陵サイドー記憶
陵は車を走らせていた。
行き先は、きよかの実家。
きよかは知らない。
陵がそこを知っていることも、
何度も何度も訪れていたことも。
それは、きよかが陵を認識するずっと前から。
初めてきよかに出会った瞬間、陵は確信した。
――運命だ。
ずっと探していた人だと。
初めて見たのは、高校の頃。
きよかは、最低な男の恋人だった。
陵はその男に金を強請られていた。
囲まれ、殴られ、逃げ場はなかった。
情けない自分を呪いながら、ただ耐えるしかなかった。
その時。
「私がいるでしょ?
お金なら出すから、行こうよ……ね?」
きよかが現れた。
柔らかい声。
揺るがない目。
その一言で、陵は救われた。
神の助けだった。
けれど――
きよかは、あの男に傷つけられていた。
腕に残る痣。
伏せた視線。
陵は気づいていた。
どうして別れないのか。
別れられないのか。
問いかける資格はなかった。
ある日のきよかさんのいない時だった
いつもみたいに囲われて金をせびられる
あのクソ男は隣に汚らわしい女をはべらせていた
「洸くん彼女いるじゃーん。あの大人しめ?な女」
「あれは金目当て。好きなわけねーだろ」
そんな話をする男を殺したくなる
(きよかさんはお前に相応しくない。)
奥できよかさんが見えた気がしたが
あいつらから殴られたせいで
確かめる事はできなかった。
少したち、俺は立ち上がる
(アイツを殺そう)
そんな思考に支配されていた
アイツがいく場所はわかっていた
クラブで毎日どんちゃん騒ぎしているのは
有名だった
クラブ前で待っているときよかさんが現れた
車でアイツを迎えにきたんだろうか
悔しくて唇を噛む
きよかさんはアイツを乗せてどこかえ行く
俺はタクシーに乗って追いかける
着いたのは綺麗な豪邸だった
俺も金持ちと言われてたけど
その家は次元が違うと家からでわかった
(誰の家だ?もしかしてきよかさん??)
親にアイツを合わせるつもりなんだと焦る
タクシーを降りて入っていった門の先を見る
少し悩んでから忍び込む事にした
脇の垣根をよじ登り敷地に入る
少し歩くと洋館と広い庭が見えてきた
「お前の家やべーな!!」
「なぁこんな金持ちならもっと小遣いくれるよな?」
アイツの声に怒りが込み上げるが必死に我慢する
(ここで何かしたらきよかさんに迷惑がかかる、、、)
庭にいる2人を見ながら
冷静になるように努めていると
突然アイツが膝から崩れ落ちた
きよかさんの手には注射器がある
「大丈夫?苦しいよね?」
きよかさんは本気で辛そうだった
「今楽にしてあげるから」
アイツは動けないのかピクピクと揺れている
きよかさんはカバンから包丁を取り出してそれを
アイツに突き刺した
アイツはその一度で動かなくなった
動揺した
殺そうとしていたとはいえ、
目の前で殺人が起きたのだ
腰が抜けて動けなかった
その後アイツの死体を運ぼうとするが
重かったのだろう
中々動かせなかった
きよかさんはしばらく困っていたが
意を決したようにどこかへと車で向かった
俺は彼女の車を見送ってから
カメラがないか辺りを見回す
一応フードを被りアイツへと近づいた
血で染まった服意外は
寝てるようにしか見えない
足で少し押してみるが
【それ】はなんの反応もしなかった
今までの事が不意に頭を駆け巡る
(死んでよかったんだこんな奴、、、)
車の音がした
慌てて元いた場所に戻る
きよかさんの手には工具やノコギリが握られていた
アイツの体を解体していく様に
何故か俺は激しく嫉妬していた
きよかさんが悲しそうに申し訳なさそうに
解体したからだろうか
それとも頭部を愛おしそうに
抱き抱えたからだろうか
バラバラになったアイツは
きよかさんの家から出てくる事はなかった
それからは俺は普通の高校生に戻り、
きよかさんを見かける事すら無くなった
あの強烈な記憶ときよかさんを忘れる事はなかった
忘れなくては二度と会えない人なんだから
そう思って大学も地元から離れた場所にした、、、
その場所で俺はきよかさんを見つけた
奇跡だった。
この奇跡を、チャンスを俺は必死に掴んだ
(もしかしたら家に行く事できよかさんに殺されたりして)
だがそれもいいと思えた
きよかさんの手で殺されて切り分けられて
アイツみたいに愛おしげに抱かれるなら
それは最高に幸せな事だと
陵は少しうっとりした気持ちでいた




