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化け物  作者: 宵野 雨
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第61話 決着

 私に向かって振りかざされる攻撃は玲央が受け止め、しろの放った弾丸は覇王を掠め、その体に傷をつける。


「凄まじいな!我とここまで正面からやりあえるとは!」


「どう?すごいでしょ、私の仲間たちはさ」


「そうだな、我が見誤っていたのかもしれん」


 そんなことを言っているが、覇王の顔からは笑みが消えない。余裕が消えない。愉快だとでも言うように。


「だから、我も本気を見せてやらねば失礼に値するというところか!」


「……冗談でしょ」


 瞬間、覇王から放たれる覇気が一層濃いものへと変わる。そうして、覇王は蹴りで玲央と私を同時に吹き飛ばす。


「けほっ!がっ!」


 あまりの衝撃に吐き気がこみ上げる。巻き込まれただけの私と違って、直撃した玲央はひとたまりもないだろう。だというのに、全くダメージがなかったかのように駆けて覇王との距離を詰める。


「……きょりとっててよかった」


 次の標的に選ばれたしろだが、しろは私たちに攻撃が放たれた瞬間に放っていた瞬間移動の弾丸で危機を回避する。それだけの距離をとっていれば、玲央のフォローも間に合う。


「れおよりたいきゅうりょくはないからあんなのもらったらしぬ」


「うん。しろが無事でよかったよ」


「ん。でも、りーだー、よゆうはないよ?」


「早めにどうにかケリをつけるしかないか。ねえ、協力してほしいことがあるんだけど」


 そして、私はその提案を口にする。


「……ん。わかった。でもしなないで」


「大丈夫。そのくらいの危機はとっくにすでに潜ってきたから」


 しろは、なにか言いたげな目をしていた。だけど、それで私が止まることはないと分かっていたのだろう。だから、私の提案を承諾した。


 そして、私は瞬間移動の弾丸で覇王との距離を詰める。


「ここからは私も相手するよ!」


「お前が落ちたら勝ち目はないぞ?」


「分かってるさ、でもここで攻めないとただただ、蹂躙されて終わるからね」


 そして、私は覇王にむけて弾丸を放つ。しろがサポートで覇王がそれを回避できないよう、周囲に消滅の弾丸を放っている。


「ふむ。やることは同じではないか」


 結局、私の一撃で覇王の心臓を貫く。それが目的だ。だが、虚しくも私のはなった弾丸は覇王の手によってあっさりと弾かれる。


「まさか、こんなもので我を殺せると思っていたわけではあるまい?」


「そりゃ、うまくいくほど甘くないとは思ってたけどね」


 私は弾丸を地に向けて放ち、その場から離れる。


「何度も見れば対応できるな」


 すぐさま、私の移動先に追撃を仕掛ける覇王。その一撃を、玲央が受け止める。


「俺を忘れてもらっちゃ困るね?このナイトをさ」


 うわっ。ちょっとその発言は引くなぁ。


「だが、どうとでもなるぞ?」


 ぐっと、受け止められたこぶしに力を籠めると、玲央は一瞬にして数メートルの距離を飛ばされる。


「さあ、次はどうかわす?」


 ついで、覇王は私の方向へと地を蹴る。瞬間、ぐらりと覇王の体が揺れる。


「しろ、ナイスだよ!」


 しろの放った弾丸が地面をえぐり、地を踏みしめた足を滑らせる。


 すかさず、私は覇王の真正面へと移動し、弾丸を放つ。その弾丸は、覇王に命中するが、覇王は身をひねって心臓から一撃を外す。


「これで終わりか?」


「どうだろうね!」


 勢いのまま私は覇王との距離をさらに縮める。まだ、覇王の体勢は崩れたままだ。その距離、わずか数センチというところまで接近し、足元に向けて、先ほどしろから預かった試験管を叩きつける。本来、周囲を炎に包むだけの薬品。対連合軍戦ように用意した武器だ。


 瞬間、私を巻き込んで空間がえぐり取られる。しろに頼んで、薬品にあの弾丸と同じ効果をこめてもらった。確実に命中させるために、私は覇王との距離を詰めて、心臓を狙った弾丸をおとりに使って油断を誘った。


 視界はぐらりとゆがみ、全身が魂が悲鳴を上げる。存在ごと消されようとしているのだ、それも当然だろう。だけど、決着を見届けるまで、意識を失うわけにはいかない。気合で、意識だけはつなぎとめる。


 感覚はもはや残っていなかった。おそらく、今私は地に倒れこんでいるだろう。


「流石の我も死ぬかと思ったぞ?」


「ははっ!そっか、これでも届かないかぁ!」


 すでに、指の一本すら動かせそうにない。そもそも、視界には何も映っちゃいなかった。戦闘を継続することはとてもじゃないができそうにない。

 負け、かぁ。十分に時間稼ぎできてたらいいんだけど。いや、そこまで時間は経っていないだろうな。


「今の一撃は確かに我の息の根を止めるに足る攻撃だった」


「だったら死ねっての」


 悪態をつくくらいしか今の私にはできない。


「りーだー、大丈夫?」


 いつもの口調を忘れているし、しろも焦っているのだろう。現状に焦っている。いや、私が大けがを負ってしまったことだろうな。


「……はは!よいではないか!我に致命傷を入れたのだ!褒美に、あの少年はしばらく見逃してやろう!お前たちが、ここまでするほどの何かがあるのだろう!であれば、それが終わるまでは待とうではないか!」


「……それでいいの?」


「お前たちへの敬意だ。我が相手でなければお前たちの勝ちだっただろう」


「そっか、なら、いいや。しろ、あとはよろしくね」


「りーだー!りーだー!」


 しろが懸命に呼びかけるが、そんな声も遠のいていく。きっと、大丈夫。しろ、祈あとは頼むよ。真のハッピーエンドを目指して。まあ、私が死んじゃったらハッピーエンドなんて言えないだろうし、意地でも私をしろは救いそうな気はしているのだけど。それに、感覚的には私は死なない、そんな気がするのだ。

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