砂漠も今日は瑞々しい 1
この回は、会話シーンみたいのがないです。残念。あと語りて(主人公?)の名前はとりあえずハナってことで呼ぶ予定です。いくつでしょう、14歳くらい?
風の強い日は目に砂が入らないように気をつけなさい。そうでなくても高速線に近づくのはもっと危ないからあなたはきっとここで暮らし続けるのよ。
私の一番好きな色は青色だ。この町で一番キレイなのはきっと空だ。日が昇って暑く、乾く前まではうちの屋根の上でその色を忘れないように目に焼き付けるのだ。私の座っている周りが触れられないほどに温まってしまうと、もう降りるのは大変だ。
うちの周りの草木は砂にこそげ落とされたみたいな、鮮やかさのない緑色をしていたから幼い私はあまりその色が好きではなかった。
午後の買い出しはトンネルを歩いて、オアシスのあたりにある賑やかな市街地へ行く。トンネルは道の途中に小刻みに置いてある休憩できる屋根のようなものだ。だから歩いているのはほとんど外なんだ。
吹く風は暑いから、顔に当たらないようにフードを深く被る。その肌は吹き付けられた砂でかさかさしている。その出入り口の近くには、トゲトゲした草が植え込まれている。
私は八歳のときからここを通って家の手伝いを続けている。まだ母といっしょに歩いていたころだ。暑い日の下で作業していた男の子たちは役所の仕事をさせてもらえて嬉しいなんて喋っていた。私とほとんど年も変わらないのに、上着の下まで日に焼けて働く彼らに少し憧れた日もあった。確かに私はお小遣いを貰えるくらいの家に住んでいないから。
この草みたいなのはアガベなんとかとか言うらしく、一昔前に一斉に植え付けられた。
砂漠に在るものはつらい環境に向かって力強く生きているというより、いつも寡黙に過ごしているように見える。
なぜこんな人通りの少ない道に植えられたのかさえ分からないまま数年たった。
私達の文化の集合地であり生活の源である市街はいくら歩いても道を覚えきることはなく、ヤシとかブドウとかを育てている畑がずっと広がっている。それにどの端までも歩いたことはまだない。
お店の多い中心街に近づくと道が傾斜して、人も多くなる。街自体は小高い丘に集まっているのだ。道が舗装されて石畳になったのも最近だし、沿道にまばらに細長い木が植えられたのもそうだ。
このあたりは土地の持ち主とかそういう考えがない。だからあまり譲り合いという気持ちを持たずに建物が押しあって並んでいるのだ。
それぞれ屋上に橋渡しみたいなのが続いているから日陰ができる。その下には誰かが思いやりの椅子を置いてくれるので一休みだ。
肌に触れてもくずが刺さることのない、表面のツルツルした良い椅子だ。背もたれのある椅子を他に見たことがない。
私は店番をさせてもらうのだ。このあたりはレンガ造りの古い建物が基本の区画になって、それの間にあるトタンの屋台みたいのが道を狭めている。
私の通う青果店はよく買いに行っていたので、顔見知りになった店主のおばさんとよく話す。
おつかいにしか来ない私は、好きな果物を買ったことがなかった。私の母はここでしか手に入らないりんごが気に入っているから、いつもそれだけを買うのだ。
品数が豊富だから、よくそういう外国の野菜とかの話を聞いていた。お店の奥の方まで吊られたりして並んでいる籠にごろごろと載っている。来るたびにその配置がばらばらに入れ替えられているから、単純な私は毎日違う商品に出会っている気分だった。
ある日そんな私を見かねて、おばさんは私に店番をできるか頼んだのだった。




