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化け物  作者: 宵野 雨
56/65

第56話 敵対

〈side祈〉


「んぅー、みゃ!」


 私は目を覚ました。


 えーっと、私はどうなったんだっけ。確か、太陽君に負けて……。うーん、強かったね彼。


 で、えーと、ああ、なんかよくわからない場所に囚われたんだっけ。辺りを見渡してみると、見覚えのある景色だった。


「あ、目が覚めた?」


「おーリーダーだー!」


「そうそう、みんな大好き、奏者がリーダー、フィーネちゃんだよー」


「え、なにそれ、気持ち悪いよ?」


「……似合ってないとかだけでよかったんじゃないかな?」


「とかは一回で使っちゃダメなんだよー」


「うん、そうだね、気を付けるよ」


 雑な相槌を打ってリーダーは私にじっと視線を向ける。


「で、どこまで覚えてるの?」


「……んー、とりあえず、太陽君に負けてどこかに閉じ込められちゃったってことくらい?」


「なるほどね。じゃあ、これを見てほしい」


 リーダーはタブレットを取り出して、私一つの動画を再生する。


「……まじかー」


「ずいぶん軽い反応だね」


「これでもショックは受けてるんだよー?」


 そこには、未来君があのわんこの姿になって暴れ狂っている映像があった。……そっかー、全部思い出したよー。私が乗っ取られて、それを止めるために自我を消し飛ばすくらいに無理しちゃったってことか。


「……ああ、イライラするなー、もう」


「イライラ?」


 ちょっとね、私だって思うところがあるわけですよ。


「君は一体自分のことをなんだと思っているんだか」


 こんな私を救うためにこんな姿になって、なんて思う気持ちはちょっとだけあった。でも、それよりも大きかったのは……。


「何が化け物だっての」


「ふふっ」


「何かおかしいこと言ったかなー?」


 じとーっとした目をリーダーに向けてみるが、きょとんとした顔を浮かべるだけで何も答えない。答える気はないってことですか、そうですか。


「……で、骸祈。君はどうしたい?」


「どうしたいってのは?」


「……まあ、聞くまでもないか。未来君のところに行くんでしょ?」


「そう言ったら?」


「そうだね、この組織から出て行ってもらおうかな?」


 さらりと、そんな言葉を言い放つリーダー。


「そんな言葉で止められると思うの?」


 私はそんな組織とかそういうしがらみは気にするタイプじゃない。その時の直感、感覚に任せて行動するのだ。組織に居られなくなる?そんなことのために今やりたいことをやめる理由にはならないね。


「うん。そっか、じゃあ、今君は奏者から追放とする」


「追放物はざまぁのフラグだぜ?」


 リーダーの言葉に私は軽口を返して、体を起こす。どういうわけか、私の荷物はすでにまとめられていて、治ったらすぐにこの場所から出ていけるような準備が整えられていた。


「あ、そうだ。これは餞別だよ?」


 そう言って、リーダーは私に向けて、数枚の紙を手渡す。


「へー、気が利くじゃん?」


「例の化け物が出現した日時と場所がそこにまとめられてるから」


「めちゃくちゃ矛盾した行動してるって理解してる?」


「だって君はそう言うの好きでしょ」


「うん、だーいすき!」


 私は、そこに置いてある荷物を手に取る。そうして、私は再度首をリーダに向けて。


「ここは、リーダーの手の中で踊ってあげるよ」


「うん。任せて」


 そうして、私はその空間を後にするのだ。一つの苦情を伝えるためだけに。



〈sideしろ〉


「さて、今から私はとんでもないことを言います」


 私たち、組織のメンバー全員の前にひとりたたずむ少女は、その小さな体からは考えられないような絶大な存在感を放っていた。


「だから、ついていけないって人は去ってもいい。去るとしても記憶処理とかそういうことをするつもりもない」


 私たちを救ってきたその少女は私たちを見渡して、祈るように言葉を紡ぎ続ける。


 いくつもの不安が彼女の頭の中には蔓延り、うごめいているのだろう。彼女の相棒として私は思う。でも、私たち奏者のメンバーはみんな彼女に救われてきたんだ。何度も何度も、だから私たちはこの少女がどんな提案を口にしたって、全力で叶えてあげようと思えるのだ。


「だから、今から言うことは命令じゃない。お願い」


 ゆえに、誰一人として舞台に立つ少女に不信感の籠った目線を向けることはしない。真剣に、彼女の言葉を待つだけだ。狂気的な信仰心とでも言えばいいだろうか、そういったものが私たちの中には宿っている。それを全く利用しようともしてこなかった少女が今、それを使おうとしている。フィーネという少女は私たちを信用できなかった。過去を知った私からすれば当然だと思うのだけど、そんな少女が今、私たちを信用して言葉を紡いでいるのだ。


 そんな状況で誰が拒否できようか。今まで一方的に助けてくれていた少女が今、助けを求めている。前もって私に話してくれた時はとてつもない不安を感じているようだった。そんな必要はないって内心思いつつ、励ましたのだ。そうして、今私たちの前に立っている。


 そんな彼女が口にする。恐ろしい一言。


「私は覇王と敵対する。ついてきたい人だけついてきて」

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