侵入者
夜の山道を、きよかの車は滑るように進む。
ヘッドライトが闇を切り裂く。
心臓の鼓動が、耳の奥で鳴っている。
(お願い……何もありませんように)
屋敷が見えた。
いつもと変わらない外観。
だが――
冷凍コンテナの前に、人影。
急ブレーキ。
ライトに照らされ、影が振り返る。
見知らぬ男。
作業着姿。
手には工具のようなもの。
「……誰ですか」
きよかの声は、驚くほど冷静だった。
「あ、いや……この辺で物音があるって通報があって」
「ここは私有地です」
ゆっくり車を降りる。
「誰の許可で入ったんですか?」
「門が開いてて……」
門は閉まっているはずだった。
きよかの目が細くなる。
「警察ですか?」
「いえ、管理会社から……」
曖昧な答え。
嘘。
きよかは、男の背後――コンテナを見る。
扉は閉まっている。
鍵も、かかったまま。
だが、ノブには触れた跡がある。
「誤解です。帰ります」
男が後ずさる。
きよかは一歩、近づく。
「な、なんだよ」
荒い声。泳ぐ目。
きよかは微笑んだ。
「こんな時間にお仕事なんて大変ですね」
男は答えない。
「寒いでしょう? お茶でもどうですか?」
一歩、また一歩。
男は逃げたいのに、きよかの落ち着きに戸惑っている。
「いや、俺は――」
言葉が途切れる。
きよかの視線が、男の手元へ落ちる。
工具。
削れた鍵穴。
通報はできない。
ここを知られるわけにはいかない。
「大丈夫ですよ」
柔らかな声。
「怖がらなくていいんです」
男が一瞬、目を逸らした。
次の瞬間。
夜に、鈍い衝撃音が沈む。
男はその場に崩れ落ちた。
車にあったハンマーを隠しも持っていたのだ。
ハンマーには男の血がついている
静寂。
風の音だけが、庭を抜ける。
きよかは深く息を吐いた。
男を見下ろす。
鼓動は速い。
だが思考は、驚くほど冷えている。
(どうする?)
放置すれば、目を覚ます。
再び来るかもしれない。
脅されるかもしれない。
警察は呼べない。
視線が、ゆっくりとコンテナへ向く。
守るため。
壊させないため。
きよかは目を閉じる。
「あなたが悪いんですよ」
静かに呟く
きよかは意識のない男の頭に
何度も何度も何度もハンマーを振り下ろした
血が飛び散り
ぐちゃぐちゃになったそれを引きずるようにして庭の奥の林に運ぶ
「まったく、本当に最悪だわ」
きよかはそこにある山小屋を開けるとそこに死体を投げ入れた
「はぁ....処理が面倒だから嫌だったのに」
きよかは病院に急な体調不良で明日休ませてくれるよう連絡を入れた。
そして陵にもメールを送る。
【心配しないで、家でゆっくりしてる。
今日は楽しかった!またね!】
明日を考えると憂鬱になりながら
きよかは実家に戻って眠りに落ちた




