砂漠も今日は瑞々しい 4
物語を終わらせるために、なんらかの展開を張っておいてみたかった。
あれからしばらく、二、三日に一回の店番が続いた。うちのように商品を並べている店が多い市場では、あの少年以外にもしょっちゅう盗っていくのを目にする。私もいつかその場に遭ったら、おばさんみたいに追い返せないといけないのだろうか。
与えられた役割の上で、与えられた精神性で声を上げる。少なくとも私は、どこにも寄りかからない自分の意志があると思われるのに抵抗を感じている。うまく自分の声は形にならないものだ。道理に沿って考えていくのが価値ならば、私は引っ張ってくれる誰かによって生きていくことができる。
それだけで、いいものだろうか。
いや、大して貧しくもない生活が、こんな考えに育ててしまった、それだけだ。うん。
私はしばしば、日の下でも心が陰っていることが少し増えた気がする。
「おーい。やってるかい?今日も君か。」
「はい。いらっしゃいませ。」
たまに何芋をいくつか買っていくおじさんだ。常連なので、来店の半分くらいは私が当たっている日だった。
いや、おじさんというにはもうちょっと若いかも、ベルさんをおばさん呼びにしちゃったからな。
「今日もじゃがいもね。はいこれ。」
いつもの袋を手渡す。最初に会った日から変わらないから、日を見るごとにほつれが目立つ。これを片手に今日も芋を数えるのだ。芽が出ているのを見ると、どうしても手に取るのを避けてしまう。ベルおばさんは多分、偏りなくというか適当に入れているのだろうが。私にはどうも心が足りないのかもしれない。
「そういや見たかい?高速線から突っ込んできたっていう車。ありゃ派手な事故だったね。砂漠の外じゃあんなに速い乗り物があるんだから、俺らには信じらんないもんよ。」
「高速線から?私、行ったことないんですよね。あんまり生身で近づかない方が良いって言いますし。」
高速線というと、私たちの住む砂漠の地方を挟むように先進国が都市を築いているのだが、その間を行き来するのに作られたものだ。通る車の速度は際限なく、砂埃や排気がきついらしい。ただでさえこの暑さには応えるのに。
ただし、母の話だ。私もここ最近特に興味はなかったからかなり前に聞いたことだが。
「別に危険って言うほどでもないぞ。それに最近じゃ渡るってのも大変だが、向かいにはここと同じような街だってあるのに。それは知ってたか。」
「ええ。でも歩道橋とか造ったみたいな話って…。」
「多分お前さんが生まれてくるかそのすぐ後くらいに、崩れたぞ。だからそこを介した流通なんてのは滞ってるのが現状だ。けどまあ若いんだから、一回くらいは渡ることもあるんじゃないのか。用はなくても。」
「どうですかね、そっちでしたいこともないのに。はい。こちら今日も十六個になります。」
「別にそりゃ気分だよ気分。」
どっしりとじゃがいもを詰めた袋は、破れないか心配で下から持って渡した。なんだかおじさんは明るい人だから、私もそれに合わせて明るくないと、みたいな笑顔になってしまう。
「あい。それじゃあがんばれよ。またな。」
「はい。お待ちしております。」
「いい挨拶だよな。それ。お前からしか聞いたことねえけど。」
今日はもう、お昼も過ぎて日が傾いていたから、おじさんの影も伸びていた。
この国のこの砂漠には、全く雨というのは降らない。正直、空から水が降ってくるなんて、想像もできない。排気も砂埃も水に濡れば、少しはマシだろうか。
渡る気なんて起きないだろうに。




