エピローグ
〈sideフィーネ〉
「うまくいった」
「そうだねー」
私たちは無事組織に戻ることができて、治療も完了。死者無し。完璧な結末だった。
「りーだーはむちゃしすぎだけど」
「それくらいしないと、覇王に認められることはなかっただろうしね」
まさか、覇王と戦って認められるところまで行けるとは思わなかったなー。エンドロールには私が負けて未来君も殺される、そんな結末しか映ってなかったのに。
その代償に、私はぼろぼろになっちゃったのだけど。それを見た時のしろと玲央の反応がちょっと大げさすぎて、ね。
ちなみに玲央は未来君たちのところに駆けつけるときには他のメンバーのところに行って情報共有なりしてもらっていた。あの状況で行けるのはしろか玲央で、どっちが行くか殺し合いにまで発展しそうになっていたわけだけど。いや、怖かった、あの殺気はね。
玲央が力がある俺のほうが私を支えるのに向いているとか、しろは怪我が悪化したときにすぐに私のほうが対応できるだとか、ちょっと口論に発展してた。結果、しろの主張が勝利、私はしろに抱えられることになったのだ。二人とも私が死んでしまうのが最悪という考えだったらしい。いや、そりゃそうなんだけどね。
「しろはなんでここまでしてくれたの?」
しろという人間は、悪というわけではないけど根っからの善人というわけでもない。清濁を併せ飲むと言ったらいいだろうか。少なくとも、二人とも救いたいから覇王と敵対しようなんて思考をするタイプじゃない。
「りーだーのねがいをかなえるのがわたしたちだから」
「いや、一言も救いたいなんて言ってもないんだけど」
思ってはいた。だけど、少なくともそれを口に出すことはしなかった。諦めていたのだから。
「……りーだーはなんでいのりをえらんだの?」
「急な質問だね……」
少し考えて私は言葉を返す。
「彼女が一番うつ」
器として適していたから。そんな言葉を言おうとして。
「うつわのじょうけんはじががうすいこと、それならいくらでもつくれる、なのになんでいのりをえらんだ?」
「……」
「かのうせいをのこしたかったから、ちがう?」
「……そっか。そこまで考えてたんだ」
確かにそうだ。時系列的には緋色未来という人間を探し出して、次に骸祈という人間を選んだ。この二人の相性が最も緋色未来という少年が助かる可能性が高いと思ったから。
「だから、そのつづきをつなぐほうほうをかんがえた」
「しろ、ありがとね、何度言ったか分からないけど」
「ん、なんども聞いた」
「そこはどういたしましてとかでいいと思うけどなー」
ごまかすように私は笑う。
「どうなるにしても、これからなんどもこういうことがあるだろうから」
「……流石にこのレベルの状況は私もしんどいんだけどね」
まあ、どちらにせよ、これからもしろにも奏者のみんなにも迷惑をかけることになってしまいそうだ。
「じゃあ、これからもよろしくね、しろ」
「ん、まかせて。りーだーのあいぼうはわたしだから」
〈side未来〉
「生きてるー、不思議だよねー」
「そう、だな?」
組織に戻って数時間、骸祈は完全復活を果たしていた。
「いやー、ハズいねー、ばいばいなんて言ったのに生きてるんだから」
「……いや、死んでほしくはないんだが?」
「おうおう、祈ちゃんは不死身だぜー?」
いや、本当に何言ってんのこの人。カラカラと笑う祈を横目にそんなことを思う。
「ま、君も戻って、私も生きてる、それでいいんじゃない?サイコーでしょ?」
「それは否定しないが……」
「もー!照れちゃってー!しょうがないなー!」
「照れてねえよ!単純に実感が湧かないだけで」
「そっかー、君は無駄に病んでるからねー」
「病んでる、っていうのか?」
「んー、どうだろ?ヤンデレに近しい感性はしてるんじゃない?」
「ヤンデレ……」
そうだろうか?いや、そこまでではないと思うのだけど……。
「まあ、だいぶ思いつめるタイプだねーってこと!君も私も十分に頑張った、だからそれが報われた、そう思ってればいいんだよ」
「そう、か……」
「そうそう。また、自分が化け物だなんて思ったら私がふっとばしてやるんだから!」
「あんな経験はもうごめんだな」
祈と殺し合いをするなんて、もうやりたくない。いや、祈を傷つけるのがもうさすがに怖すぎる。
「というか、私たち許されるんだねー」
「祈は何かする前に俺が止めたし、俺はあの姿しか知られてねえしな、急に化け物がこの世界に現れたって認識なんだろ」
「あー、確かに私たちにつながる要素はないのか。未来のあの姿を知ってるのって私、しろ、リーダー、ベル、覇王くらいだろうしね。誰もむやみに口にするタイプじゃないかー」
「運がよかったっていうのか?こういうの」
「いいんだよ。運よく何のお咎めもなしに済んだんだから。リーダーにも感謝しなきゃねー。私も君も組織の指示を無視してこうなっちゃって許されてるんだから」
「確かに、それはそうだな」
あの日、しろに地図を渡されたからと言って祈の救出に無断で行ってしまったわけだし。聞けば祈も俺との闘いに行くために組織を抜けたらしい。そんな状況で解決したからと言って、すぐに組織に復帰させてくれるなんて思わなかったな。
「まあ、リーダーは全部予想してるんだろうけどねー」
「ああ、俺の件の色々な対策とか、予知でもしてるんじゃないかってほどだったしな」
「いいリーダーだよねー。まあ私には眩しすぎるんだけどね!」
「俺にとっては全員が眩しいな」
「ふふ、私にとっても自分以外の全人類が眩しいぜ」
「……でも、本当に祈に出会えてよかったって今なら思えるよ」
「そっかー、ならよかったぜ。こっちの世界に誘って」
「これからもよろしくな」
「うん!お任せあれってね!」
これからも、俺たちはこの世界に居続けるんだろう。これからどうなるのか分からないけど、きっと祈とならうまくいく。そんな気がする。彼女と居れるなら俺はヒーローでいられる。俺の恋が届くのかはちょっと怪しいかもしれないが、少なくとも俺たちは相棒でいられる、そんな確証があるのだ。




