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化け物  作者: 宵野 雨
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第62話 祈VS未来

〈side祈〉


 ふわー、ぴゅーって飛びながら地上を見下ろす。地上には多くの人がいて、そのすべてが超能力者関連なのだろう。


「こんな大人数集めちゃって、罪な男だねー彼も」


 そんな軽口をつぶやきながら彼らを追い越す。すると、リーダーやしろ、奏者のみんなが少し離れた場所にいるのが見えた。


「……へー、そういうことかー」


 さしづめ、私単体で行動させるために、リーダーは私を追放したのだろう。私がメンバーにいるとそっちを終わらせてから行くといって聞かなかっただろうから。


「世話焼きだなーもう」


 そんな私に期待されても困っちゃうんだけど。まあ、悪い気はしないよね、やっぱり。じゃあ、期待に応えてあげないとってことでしょ?

 だから、私はスピードを上げるのだった。



「おー、わんこが怒り狂ってるね」


 そうして、私はその場所にたどり着いた。彼はいろいろぶっ壊したみたいだけど、ぎりぎり人死には出てないらしい。奏者が前もって避難指示を出すように圧力をかけたのだろう。リーダーはどこまで見えてるんだか。いや、見えたものを覆すために動き始めたんだろうね。


「さあ、じゃあ始めよっか」


 そして、私は彼の前に降り立つ。


「いい子にするんだぜ、ヒーローさん」


 理性は飛んでいるようで、今にも私に向かって飛び掛からんとする。


「さあ、堕ちろ」


 だから、私は命じる。神下ろし。それで、ちょっと掴んじゃったんだよね。神様ってやつを。だから、神を堕とす。わが身に。ゆえに、力を与えろ。


「体を貸すんじゃない。無理やりに使役してやるさ」


 今回の私には明確な意思がある。だから、いつも通りの方法で戦おうとは思わない。


 ぐらりと、視界がゆがむ。意思がある、といっても強く持っているってわけじゃない。意志を持つということが私は苦手だった。


「これはどう?」


 駆け出す未来君の目の前に結界を展開する。以前の私ならここまでの強度の結界を作り出すことはできなかっただろう。


「あ、あぶなぁー」


 ガキンっと強い音がして、彼の体は結界にはじかれる。いくら強化されているといっても、彼の力は大きい。ピキリと結界にはひびが入っていて、あと少しでも衝撃が加えられると砕け散ってしまうことになるだろう。


 神様の力を使えるといってもあくまでも残滓だ。あの時の100パーセントの力を引き出せるというわけではない。本体はどうやらあのわんこが食べちゃったみたいだし。あれかな、神喰らいの獣フェンリルイメージなのかな?


 兎角、あの時と同じ力を振るえるわけじゃない。というか、使えてもそれに勝った彼に勝つことは難しいだろう。


「つ、次っと!」


 結界を再度幾重にも展開して、次の攻撃に備える。油断すれば一瞬で私の命を刈り取られることになるだろう。


「……これは、防げないか!」


 爪が振り上げられた途端、私は直感的に飛びのく。先ほど展開した幾重にも重なる結界はガリガリと音を立てて、砕け散っていく。


「はぇー、怖すぎるでしょ」


 砕け散った結界を眺める。あんなのまともに食らったら、挽肉になっちゃう、ひきにくー、ひきにくーってアナウンス流れるよ。

 ……突っ込み役いない状態でボケてもむなしいだけだね。うん。


「独白タイムだから待ってくれないかなー!もう!」


 こういう時間は待ってくれるのが常識でしょ!変身ヒロインの変身中に攻撃なんてする怪人はいないでしょ!今回は独り言だけど!独り言だけど!


「その爪そろそろ切ったほうがいいと思うよー」


 爪が振るわれるたびにざっくりと刃が飛んで行って、空間をえぐる。空間をえぐるって何?生き物は空間をえぐれないからね。しろくらいになると科学で再現しちゃうのかもしれないけど。いや、奇跡学ってやつ?


 ひらりひらりと飛んでくる爪の刃を躱す。躱しそこなえば、これも挽肉になってしまうこと請け合いですな。


「うん、大体わかった」


 結界を張り巡らせて、私に向けて飛んでくる刃を逸らす。いくら大きな力で発生させているといっても所詮風の刃、ちょっと結界を展開すれば方向はずれるよね。


「学習能力は残しておいたほうがよかったんじゃないかな?」


 そんな状況であってもなお、私に向けて爪を振り続ける獣。


「馬鹿の一つ覚えっていうんだっけ、こういうの」


 知らんけどね。前に君のそういう力任せなところは指摘したと思うんだけど、忘れちゃうなんてわたしゃ悲しいよ。


「……とはいってもなー、近づくとミンチだよねー」


 いくら、回避が容易だと言っても今距離をとることができているからであって、接近戦をするとなると、あれを真っ向から受け止めることが必要になる場面も絶対想定しないといけない。だけど、あれを受けとめる手段がない。


「適当に炎よ、飛んでけー」


 護符に炎を灯して投げつけてみるが、それは毛皮のバリアーにはじかれてしまう。理不尽だなー。そんな高性能な毛皮、人類みんな持ってたら平和なのにー。交通事故とか無くなってくれるんじゃないかなー。いや、死亡事故が無くなるだけで交通事故は起こるかー。


「関係ないこと考えてる場合じゃないか」


 と言っても、打つ手が正直思い浮かばない。遠距離攻撃は効かない。いや、そもそも近距離攻撃も効かないだろうけど。


「……まあ、近づきますかね!」


 私が猿夢にとらわれたみたいな姿にならないよう祈っててください。活け造りとかされたらちょっと気味が悪いかも、なんでわんこに殺されて活け造りになってんだって話だ。……まあ、死なないことを祈ってるぜ、未来の私よ。

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