五話『人間って完全体じゃつまんねぇのに完全体になりたがるやつ多いよな。どういう心理だあれ』
「あー」クロウサギのアジトでは、ダークフレイムことソードが不満気な表情を浮かべていた。「やられっちまいましたよ、なんだあの赤いガキは。怪物如きで苦戦するようなブラック一体なら余裕で勝てたはずなんですけどねぇ」ソードはそう言うと、ワイングラスに入れた葡萄系の炭酸飲料を飲む。サルジマは、「宇宙のほとんどを滅ぼし、後は地球だけってのに妙に手こずるな。」と素振りをしながら答える。「洋室で素振りすんの辞めて貰えませんかねぇ」と言うソードに、サルジマは、「身体が訛ったブラックにも勝てない俺じゃ悪役の名に廃る!特訓は正義だ!」と語った。ソードは、「悪役ってほど俺たち悪い事してましたっけ。ダークマスター様がヒーローを滅ぼせって言うから宇宙全体のヒーローを滅ぼしてきただけなのに。そもそもサルジマさん。怪物に苦戦するようなブラックは宇宙全体を見ても大して強くありませんよ。あの程度今までだって普通にやってのけたでしょう。」と説明する。
サルジマは、「ぐぬぬ、なんだ、なんだソードは。俺が弱いって言いたいのか!!」と反論するが、ソードは「お好きなように捉えてください、サル。」とサルジマの地雷を踏む。「俺はサルじゃない…!!夢と希望を運ぶ伝説のサルだ!!!」言い返すサルジマに、「じゃあサルじゃないですか」と真顔で答えるソード。「順番的にはアンタですよミドハラさん。さっさとやられて死んでください」ソードはミドハラに当たり前のように暴言を吐く。ミドハラは、「黙れソード。ブラック一人なら太刀打ち出来たが、レッドみたいな厄介なやつが出てきちゃこっちもたまんねぇ。ダークマスター様は今までブラックを倒せと命令してきたのに、なんで今回はレッドなんだ。それに、なんでレッドが現れること、その正体までを知っているんだ」と疑問を口にする。ソードは、「知りませんよそんな事。俺たちをまとめるのはダークマスター様。ダークマスター様に逆らえば俺たちなんて存在ごと消される。それともミドハラさん、アンタはダークマスター様の言葉が脅し程度のものとお考えで?」と問いかける。ミドハラは、「ダークマスター様が言うことは全て事実だ。俺たちはレッドを殺す他無い。」とキセルを吹かしながら答えた。
『クロウサギ共』指令室の上階から、黒いマントに身を包み、仮面で顔が見えない男が杖を持ちながら現れる。『ダークマスター様!!』サルジマとミドハラは声を合わせ土下座するが、ソードは椅子に座りながらワインに見立てた葡萄系の炭酸飲料を飲む。『またレッドに勝てなかったか、貴様らがそんなに怠けているとは私は思わなかった。心底軽蔑する』ダークマスターの言葉に、サルジマは土下座しながら「違うんですぅぅぅ!!!ブラック一人ならまだしもレッドまで出てこられると!!」言い訳する。ミドハラは「ソードも謝れ!!!!」と言うが、ソードはふんッ、とどこかそっぽを向く。『私はヒーローを倒すために、スーパーレッドを倒すためにお前らを創ったんだ!!!!私を失望させてくれるな…。レッドの一つ倒せずに何が悪役だ!!私の知ってるお前らはここまで弱くない!』声を荒らげるダークマスターに、ソードは、「お言葉ですがダークマスター様」と二人の前に立つ。『なんだソード。私に反論する者は存在を消すぞ』ダークマスターがそう言うと、サルジマが、「ソード、辞めておけ」と制止する。ミドハラも、「ダメだソード!これ以上は!!」と土下座した顔を上げながら焦る。「ちょっと色々と、知りすぎじゃないですか」ソードはダークマスターに言うと、ニヤリと笑った。
ダークマスターは、ガンッと重たい杖を床に突きつける。『ヒィッッ!!!』震えた吐息を合わせるサルジマとミドハラ。『ソード。口を慎め。私はクロウサギの全てを仕切る者だ。私に従わないと言うなら、その時は実力行使だ』ダークマスターはそう言うと、指令室の中へと消えていった。「ソード!!!!お前ダークマスター様を怒らせたな!!」ミドハラは立ち上がりソードの胸ぐらを掴む。「やめてくださいよミドハラさん。俺は気になった事を言ったまでです。」ソードはそう言うと、「それに」と話を続ける。「ダークマスター様だって尊敬してますよ。俺は。あんなに強くて自分の信念を曲げねえ奴なんていねえや」ソードはそう言うと、「ミドハラさん、次はアンタですよ。行かなくていいんですか」とミドハラに視線を送る。「はぁ…。わざわざ俺が行く事でもねえのに。しゃあねえな」ミドハラは頭を掻きながら言うと、ドアノブに手をかけ、扉を開いた。
時を同じくして、宇宙警察ステーションでは、マナがパソコンに表示された数値とにらめっこする。「やっぱりおかしい…。前よりも宇宙の総合的なバランスが乱れてる。地球以外の生命体が存在する惑星が滅んだせい?それとも、誰かがこの宇宙の外側から妨害電波を送信してる??でも、今まで確認された生命体が存在する惑星の文明レベルでは宇宙の外側に辿り着くなんて不可能。それに、もう地球以外に宇宙人は存在していないわ、なぜ???」呟くマナに、上司は「これは少し調べてみる必要がありそうね。」とマナのパソコンの画面を見つめながら言った。




