十話『悪役にだって休日は必要だろーが。テメェら悪役が休まないとでも思ってんのか。悪いことするにはそれなりのエネルギーが必要なんだぞ。でもそんなエネルギー使うならいい事に使えよ本当によ』
アイドルのライブ会場。混雑している会場に一人。最前列を陣取り、「俺~~の!ももた~ん!」と絶叫しながらペンライトを振るサルの姿をした宇宙人が一人。『ありがとう~~!!次の曲は"絶対アイドル辞めてやる"だよ~~!』と恐らくももたんであろうアイドルが曲紹介をする。ももたんの言葉が終わらない間に、食い気味で『うぉぉぉぉぉぉ!!』と、三日三晩エサを見つけられなかった野生動物がエサを穴の中から見つけた時のようなオタクたちの歓声が湧き上がる。『絶対アイドル~♪♪辞めてやんぞ~!クソ喰らえ~♪♪プロデューサーとメンバーが【自主規制】~♪♪隠されてるあんなことやこんなこと【某テレビ局名】の信頼を下げた【個人名】の事~~♪♪全部全部私知ってるぅ~♪♪全部全部私~~~♪』ももたんが過激な歌詞を歌い上げる中、サルジマは「ぅ"ぅ…!!!!」と涙を流す。「成長したなぁももたん…ド新規すぎてなんも知らねぇけど…!」サルジマはそう言いながら顔を手のひらで覆いながら泣き出す。隣にいたファンが、「なぁんだ?アーンタ新入りかい、ありゃビッグになったもんだ。最初十人組のアイドルグループだったのに九人がタレントY氏からの性被害に遭って脱退。取り残された彼女だけがライブで一躍スターに。運命っては皮肉なもんだァ、彼女が一番の落ちこぼれで不人気メンだったのにこんな事ってあるんだなぁ」と感心する。「そりゃももたんは最強っすよ、可愛いし、明るいし、オバカキャラだけどしっかり者で仕事は真面目にこなすし!!」とサルジマは隣のファンに言った。「てかオメェさん宇宙人か。今や宇宙人もアイドル見る時代になったんだなァ。ももたんすげぇや。ずっと推してきた甲斐があったもんだ。まーさか地球外生命体に推される日が来るなんて」隣のファンが嬉しそうに答える。「でもいいんすかねぇ、私みたいな宇宙人がアイドルのオタクなんかやっちゃって。」サルジマが言った瞬間、背後から何者かに銃を突きつけられる。黒いパーカーフードを被った男が銃をサルジマに向けていた。『良いわけないだろ』男はボイスチェンジャー越しに小声で淡々と言う。ゾクッと背筋を震わせるサルジマを見た隣のファンが、「なんかあったかアンタ、急に顔色が悪いぞ」とサルジマを心配する。サルジマは、「いやぁ、気にしないでください!!!」と笑うが、ダークマスター様ァァァァァァァ!!!と振り返り心の中で絶叫する。ダークマスターは腕を組みながら地蔵状態でライブを観戦する。「なんだあいつ」「おもしろくないやつがいるな」ぐちぐち周りに言われては、『ッチ』と舌打ちしダークマスターは去っていく。ライブ終了後、「最高ッしたね~!」とファンの男と肩を組みながら出てくるサルジマ。外で待っていたダークマスターに気が付けば、「すんません、迎えが来たんで」と軽く謝り、ダークマスターの方へサルジマは歩み寄る。「ダークマス…」サルジマが彼の名を呼ぼうとすると、勢いよくサルジマは平手打ちされる。「ぼほぉ」片手で頬を抑えるサルジマ。「叩かなくたっていいじゃないですかダークマスター様!!!」涙目になるサルジマに、ダークマスターは『使い物にならないなら死ね』と吐き捨てる。どこかへ行こうとするダークマスターにサルジマは、「いくらなんでもそれはないですよォッ!」と訴えながら追いかける。『私はレッドを殺せと貴様らに命じて地球に送ったんだ。これでは話が違うだろう。貴様らは、お…私に従うのが使命…!!!なぜ地球に染まっているダークモンキー!』震えた声で言うダークマスターに、サルジマは「すんまっせぇぇぇぇぇん!!!」と土下座しながら謝る。「我々クロウサギはダークマスター様の思いのまま!!焼くなり煮るなりなんでもどうぞ!!!」土下座しつつもグッズが入った紙袋を大切に守るサルジマを見て、ダークマスターは『私以外に偶像崇拝をするな』と命じどこかへ消えていく。(何故だ、何故私の思い通りにプログラミングしたはずのにあいつらが従わない。まさか邪魔が介入している!?それにあいつだって私のデータにはいないはず…なぜ!) アジトに帰ろうとしているダークマスターと、買い物帰りのスーパーレッドこと江藤新一がすれ違う。ダークマスターは赤い目でギロッとスーパーレッドを睨みつける。(純粋な正義など…この世に存在してはならない…そんなもの…この私が捻り潰してやる!!)ダークマスターは心で呟いた。
クロウサギのアジトでは、サルジマが「ぅ゛ぅぅぅ…う゛ぅぅぅぅ」とグッズを並べながら泣き出す。「ももたんももたんももたんももたんももたん…」アイドルの名を連呼するサルジマに、ソードは、「相手十七歳ですよサルジマさん」とスマホで調べながら呟く。サルジマは、「じゅ、じゅ、じゅ、十七!?」と驚く。ミドハラは「んだよオタクなのに年齢すら知らなかったのか」とキセルを吹きながら言うが、「ぉ゛ぉぉぉぉ」と下剤の効果がまだ残ってるのか座り込む。「ぅ゛ぅぅぅ゛」「ぉ゛ぉぉぉぉぉぉ」サルジマの絶叫とミドハラの悲鳴が交差する中、ソードは、「はぁ。本当に困りますね、上二人がこれじゃ。そろそろ俺は仕事に行きます。二人も早く、仕事に取り掛かってください。レッドの首を持って行けばいいなんて簡単な仕事じゃないですか。ねえ…ダークマスター様」と言う。ソードはそう言うと帰ってきたばかりでフードを被ったままのダークマスターに話しかける。「はじめてアンタのラフな格好を見ましたよ。顔もそろそろ見せてくれたらどうです?どうせ、色男なんでしょ」とソードはダークマスターに問いかける。ダークマスターは、『私のことはいいから仕事をしろ』とボイスチェンジャー越しに伝え、階段を上り上階の司令室の方へ立ち去って行く。ミドハラは、「うんこが…うんこがしたい…」と呟き便所へ駆け込んだ。「不思議ですね、サルジマさん。俺たちがこんな奴に仕えてるなんて」とソードはそう言うと、サルジマに視線を向けた。「相手はダークマスター様だぞ…!」とサルジマはソードを注意する。「だから?ダークマスター様がどんな人かも俺たち知らないんですよ」と黒い笑顔を浮かべる。「気づいたらここにいて使われているだけじゃないですか。何が起きてるのか、レッドと戦いながら情報を集めた方がいいとは思わないんですか、サルジマさん」とソードが言うとサルジマは、「ハッ…」としたような表情を浮かべた。
司令室では、ダークマスターが『はぁ…』と溜息をつきながらベッドの上に寝転がっていた。「わかったか。ダークマスター。何もかもお前の思い通りには進まない事。」謎の女はそう言うと、ダークマスターに覆い被さるようにベッドの上に移動する。「永遠の贖罪を果たす使命を負った上に最愛の人間がいない世界でただ一人かつての英雄を求め続ける愚者。か。あいつが見たら鼻で嗤うだろうな。すべてを手に入れ神となった男が今は一人前の役者にすらなれないと。」謎の女に言われては、『離れろ!!』とダークマスターは叫ぶ。「一体何度繰り返す?もう人生は充分謳歌しただろう?お前は喩えるなら回り続ける愚者の象徴。"舞台装置"だ。運命に"反逆"するつもりか??ならば言わせて貰おう。無駄だ。今のお前は"お人形遊びに徹する悪魔未満"でしかないんだぞ。この意味、わかるか?」謎の女はそう言うと口角をあげた。「何度も何度も人生をやり直そうとして、こんな繭の中にまで閉じこもって。お前が見出した答えがレッドを殺すことか」と言い、「呆れる」と冷たい溜息をついた。「お前の敵は本当にレッドか??」謎の女の言葉にダークマスターは、『くだらない』と吐き捨てた。「性格が歪んでるぞ、それは自らの手を汚してまで手に入れた最愛の人間と離れる事になってしまったからか?」と馬鹿にするように笑う。『黙れ!!!』とダークマスターは叫ぶ。「ほぉ、"都合が悪い"か。可愛らしいな。このまま私がお前の未知の顔を露わにしてやってもいいんだぞ」と言いながら、謎の女はダークマスターの首元から服を脱がそうと手を這わせる。『辞めろ!!!!』ダークマスターは謎の女を蹴り上げ、ベッドから突き落とす。ダークマスターはぬいぐるみを抱き締め、『なんで俺ばっかりがこんな目に…』とボイスチェンジャー越しに声を震わせる。謎の女は、「可哀想だな」とだけ笑い立ち去って行った。ダークマスターはこれまでを思い出す。『クソッ…』




