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化け物  作者: 宵野 雨
60/65

第60話 奏

「ふむ。未来予知への対策もしていたというのか」


 おそらく、あの少女からしろが未来に映らないということが知らされたのだろう。


「だが、それは諸刃の剣ではないか?」


 そう、私の力も封じる一手だ。しろのことを加味したうえで覇王がする攻撃はエンドロールにも映らない。


「大丈夫、私は仲間を信じてるから」


「足を引っ張るだけの仲間がか?」


「そう思考してしまうのが君の敗因になるだろうね」


 第一、超能力に優劣をつける、人間に優劣をつけるということが間違っているのだ。強い意思があれば、私たちの力は応えてくれる。そんな、案外都合のいい世界なのだ。だから、私たちを超えうる存在はいくらでもいる。


「りーだー、ゆだんはだめだよ?」


「うん。私にだってわかってるよ」


 だからといって、覇王が弱いというわけでは決してない。油断、というか少しのミスで簡単に死ぬ。それらを、すべて私は予知なしで、回避しなければならない。


「そうか、では我も一段ギアを上げよう」


 瞬間、覇王の姿は消え、私の目の前に現れる。瞬間移動したようにすら見えるが、その実、超高速で動いたというだけ。ここまでされていたら、しろが来るまで耐えられたとは思えない。


「こっちだって、やりようはあるんだよ?」


 瞬間、私の目の前にもう一人の男が現れる。


「遅いよ、玲央?」


「リーダーもこんな秘密を隠していたんだ、おあいこだろ?」


 灰崎玲央、私のストーカー、というのは言いすぎだとしても、仲間の一人だ。


「ただ、俺とフィーネは相性がいいようだな?これは……」


「はいはい、そんな展開にはならないからねー」


「ん。りーだーはゆずらない」


「え、しろもそっち側なの!?」


 なに?え、私を巡った争いが起こるの?私のために争わないでーってやつ?


「だいじょぶ、わたしとれおのあらそいがあったらせかいひとつじゃたりなくなる」


「それはそれで、では?」


 どうやら、争いにはならないらしい。だからと言って、安心はできないのだけど。私はそんな争いの渦中にいるわけですし。


「ま、まあ、今は戦闘に集中しようか?」


「そんなことより、俺にとってはフィーネのほうが」


「ん、りーだーのおおせのままに」


 真逆な反応の二人に私は苦笑することしかできなかった。


「我を無視するとは、いい度胸だな?」


「面白い女だろ?」


「……」


 無視だ無視。きりがない。


「りーだーがつっこまなかったらだれもつっこめないよ?」


「いやさ、私が突っ込んでも話がどこか飛んでっちゃうでしょ」


「……ん。たしかにめんどくさくなりそう」


 そう、それがあの玲央という男のめんどくさいところなのだ。しろは突っ込みに適性がないし、私は何か発言すれば、玲央の変な発言につながる。改めてめんどくさいな。私以外の突っ込み役が必要になる。


「にしても、我の拳を受け止める男がいるとはな!」


「愛の力だ!」


 君は黙っててくれないかな?口には出さないけど、そんなことを思う。しろもジトっとした目を玲央に向けている。気持ちはとっても分かるよ、うん。

 しろといろいろ検証して気づいたが、エンドロールには過去、現在、未来を見る力ともう一つあった。

 他者の超能力との連携。しろの『反転』との連携では、過去を現在に反転させる。現実の書き換え。

 そして、玲央の『絶対記憶』との連携では、過去、現在、未来の経験の蓄積。肉体の記憶も精神の記憶も、私よりも正確な記憶が可能となっている。肉体の記憶の維持なんて私にはできなかったし、玲央の超能力の拡張だろう。

 結果、何十、何百、何千万の戦闘経験が玲央には蓄積されている。


「ね、りーだー、りーだーだけでくりかえしてきたみらいもれおがけいけんしててじゃっかんきおくがのこってるかのうせいもある」


「……それで異常に好感度が高いの?」


「だいじょぶ、わたしもまけない」


「いや、そこは心配してないけど」


 確かに、私の繰り返しの記憶が玲央の中に記憶という形じゃなくても無意識に刷り込まれていたのなら、何度も救われた記憶を持っているだろう。であれば、私に対して異常ともいえる好意を抱くのも当然、当然かなぁ?

 で、しろはそこに張り合わなくていいからね?


「りーだーがはーれむつくりたいならきょうりょくするよ?」


「大丈夫です、間に合ってます」


 そんなのは、どこかのラノベ主人公がやってればいい。私がその座に就くのはなんだか、いや。そもそも、恋人複数人とかいらないです。そもそも、誰かとそういった関係になるのはイメージがわかない。

 まあ、要はハーレム願望はないのだ。まあ、いつか大人になったらそういうのは考えればいい。肉体年齢だと私はまだ幼女なのだから。


「れお、せっきんせんはまかせた」


 そうして、しろは銃を構えて放つ。


「わたしは、うごきをせいげんする」


 しろが放った弾丸が着弾すると同時に、命中した空間をえぐり取る。

 しろと私の力の現実への過去の押し付けを、小範囲に絞ることで現実の否定とする。どんなものであっても、存在ごと消し去る弾丸。


「ん。せいこう」


「俺にはそれ当てるなよ!?」


「ふむ、我も無傷とはいかないだろうな」


 いや、あれ当たったら人間なら即死だよ?つくづく、覇王という存在は規格外だと思い知る。だけど、彼女らの力は覇王にも通用する。


「どう?降伏してくれてもいいんだよ?」


「我が、か?」


 ばかばかしいとでもいうように笑う覇王。まあ、そう都合よくはいかないよね。

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