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貴方を愛すること  作者: りな


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開花

 きよかは、これまで両親から受けた投資に、

 美しさという対価で応えてきた。


 それは、彼らが自分にとっての投資主だったからだ。


 ふと、思い出す。

 ——あと二日で、十九歳になる。


「これは、きっと神の思し召しだわ」


 五年一貫校に通っていたため、まだ学生ではあったが、

 十九歳になれば、親権者や後見人がいなくとも、

 法的な手続きを自ら行えることを、きよかは知っていた。


(……でも、どうしようかしら)


 刃物や露骨な事故は、疑いを招く。

 不自然な死は、必ず調べられる。


 悩みあぐねていると、ノックの音がした。


「さっきは、強く言いすぎたわ」


「お母様……大丈夫です。

 お母様の愛情は、ちゃんと伝わっていますから」


「明日は学校でしょう?

 運転手の田中さんに迎えを頼むから、早く帰って来なさいね」


 ——暗に、男と会うなという忠告。


「はい。すぐに帰りますわ」


(……運転手)


 家付きの運転手、田中。

 彼を“使う”ことができるかもしれない。


 翌日。

 いつものように、田中の運転する車で学校へ向かう。


「田中さん」


「はい、なんでしょう」


「もうすぐ私の誕生日でしょう?

 両親に、お礼がしたいの。どう思います?」


「それは……素晴らしいことだと存じます」


 バックミラー越しに目が合い、

 きよかはにこりと微笑んだ。

 田中も、穏やかな笑みを返す。


「お母様の好み、田中さんはよくご存じでしょう?

 何がいいかしら」


「私は、ただの運転手ですので……」


 視線を逸らし、言葉を濁す。


(お母様と関係を持ちお金を恵んでもらってるくせに、、、)


「そうだわ。

 山の恵みを使った料理なんて、どうかしら」


「私が手料理したら、喜んでくれると思いません?」


「ええ。

 どんな高価なものより、きっと喜ばれます」


「ありがとう。

 帰ったら、相談してみるわ!」


 放課後、教室を出ると声をかけられた。


「今日は、勉強しないの?」


 彼の顔を、まっすぐ見られなかった。


「今週は忙しくて……

 でも来週には、全部終わるから。そしたら——」


 視線が重なり、言葉が詰まる。


「その先は、俺が言う。待ってて」


 きよかは、静かに頷いた。

 胸が高鳴り、慌てて気持ちを落ち着かせる。


 帰りの車内で、きよかは言った。


「明日、少し山へ行きたいの。

 両親には、内緒で準備したくて」


「危険ではありませんか」


「大丈夫。田中さんがいてくれるでしょう?

 自分で用意するから、意味があるの」


 少し考えた後、田中は頷いた。


 帰宅後、使用人にも“内緒の計画”を伝えた。

 最初は渋られたが、

 お金では買えない贈り物だと説明すると、了承された。


「明日、朝から出かけてきてもいいかしら?」


「どこへ?」


「参考書を買いがてら、気晴らしに。

 田中さんが一緒だから、心配いらないでしょう?」


 母は一瞬黙り、やがて頷いた。


「……田中さんと一緒なら」


「あっ、明日はお腹を空かせていてね!」


 ——屈託ない、純粋な少女に見えただろうか。


翌日、きよかは山へ向かった。


 事前に調べていた山菜をとっていく。

 そしてもう一つ


(見つけた)


 ハリシドコロ、、、


 これの為に山菜採りにきたのだ


 見つかってよかった。

 やっぱり神様は私の味方なんだわ


 ハリシドコロだけポケットに忍ばせていた袋にいれてしまう


「たくさん取れたし、帰りましょう」


 田中さんも疲れたのか「そうしましょう」とすぐに車を出してくれた


 帰宅後、用意した料理は大いに喜ばれた。


 お父様は私を呼び膝の間に座らせて頭を撫でた

 機嫌がよくなると毎回こうして私を側に呼びつけて可愛がる


その時間が、きよかには耐え難かった。


「もう一つ、プレゼントがあるの」


 手渡したのは、二人分の宿泊券。


「ここに、素敵な用意をしたの。

 二人で行ってきて」


 甘えるように見つめると、

 二人は嬉しそうに支度を始めた。


 きよかは田中のもとに行きホテルまで両親を送ってほしいと頼んだ


「あ、忘れるところだったわ。

 これ、お礼よ」


 料理の入った容器を手渡す。


「そんな……」


「食べてほしいの。

 田中さんも、家族みたいな存在だから」


「ほら!あーん!」


 ハリシドコロの天ぷらを口に運ばせる


「はしたないって言われちゃうから2人だけの秘密よ」


 田中さんは少し赤くなり頷いた


 程なくして両親と田中さんは出発した。


 私は明後日が大事な学力試験の為行けないと伝えていた。


 2時間がすぎただろうか、、、


(上手くいっているといいけど、まぁ失敗していても大丈夫なようにはしているし。問題はない)


 勉強に集中する


 気づくとあたりは暗くなっていた


 両親からの連絡も田中さんからの到着連絡もない事を確認する


 電話をしてみるがでない、

 ホテルに問い合わせするとまだ到着していないという


 笑みが溢れる


 ハリシドコロは2時間ほど経つと昏睡や幻覚等の症状がでる


 ホテルは眺めのいい海が見渡せる丘の上にある、

 運転の途中で昏睡したなら

 今頃海の底かしら、、、


 使用人に連絡し、

 不安で震える“少女”を演じた。


 やがて、事故があったと知らされる。


 調べは尽くされた。

 不審な点は、見つからなかった。


 時間が経ち、

 すべては「不幸な出来事」として処理された。


 きよかは、莫大な資産を手にした。


 使用人には十分な礼を渡し、別れた。

 学校に戻れたのは、葬儀と手続きが終わった二週間後。


「大丈夫?」


 彼が、心配そうに声をかけてくれる。


「大丈夫。

 あなたが、いてくれるから」


「無理はしないで。

 支えになれたら、と思ってる」


 本当は、すべてを話したかった。

 両親よりも、あなたを選んだのだと。


「今日、うちに来ない?

 話を、聞いてほしいの」


 彼は、優しく頷いた。


 ——私は、このことを一生後悔するだろう。


 私は、純粋だった。

 純粋すぎたから、間違えてしまったのだ。

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