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『宇宙警察L戦士』  作者: ミタラリアット


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十六話『ヒーローって誰でもなれるんだよ。悪役にだって誰でもなれるんだよ。でも、誰かのために手を差し伸べられるやつが一番かっこよくねえか?』

  おじさんの客が喫茶キュアミラージュの二階の寝室にあるベッドの上に、サルジマの体を置く。江藤は、ユニバースカードリーダーに"治療"のカードを差し込む。「やあ!僕チョットパー!!!」マスコットキャラクター風のシカの宇宙人が江藤に話しかける。江藤は、「ちょっとこの人治療して欲しいんだ」とチョットパーにお願いする。チョットパーは、「お任せあれ!!!私はシカの妖精で宇宙警察を支えるために作られた医者のチョットパー!!!ちょちょいのちょいで解決!ワッハッハー!!」と笑いながら言った。またしてもネズミの国に怒られそうな際どいアラ〇ン風の曲がカードリーダーから流れる。「ワッハッハー!!!」と山〇宏一気取りで言うチョットパーに、江藤は、「ギリギリを攻めすぎじゃない?」と苦言を呈する。「ジー〇ーかぁ」と感心するおじさん。「ちょっと辞めてください」と焦る江藤。サイドテーブルに置かれた水とタオル。サルジマは、「ぅ゛ぅ…ももたん…ももたん」と魘される。おじさんの客は、「俺は帰るぜ、レッド。後は任せた」と江藤に言った後、喫茶キュアミラージュの二階から階段を降りていく。チョットパーは、「出血が多いな…」と真剣な表情を浮かべる。「サルジマさんは助からないかもしれないの!?」と驚く江藤に、チョットパーは、「待て待て。助からないとは言ってない。僕は医者妖精だぞ。治せるに決まってる」と答えた。二人の存在に気づいたサルジマは、「なぜ…なぜ助ける…?俺は敵だ、お前の首を狙った…悪者だぞ。」と意識を朦朧とさせながら呟いた。「助けるに…決まってるじゃないですか。いくら敵であれ、僕らは助けますよ。目の前で辛い思いをしている人がいるのなら、善人でも悪人でも手を差し伸べる。これがヒーローじゃないですか」と心配した表情でサルジマの顔を覗き込みながら言う江藤。サルジマは、「首を…狙われていると言うのに…貴様は…敵を…」と江藤を見つめながら言った後、「ぅ゛ぅ」と呻き声をあげる。「今は横になってください。サルジマさんは僕たちヒーローが助けます。それに、いつでも僕の首を狙いに来ていいですよ。僕たちは何度でも戦います。」江藤の言葉に、「この大馬鹿者…!!!」とサルジマは目に涙を溜める。「まあいいから落ち着けサル」とサルジマに声をかけるチョットパー。サルジマは、「サルじゃない……俺はサルジマだ…」と言い返す。チョットパーが「じゃあサルじゃねえか」と言っては、サルジマは「シカ如きに言われたくない!」と不満気に答えた。チョットパーはサルジマに手を当てて治癒しながら、「でもレッド。お前も敵に情けをかけるなんて物好きだな」と江藤に言った。江藤は「わかってないな。人が人を助けるのに理由なんていらないんだよ。それに、情けに見返りなんて必要無いんだ」と優しい表情で答える。光に包まれ、傷がゆっくりと癒えていくサルジマ。サルジマは、「少年…」と感心したように呟く。「僕がヒーローになったのは運命かもしれない。でも、ヒーローとしての使命を背負ったからには、僕は僕が目指すヒーローそのものでありたい。どこまでも熱く、どこまでも真っ直ぐで。誰であろうと目の前で苦しんでいる人がいたら助ける。それが人情ってやつじゃないですか。誰だって最初は優しい気持ちで産まれてくるんです。最初から悪者だった人なんてこの世に存在しません。社会に適応する過程で、人と人が対立していく過程で、人間は歪んでいくんです。サルジマさん。あなただって、綺麗な心の持ち主なんですよ。本来は。それだけは忘れないで」と江藤が言うと、サルジマは起き上がる。「なんだか心が暖まるような…」サルジマは自分の両手を見ながら呟く。江藤とチョットパーは顔を見合わせて微笑む。治療が終わったサルジマは起き上がる。サルジマは黙って帰ろうとするが、思い止まり振り返る。「礼を言う、ありがとう」そう言うとサルジマは、早足で階段を駆け下りて行った。「いい事したなぁ」と微笑む江藤。「生まれた時から悪者の人はいない、か。」サルジマの背中を見送りながら言うチョットパーに、江藤は、「そうだって、信じたいんですよ」と続ける。キッチンで皿を洗い終わった女子高生に、サルジマは「サルのお兄さんまた来てね~~!」と陽気に話しかける。「今度は写真撮って~~!」もう一人の女子高生も、サルジマに手を振った。サルジマは、「悪くねぇな…この地球(ほし)も」と笑みを浮かべる。


 皆が寝静まった頃の深夜。クロウサギのアジトでは、アイドルのライブの紙袋に入った大量のグッズだけを持って帰ってきたサルジマを見て、ソードが「ダメだったんですね」と呟く。「みてぇだな」とミドハラもサルジマの様子を見て呆れたようにキセルを蒸す。「なんで俺たち記憶もねぇのに悪いこと続けなきゃなんねぇんだ」と言うサルジマにソードは、「地球に毒されたか」と乾いた笑みを浮かべた。ミドハラも「まさか大将に限って俺たちを裏切る。なんて事ァ言わねぇだろうな」とサルジマに釘を刺す。「悪さをするのが俺たちゃクロウサギの生きがい、ダークマスター様に仕える事が役目だろーが。なにヒーロー共に影響されてやがる」とミドハラは言う。その言葉に、サルジマは「…」と切なげな表情を浮かべて黙り込む。「レッドは…レッドは良い奴だ…あんな良い少年に…俺たちゃ」と言うサルジマの背中を、ダークマスターが杖でド突く。吹き飛ばされ地面に這いつくばるサルジマに、『なんだ……?』と見下ろすように赤い目を向けるダークマスター。『次に私に抗うと言うのなら実力行使で従わせるからな』ボイスチェンジャー越しでもハッキリ伝わるほど重たく低い声色が響く。サルジマは「……ダークマスター様……」と震えたように呟いた。『ソード、ミドハラ。お前たちも連帯責任だ。誰かが私に反抗したりしたら全員に暴力を使ってでも従わせる。一人でも裏切ったりしないようにお互い監視しておけ。逃げ出したりしたらどうなるかわかってるな?その時は全員まとめて……皆殺しにしてやる!!!私に不可能な事は何もない!ハーッハッハッハ!!!』高笑いしながら指令室に去っていくダークマスター。ミドハラが「だってよ」と言った後、ソードは「しっかりしてください、サルジマさん。」と手を差し伸べた。その手を取るサルジマ。サルジマは、悔しそうに拳を強く握りしめる。「俺は悪役だ…」と呟くサルジマに、ソードは「分かってるならいいですよ」と答える。


 指令室で椅子に座り頭を抱えるダークマスターに、ダーククイーンが「どうだ?思い通りに行かないだろう」と口角を上げながら話しかける。「お前を巻き込んだのは私。物語をはじめたのはレッドじゃない。いい加減理解してくれ。」ダーククイーンの言葉に、ダークマスターは『こんな場所で止まれない、もう止まれないんだ、レッドを、レッドを殺す!!レッド!』と感情的に声を荒らげる。『正義なんてこの世には存在しない、行き着く先は絶望!ヒーロー共に思い知らせてやる、希望などどこにも無いのだと、俺は何回もブラックと戦った。だがあいつは本物のヒーローじゃない。あいつには"魂"が無い。俺を倒す事が出来るとすれば江藤だ。江藤新一、スーパーレッドだけだ!だから俺たちはレッドを殺す。レッドこそが本物のヒーローだって知っているからこそ、レッドの息の根を止めなければならない!』ダークマスターが言うと、ダーククイーンは、「ならば今まで通り先回りしてブラックを殺していればいいだろう。なぜレッドの覚醒を止めなかった。」と指摘する。ダーククイーンは、「ひょっとしてお前はレッドの首を求めているわけじゃなくて、レッドに裁かれたいんじゃないか。」と一つの答えを導き出す。ダークマスターは『ッ…』と動揺したような息遣いをする。ダーククイーンは、「図星か。だからこんな世界を創ったんだな。刑のシステムを書き換えてまで。」と嘲笑した。「でもお前が創った世界は優しいな?ダークマスター様。ところどころにお前の"理想"が垣間見える。」ダーククイーンの台詞に、ダークマスターは『…』と黙り込む。ダーククイーンは、「今のお前は現実を見るより偽りの世界に閉じこもる事に夢中なんだな…。それともお前は傷を癒したいのか???あの女では無い第三の依存対象を創り上げて。それにレッドは利用されたと」とダークマスターを煽る。「刑のシステムを書き換えることより、素直に罪を償う事を考えたほうがいいと思うぞ」とダーククイーンは言う。ダークマスターは、ダーククイーンの忠告に聞く耳を持たない。ダーククイーンは指令室から立ち去っていく。「………救われたい」部屋を出ていったダーククイーンの耳にも、扉越しに地声で呟くダークマスターの本音が確かに届いた。虚構。

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