と声をあげる。
「ダークマスター様が蓄積したダークエネルギーで変身していたからもう変身はできないな」と言う末端のダーク戦士に、ミドハラは「如月市から出られねぇとなると困ったもんだな」と笑う。
「うわッ…⁉」
足が透けている事に気が付いたサルジマが下を見て大声を出す。
「サルジマさん⁉」
末端のダーク戦士たちが、徐々に下半身が粒子になっていくサルジマに駆け寄る。
「いやだ‼サルジマさんッ‼」と泣き出す末端のダーク戦士。
「…どうやら本当に不要にされちまったようだな」と切なげに微笑むサルジマ。
「ッ…」
ミドハラの身体も、下半身から透けていく。
「ミドハラさんッ⁉」
ダーク戦士の一人がミドハラの身体の変化にも気が付き声をあげる。
ムクロが、「ウソ…」と両手で口を覆い驚いたような表情を見せる。
マツも二人が消える瞬間を目撃しないように目を逸らす。
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「大将、アンタもう首まで」と言うミドハラに、サルジマは「嗚呼…時間みたいだな」と笑う。
「やだッ‼サルジマさん‼ミドハラさん‼ダメ‼」と叫ぶ末端のダーク戦士
「ダメッ‼ダメです‼サルジマさん‼」
サルジマがいなくなった地面に縋るように泣き出すマツに、もう首元まで消えかかってしまったミドハラが、
「泣くな、こういう時こそ笑え!お前らと出会わせてくれたのは他でもない、ダークマスター様だ。感謝を蔑ろにしていたから俺たちはこんな目に遭うんだろ。今からでも遅くない、ダークマスター様に忠誠を誓え、お前らはまだ先がある。捕まろうがまだ更生できる、前を向け、とにかく…諦めるな」
と激励する。 『ミドハラさん!』目の前の男の名を呼ぶダーク戦士たち。
ダーク戦士たちがミドハラに縋るが、ミドハラも静かに粒子となって消えてしまった。
「うッ…うッ…」と泣き出す末端のダーク戦士たち。
「なにしてんだよダークマスタ―‼俺たちのサルジマさんとミドハラさんになにしてんだよ!」
クロウサギアジトの扉をガンガンと鳴らすダーク戦士たち。
ダークマスターは、『…』とその様子をただ眺めていた。
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マツが泣きながら、「サルジマさんも…ミドハラさんも…もういないの?」と呟く。
「…ねぇ聞いて」とムクロが口を開いた。
「私はこの後、駅前のホテルに行く。知人も誰もいないから、市内に私を預かってくれる施設が無いかを探す。あなたたちはどうするの」
ムクロの問いに、マツが「僕は…バイトを本業にして…何とか生活を整える…。宇宙コメディアンの仕事を再開してもいいかも…でも…サルジマさんも…ミドハラさんもいない…寂しいよ…」とムクロに答えた。
他のダーク戦士たちは、「捕まらないように名前を変えて…」などと語った。
俯くダーク戦士たち。
「どうすれば…どうすればいいんだよ…」
いきなり仕事も住居も、信頼できる味方まで失ったダーク戦士たちは、呆然とクロウサギアジト前に立ち尽くすのだった。




