第50話 VS太陽
そうして、覇王とともに祈を捜索して……。
「……ん?突然気配が現れたな」
「そうなんすか?」
この間に俺は覇王の舎弟的立場になっていた。俺と覇王の間には力の差が広すぎた、だからちょっとタメ口で話す勇気は出なかったのだ。覇王当人は特段話し方を気にするような人間ではないのだろうが、俺のほうが話せなかった。
「一足遅かったね、未來君。もう一人は僕の知らない人みたいだけど」
俺たちの目の前に突然太陽が現れた。
「祈はどこだ!」
友人だった。だけど、俺を裏切ったという事実は変わらない。
「ほう?ただならぬ因縁があるというのか?」
俺の激情にとらわれた様子を見てか、覇王がそのようなことをつぶやく。その言葉を肯定する余裕はない。状況を100%理解できているわけじゃないが、あの瞬間祈の近くにいたのは太陽だったし、裏切者だったのだ。
「言ったでしょ、一足遅かったって」
「だったら、祈はどこに連れて行ったんだ」
「さあね、僕はそこまで知らないんだ」
「そうか、結局、お前は俺の敵ってことでいいんだな?」
「……そうだね。それでいいんだと思うよ」
どこか他人事のように太陽はそう返答する。
「だったら、遠慮なくいかせてもらうぞ」
若干、八つ当たり気味な感情をぶつけるように、俺は走り出す。
「おーけー、じゃあ始めようか」
俺は太陽の懐まで接近して俺は拳を……。
「残念ながら、見えてるよ」
その拳は振り出す直前に結界が展開されて阻まれる。
「っ!硬すぎだろ」
無理やり、繰り出そうとするが砕くこともできない。
「やっぱり、そこまででもないね。思った通りだ」
太陽は、あの時俺の戦闘も見ていたんだっけな。人間状態の強さでは俺は祈には及ばない。だから、祈を倒した太陽に俺は勝てないだろう。……悔しいよな。相棒のはずだったのに、俺はまた祈の危機に間に合わなかった。力の差もある。
「だったら……」
ヒーローとかもうどうでもいい。祈は化け物の俺をも受け入れてくれたんだ。だったら、今更躊躇する理由がない。
だから、俺は姿を変える。今は夜じゃないが、超能力がイメージに応えるというなら、可能だろう。だから、化け物の姿へと変わる。
「……え、なにそれ」
突然姿が変わった俺に動揺の声を発する太陽。こっちの姿は見せたことはない、というか知っているのは祈、フィーネ、しろ、アリス……、この四人くらいだろう。
「こっからが本番だ」
地を蹴り、俺は太陽との距離を詰める。
「さっきより早いね!」
瞬間、俺と太陽の間に壁が生み出される。
「……さっきまでの俺とは違うぞ!」
それを俺は突進で砕く。俺の拳前に展開された結界よりも強度は上だろう。だが、その程度だ。この姿になってしまえば簡単に破壊できる。
「……そんな簡単に突破されるのは想定外だったんだけど」
「これくらいじゃ止まらねえぜ?」
そこからは一方的な展開、が待っていると思っていたのだが。
「ストーップ!そこまで二人とも終了!」
「は?」
突然、そんな声が聞こえてくる。
その声のするほうへ視線を向けるとそこにはフィーネとしろの姿があった。
「……ほう?お前たちがここに入ってこれるとは思っていなかったぞ?」
覇王がそんな声を漏らす。確かにこの空間は現実とは違う空間となっていた。覇王は、まあ、無理やり力でこじ開けることができるのだろうが、フィーネやしろはそんな狂った力を持っているというほどではない。いや、覇王とは別の意味で強力な力なのだろうが。
「わたしがはつめいした」
うん。超能力とは関係のないところで解決したらしい。
「ふむ。なかなかやるではないか」
「相変わらず偉そうな態度だねー」
フィーネはにこにこと笑みを浮かべて言った。覇王が偉そうというのは分かるが、こんな対応を返せるのもフィーネくらいのものだろう。
「で、終了って……」
太陽は祈を誘拐した犯人であるし、ここで戦闘を止める理由が全く思い浮かばない。
「ここで太陽くんを殺してもらっちゃ困るからね」
「どういうことだよ!」
意味が分からない。なんで、太陽の味方をするんだ!祈はフィーネ、しろにとっても仲間だったはずじゃないのか。
「……なにかすれちがってるきがする」
しろはそんな俺たちの姿を見て首をかしげる。が、とりあえずその疑問は置いておいたようで、懐から小瓶を取り出し、地面に向けて投げつける。瞬間、辺りが光に包まれ……。
「……ここは、戻った?」
「ん。くうかんはかいやく、みたいな?」
「ってか今はそんな話をしてたんじゃねえ!なんで戦闘を止めたんだ!」
「ちょっと未来君がそこまで怒る理由が分からないんだけど、説明するね……。いや、私じゃないほうがいいだろうね」
フィーネの後ろから、若干暗みがかった赤色の髪の少女が姿を現す。小柄なその少女はボロボロな衣服を身にまとっており、若干薄汚れた姿をしていた。出会った当初のアリスほどではない。どこかに軟禁されていた捕虜というような印象だろうか。
「……あ、茜?」
その少女を視界に収めた太陽の瞳から涙が流れる。
「うん、ただいま、太陽」
にこりと笑みを浮かべたその少女に太陽は勢いよく抱き着く。
「わわっ!……もう、ごめんね?」
その様子に少し驚きつつも穏やかに笑みを浮かべる少女。感動的な場面なのだろう。それが伝わってきてしまう分、俺は今の感情をどう扱えばいいのか分からない。
「……こうなったら、未来にはちゃんと説明しないといけないね」
少しの間抱き合ったあと、太陽は俺に向き直る。そうして、彼は話し始めるのだった。ここに至るまでの経緯を。




