砂漠も今日は瑞々しい 3
私の思う主人公の視点が、読んでる人にも伝わるといいんですが。
あと名前ハナって言ってみたはものの名乗った場面書かれてないです。
お店の前は肩幅四人分くらいの道が通っていて、ここ以上に商売の活気が満ちている。日が出ていても、外でたくさんの人が流れていく。
通りゆく人々とは特に目が合ったりはしないが、何人かちょっと立ち止まってはこちら側を見つめていた。お客さんがいない間は、店先に立っているだけだが他にもすることはある。というかできることと言うべきか。一日の終わりにもらう果物を決めておくのだ。最近はお店にある商品の種類もあらかた把握はしてきた。でも、やっぱり値が張るものとかは私にはまだ、とても選びにくい。
「あ、はい。何をお求めですか…?」
あれ、今誰かいなかったっけ。
前かがみで店の外を見回してみるが、気のせいかもしれない。私が乗り出した台の籠が揺れて、芋が一つ二つ転がってこぼれた。その時だった。私は確かにお店の前、腰の高さほどの台を隔てた先にいる浅い息遣いを感じた。
「え、そこにいるの。」
すると、さっきこぼれた芋を握った手が現れて、籠に置いた。同時に立ち上がって、隠れていた姿を明かしたのだった。
「いやあ、転んじゃったからさ。その拍子に落ちた芋だよ。」
少年は私とほとんど同じ丈で、少しオーバーサイズに見えるポンチョに包まれていた。足もとまでは見えないから、ここからだと幽霊みたいな軽やかさを思わせる。いきなり現れて、いきなり話しかけられたものだから私は反応が遅れていた。
「そ、そんな驚かなくてもいいでしょ。」
彼を凝視しているのは自覚していたし、話をするのに戸惑った。どう考えても、盗もうとしていたようにしか思えないからだ。確かに店番の経験は浅いし、人の身体の動作を細かく知っているわけでもないが、不自然な佇まいだったのだ。
「ならお気をつけて。」
「おい!まだ帰せんよ。」
「おばさん!?どうかしましたか?」
「いたのかよベルさん!」
「お前さんうちの前じゃよく転ぶねえ。その身のためにも、この前は通らないほうが良いんじゃないかい?」
「別に盗ろうとしてるわけじゃ。」
「そりゃ、毎回私が見つけてたからだよ。」
店の奥から出てきたおばさんは、見たことないくらい強気な語り口で少年と話している。彼を覆う布がぱたぱたと揺れる。
「ああ、そうだ。オレンジだ。オレンジを買おうとしたんだよ。一つでいいや。」
そう言うと彼は、私の前にあった籠からオレンジを掴んで、急いで皮をむき出した。
「えっと、オレンジは…。」
「200だ。200カロンだ。何を金も払わずに食ってんだい?」
いや、そんなはずは。私がこの前売った時、四つでももっと安かった気がする。そう思って代金表を確認しようとしたら、もうおばさんの手にあった。
「え!ほんとかよ。」
「まあ、ここ最近はオレンジも人気だからね。値上げも仕方ないよ。ほら、払いな。」
彼は、しぶしぶお金を払って帰っていった。なぜか私も、今日はオレンジを二つもらって帰るのだった。この砂漠の夜は昼間のそれから想像できないほど寒い。日が差し、暑く乾いている時と違って、オレンジの輝きの特別な印象は透けて見えない。
ただの果物。直に触れて感じるそれを、食べるにはまだ早い気もした。まだ結構青かった。あえて選んだつもりだった。
思い返すと、人、殊に同年代との関わりがなかった。トンネルの間でさえ、ほとんど人気がない。彼のような少年少女は今、どこでどんな暮らしをしているのだろうか。




