十五話『推し活をするなら推しに対する敬意を持ちましょう』
喫茶キュアミラージュは連日大繁盛。今までにないほどの集客を記録していた。「はぁ、忙しいなオイ!」と愚痴を言いながらも調理に追われる光太郎を、江藤も支える。「光太郎くん!カラスミパスタ!!」おじさんの客がキッチンに注文する。学校帰りの女子高生たちも、「私もカラスミ!」「私も!」と次々とキッチンに向かって注文する。ハツネは働ける年齢では無いため、女子高生たちに話しかけにいき、適当な雑談を繰り広げる。「はいご注文の品です」江藤が客たちに皿を運んでは、会場中に拍手が起こる。「ねえ変身して!」と客にリクエストされては、「いやそれは…!」と江藤は焦る。「いいじゃんもう周知の事実なんだから!」と言う女子高生に、「無理ですよ!!!」と大きな声をあげて言い返す江藤。ハツネは、「アホやなぁ、変身のひとつやふたつサービスで見せりゃ儲かるやん」とめんどくさそうに江藤に言う。「ハツネちゃんは変身できないの??」女子高生に問われては、「ははッ、私宇宙人やし、ヒーローなんてなれへんよ」と乾いた笑みを浮かべる。「なりてぇのか」と言う光太郎に、ハツネは「ちょっとだけやけどな。」と頷く。光太郎は調理を続けながら、「ふうん」と適当に答えた。「私もなれないかなぁ!ヒーロー!」と料理をスマホで撮影しながら言う女子高生を見てハツネは、「ヒーローってどないしたらなれるん」と問いかける。光太郎は、「全ては素質」と呟きながらフライパンを振り、「でもまあ、たまに無茶するバカがヒーローになることもあるけどな」と江藤を見ながら笑った。「バカって僕ぅ!?」とツッコむ江藤に、「誰がいつバカが悪口だと言った。思い込みが激しいんだよテメーは。これだからお前は万年童帝なんだ」と呆れながら言う光太郎。女子高生たちがくすくすと笑う。「私も腹減ったで。ファミレス行くから小遣いくれ」調理する光太郎にキッチンの前から話しかけるハツネ。光太郎は、「江藤に貰って来い」と江藤に指示を出す。江藤は、「えっと…」とレジから数千円を取り出し、「三千円もあれば足りるよね?」と首を傾げる。ハツネは、「おおきに!」と江藤に感謝を述べファミレスへと向かっていく。
数分後、ファミレスで食事を終えたハツネは、異変に気づく。「…なんかおかしい…」ハツネは街に群がるゾンビのようなオタクを見て呟く。「ももたぁぁん……」「ももたぁぁん……」ゾンビのようなオタクたちは、喫茶キュアミラージュの方向に向かって侵攻していく。その様子に囚われるハツネの背後に、「お嬢さん」と剣を向けたサルジマが迫る。「誰やアンタ」と振り向くハツネ。「お猿さん…?」とハツネが呟くとサルジマは、「サルじゃねぇ!!宇宙人だバカタレ!」と叫ぶ。呆れた表情のハツネ。「なんや、こいつらアンタのせいか。はよ片しとき」とハツネはサルジマに手を振り、「んじゃ」とガン無視して喫茶キュアミラージュの方向へ向かう。「え??」と困惑するサルジマ。「もっとなんかあるでしょ!?何してんだお前ぇ!!!みたいな下りが!!」と説得するサルジマに、「私ヒーローやないもん。そんなに戦いたいって言うなら江藤と光太郎呼びに行こか?そっちのほうが適任やで」と真顔で答えるハツネ。サルジマは、「この状況見てなんとも思わねぇのか!?」とハツネに叫ぶが、「だる」とハツネは一言で済ませ喫茶キュアミラージュへゾンビのようなオタクの群れと一緒に歩いていく。サルジマは「小娘!!!」とハツネの首根っこを掴むが、ハツネは「ほわぁちゃぁぁぁ!!!」と叫びながら生身でサルジマの股間に蹴りを入れる。「グォァァ」と呻き声をあげるサルジマ。サルジマは、「ふざけるな!!!」と叫んだ後、ゾンビのようなオタクの群れの中から一人のオタクを捕まえ、「ワン・デバイド!!!」と変身と共にラビット・フレーバーを生み出す。「もういい!貴様など興味もない!レッドめぇぇぇぇ!!!」と剣を振りかざしながら喫茶キュアミラージュへと向かう。ハツネは、もう一発やればいけるかな、などと考えた後、「ほわちゃぁぁぁぁ!!!」とダークモンキーの背中を蹴り飛ばす。「ぅ゛~」と痛そうな声をあげるダークモンキー。ファミレス前から、大量のオタクの群れとラビット・フレーバーが喫茶キュアミラージュの方向へとパレードのようにゆっくり侵攻していく。「あかん!!!」と叫ぶハツネ。ハツネは全速力で来た道を引き返す。喫茶キュアミラージュでは、「なにあれ…」と扉越しに見える様子がおかしいオタクの群れを指さしながら、女子高生が呟く。同時に大きな揺れが起こる。「きゃぁぁぁぁぁぁぁあぁぁ!」姿勢を低くし机に隠れる女子高生たち。ラビット・フレーバーの足音が、ズシン、ズシン、と重たく聞こえる。
「な、なにあれ」と机から顔を出し青ざめるもう一人の女子高生。「江藤、出動だ」光太郎が言っては、江藤も「はい!」と答える。客たちは店から飛び出し、戦いを間近で見つめる。「来るなって!危ねぇから!」と言う光太郎に女子高生たちは、『はい!』と声を合わせる。だが、光太郎は、「はいじゃねえよ!下がってねえじゃねえか!」とツッコミを入れる。そんな中、生身の江藤に向かって全速力のラビット・フレーバーが突撃し、江藤を吹っ飛ばしていく。「江藤…!?」と江藤の方へ駆け寄る光太郎を前に、ハツネが「何してるん!??」と叫ぶ。突撃したラビット・フレーバーは江藤を踏もうとするが、江藤は、「バーニング・フェニックス!!!」と叫び即座に変身を済ませる。「スーパーレッド!!参上!!」変身を済ませたレッドは、「火車…斬撃!!!」と剣に炎を纏わせラビット・フレーバーに攻撃する。レッドが戦っている間に、光太郎も「ユニバース・ランスロット!」と叫び、変身を済ませる。炎を身体中に纏うラビット・フレーバー。だが、レッドは異変を感じる。「今までと違う!?」レッドが言うとブラックは、「クソ、進化してやがる……!」と剣を構えながら低く舌打ちした。「ハッハッハッハッ!死ね!!!」サルジマが笑いながら屋根上に現れる。駆けつけるハツネ。「光太郎!江藤!」二人の名を呼ぶハツネを見て、レッドとブラックは、「ちょっと…」「来ちゃダメ!」と焦る。ハツネは、「私だって戦いたい、出来ることなんて無いかもしれないけど、戦う!!」と喫茶キュアミラージュから持ち出した金属バットを構えながら言った。
途端、ハツネの胸からピンクの光が現れる。ピンクの光は、ユニバースカードとカードリーダーに具現化した。一部始終を見ていたレッドは「なに!?」と驚きの声を上げた。インカムを付けるブラック。マナは、『状況は理解しているわ!!!その女の子が第三の宇宙警察!!!カードリーダーにカードを差し込んで「フレッシュピーチサンシャイン!」って叫んでって女の子に言って!!!』とブラックに指示を出す。ブラックは、「ハツネ、!!!フレッシュピーチサンシャインって叫んでカードリーダーにカードを差し込め!!!」とマナからの指示をそのままハツネに伝える。ハツネは、金属バットを地面に置き、「フレッシュピーチサンシャイン!!!」とユニバースカードをカードリーダーに差し込んだ。即座に変身を済ませるハツネ。「治癒と調和の戦士!!スーパーピンク!!!」適当な変身ポーズを取るピンク。かっこいい登場シーンもよそに、ラビット・フレーバーは炎を纏ったまま客たちを狙って動き出す。「危ない!」とブラックは咄嗟に客たちの前へ飛び込み、「ランスロット・ブラック・ライトニング!」とブラックはラビット・フレーバーに雷を食らわせる。爆風で吹っ飛ぶ客とブラック。怪物はその場で燃え続けている。少し離れた場所からレッドとピンクは駆けつけようとする。だがゾンビのようなオタク群れが、少し離れた場所にいるレッドとピンクを取り囲む。
金属バットを握りしめるピンク。動けない二人を屋根上から見下ろしているダークモンキー。「萌え~~」「ピンクちゃん萌え~~」と言いながらピンクの身体を触ろうとする太かったり細かったり様々な風貌のオタクたち。「汗臭!!!」と根絶しながらも、ピンクは後ろに後ずさる。レッドはピンクの前に出るが、オタクの一人が「ぼくちゃん男の子もいけるんだよねぇぇ」と、レッドのぶら下がったアレ、に手を触れようとする。レッドは、「辞めろ!!!!」とオタクの一人に回し蹴りを食らわせる。ダークモンキーは、「フハハハハハ!お前たちが浮かれている間に、ドルオタ共を大量のアイドルグッズで買収し手下になって貰った!!」と高笑いする。「洗脳してたわけじゃないのかよ!」とツッコむレッドに、「演出に決まっているだろう!こいつらには自我がある!」と答えるダークモンキー。ダークモンキーは、「オタクたちはみんな俺の仲間だ!やれぇぇぇぇ!!」とオタクたちに指示を出す。少し離れた場所で燃え盛るラビット・フレーバー。オタクたちは刃物を片手に持ち、それぞれレッドとピンクに掴みかかる。「うわぁぁ!!!」「きゃぁぁぁぁ!」身動きが取れなくなる二人。「服を切り裂いてやろう…!」と鼻息を荒らしながら言うオタクに、ピンクは、「アンタら、そんな風にアイドルも性的消費してるん!?」と声を荒らげる。レッドも、「辞めてください…!触らないで…!!!」と必死に抵抗した。ダークモンキーは、「フハハハハハ!!抗うなよ、レッド!貴様の首を取れれば俺たちは文句無しなんだ!」と愉快そうに状況を楽しむ。ダークモンキーはそう言うと空中から着地し、剣を構える。「オラァァァァァ!!!」身動きが取れないレッドの首に向かって剣を振りかざするダークモンキー。レッドは「な゛ッ!!」と動揺するような声をあげる。
途端、背中を切られるダークモンキー。「お待たせ」ブラックはそう言うと、二人にグッドサインを示す。「な゛!?怪物は!?」とオタクに掴まれながら叫ぶレッドに、ブラックは「客たちが消火器使って頑張ってる。ダメージはかなり食らってるみてぇだし大丈夫だろ」と答える。ブラックは、レッドとピンクにしがみつくオタクたちを見て、「どーすっかな」と頭を悩ませる。背中を切られ、床に這いつくばるダークモンキー。オタクの一人が、「この二人がどうなってもいいのか」とレッドにナイフを向けながら叫ぶ。「たかがグッズのために買収されて悪事に手を染める?笑っちまうぜ」ブラックはそう言うと、「じゃあ俺も全く同じ手を使わせてもらう」と答える。ダークモンキーが、「なに!?」と声をあげる。「アイドルオタクにはアイドルで抵抗するのが礼儀だろ!!!」とブラックが言うと、音楽が爆音で流れる。「これは…!」オタクたちはナイフを飛ばし、皆が知っている音楽が流れている屋根上に視線を向ける。『あいどんとのぉーあいどんとのぉーあいどんとのぉー、わからないわ~~♪ 盲目信者の大概は~♪押し付けるものじゃない♪』サチコとサチヨがアイドルに変装した姿でヘッドセット越しに歌を歌いながら適当な民家の屋根上で踊る。『カタルシスが得られるとき、好きと勘違いするんだ~♪』『流行りものを追ってるだけでクラス中から人気者~♪』サチコとサチヨが振り付けを完コピしながら歌い踊る様子に、オタクたちは歓喜の声をあげる。『本当に推しへの敬意がある人は何割なんだろう???』サチコとサチヨが歌う歌に涙を流すものまで現れる。
オタクたちが歌に夢中になっている間に、三人は「よし」と顔を合わせてラビット・フレーバーのほうへ向かっていく。『あいどんとのぉー♪あいどんとのぉー♪あいどんとのぉー♪オタクならば♪推しに迷惑をかけるなよ♪民度を良くしてこう♪』ダークモンキーが、「こんなものに…こんなものに惑わされるな!!」と使いつくばりながらオタクたちに手を伸ばす。「俺のグッズを…俺のグッズを大量に貰っておいて…!!お前ら!!!寝返るのかッ……!!!ヒーロー共に…!」オタクの一人が、サチコとサチヨの歌を見上げながら、「テノヒラクルーはオタクたちの得意技って事…知らないんですか。サルジマさん」と声をかける。
「ッ……!!!」オタクの一人はそう言った後、「熱愛が発覚しても、推しが不祥事を起こしても、たとえどんな記事が流れたって、推しを信じて離れないでいる。それこそが"真の推し活"なんじゃないですか。」と語る。「……ちがう……推す事と盲目になると言う事は違う…ファンだからこそ……!推しが悪いことをしたら中傷にならない程度に悪いって言わなきゃ行けないんだ!!!俺はドルオタだ……これからいつまで経っても…ももたんのオタクでいたい!!!」と言いながら立ち上がるダークモンキー。「俺は俺のやり方で、レッドの首を取ってやる!!!カラダもってくれよ…三倍ダークモンキーだ!!!」ダークモンキーはそう言うとレッドのほうへ走って行った。
ラビット・フレーバーの消火も終わり、「やったぁぁぁ!」と喜ぶ客たち。ラビット・フレーバーは起き上がろうとするがうまく起き上がれない様子。「行くぞレッド、ピンク!」ブラックに呼ばれては、レッドは赤い剣、ピンクは金属バットで、ラビット・フレーバーの上に飛び乗る。「グォォォォ…」と呻き声をあげるラビット・フレーバー。客たちもラビット・フレーバーの上に乗り飛び跳ねる。ダークモンキーが「待って俺のラビット・フレーバーちゃんッ!!!」手を伸ばしながら涙目で叫ぶが、客の女子高生二人は、「これ楽し!!!」と言いながらトランポリンのように軽々何回もジャンプして遊ぶ。大勢にジャンプされたラビット・フレーバーは、「グォォォォォォォ!」と声を上げ、そのまま消滅してしまう。着地する三人と客たち。ダークモンキーは、「なぁぁぁぁぁ!?」と頭を抱えて膝から崩れ落ちる。「やったぁ!」とハイタッチするヒーローと客たち。オタクたちも、サチコとサチヨのライブで満足したのかそそくさと帰っていく。
全てが、元通り。変身を解くヒーロー三人。ダークモンキーは、「グッズはタダで配る羽目になるわ、レッドの首は取れないわ……許さん……許さんぞ!!」と怒りに震えた後、傷が深かったのか意識を失い倒れる。ハツネが「お猿さん!!!」と倒れたダークモンキーに駆け寄る。江藤、光太郎も後に続く。「手伝ってくれ!」と光太郎が大きな声で皆を呼んでは、サチコやサチヨ、客たちも集まる。変身が解けるサルジマ。おじさんの客の一人が、「任せな」とウィンクする。サチコが「じゃあアタシは水分を」と言った後、サチヨは「アタシはタオルを!」と店まで取りに行く。おじさんの客がサルジマを担ぐ。女子高生の一人は、「私たちは?」と光太郎を見つめる。「全員の食器洗ったら割引」光太郎が言っては、女子高生二人は、『やった!!!』とハイタッチする。江藤は、「じゃあ僕は治療します。」と光太郎に言って喫茶の二階へ戻っていく。ハツネも、「お猿さんが心配や!」と言いながら喫茶の二階に戻っていった。"敵であれど手を差し伸べる"これこそが宇宙警察のヒーロー像。




