第46話 突破口
「装甲のある部分は全く通らないか」
軽く隙を見てロボットに攻撃を繰り出してはみるが、ロボットの装甲には全くダメージを与えられた様子はない。一応、組織で確認した感じだと、鋼鉄くらいなら貫けるはずなんだけどな……。全くひび割れてない様子を見るに、既存の金属というわけではなさそうだし、製作者に何らかの超能力があると考えてもよさそうだな。戻れたら、フィーネに報告はしておこう。
ひとまず、ここをどうするかだ。ベルの攻撃でも、ただただ命中させるだけだとダメージにはならないだろう。光の矢はどうやら何の変哲もない矢と同等の効果みたいだし。
「ベル、火とか水は使えないのか?」
「四大元素くらいならできるけど、それ以上複雑なのは……」
「単純なものでいいからいろいろやってみてくれ!今の攻撃じゃなんのダメージも与えられない」
四大元素って?とは思ったが、今はそんなこと聞いてる場合じゃない。とりあえず、いろいろ試して有効打を見つけることが最優先だ。
「やってはみる」
「自信は持っていいって」
「急に上から目線」
言うほど、上から目線か?なんて思うが、とりあえず今は無視。俺は俺で試せることをいろいろ試していく。といっても、装甲部以外を狙ってみるくらいしかないのだが。あとは、武器を使ってみるくらいだろうか。
腕の関節めがけてこぶしを叩きつけてみる。しかし、あまりダメージを負っているようには見えない。
「関節でもこの固さかよ!」
腕へのジンジンとする痛みを堪えつつそう呟く。関節部は見えづらくて傷ついているのかすら分からないが多少の傷くらいは入っていてほしい。
「ファイア!」
そんな声が聞こえたと同時に、俺はその場から飛びのく。そうして、ベルの放った魔法によりそのロボットは炎に包まれる。灼熱が俺のほうにまで押し寄せて、とんでもないその火力に驚く。しかし、
「無駄だ!その程度で傷がつくはずがないだろう」
その男の言う通り、ロボットには一切の異常は見られない。おそらく1000度程度はあったであろうその炎を受けて一切異常をきたさないってどうなってんだ!表面に異常がなくても内部回路が焼き切れていてもおかしくないだろうに……。
「……これ水ぶっかけても何も起こらない気がする」
「いや、熱と急冷を繰り返せば多少ダメージがあるかもしれない」
正直、金属の内部組織の変化なんて起こらないような気もするが、試してそれが有効ならばそれに越したことはない。
「まあ、試せることは全部やるべき、か」
その通りで、正直俺たちが有効打を持っているのかすら分からないところだが、諦めるというわけにもいかない。
「あー、めんどくさいことはしない主義なんだけど、頑張るかー」
「お前が持ってきた面倒ごとなんだがな」
ベルのそんなつぶやきに苦笑しつつ、俺はそのロボットの攻撃をかわし続ける。
「お次は雷っと、サンダー」
そんな声とともに、ロボットに落雷が直撃する。
「んー、やっぱり威力がないなー」
「範囲攻撃はやめろ!?俺近くで戦ってるんだが」
威力がないとかそれ以前に、接近戦してる味方のいるところに雷を落とすな!
「大丈夫でしょ、当たらない当たらない」
「当たるわ!今もびりびりしてるからな!」
「いやー、私なら黒焦げだから大丈夫だって」
「いや、ほんとになんでそんな威力の攻撃に俺を巻き込んだの?」
巻き込んで俺を殺したいのか?そんな疑いを持ってしまうのも当然だろう。自分が死ぬくらいの威力を俺に打つなよ。
「祈が言ってたからね、未来は殺しても死なないって」
「死ぬからね?全然」
あの少女は何を言ってんだ?多分、なにも考えずノリで言ったんだろうけど!だろうけど!
「まあ、私も多少の回復魔法は使えるし、前の戦い見てた感じ、そこまで重症にならないだろうって判断した」
それなら、まあ、いいのか?よくないか。いいわけがないな。
「まだ生きてるかぁ。いや、そもそもロボットは生きてないか」
「……本当に痺れ損じゃねえか」
「まさか、未来にも傷一つないとはね、驚いた」
「次、同じようなこと言うなら何らかの方法で伝えろよ?」
「禁止とかじゃないんだ」
「それであれを壊せるんなら禁止するんだがな」
そんなこと言ってちゃ、ここで二人とも負けることになっちゃうだろ。
「正直、ここを切り抜けるのは私を差し出すのがベストだと思うけど」
「それはそうかもしれないがな。俺がそうはしたくない」
「うわー、自己犠牲精神豊富じゃん。ここまでいくとキモイね」
「俺は傷つかないわけじゃないからな?」
キモイなんて言われて傷つかないほど鋼鉄のハートは持ち合わせちゃいないぞ?
「私にとってはとっても助かるから、素直にありがとうって言っとく」
「そこはシンプルにありがとうのがヒロインっぽいぞ?」
「私は少なくとも未来のヒロインじゃないから」
絶妙に含みを持たせた言い方でそんなことを口にするベル。
「あ、残念ながら私って心には敏感なもんで」
「……だったらもう少し空気を読め」
照れ隠しの言葉を吐きだすわけだが……。
「私ほど読める人はいないからね」
「……まあ、とりあえず、今ので確信したことがある」
「急に何?」
「いや、あのロボットって自立はしてないんじゃないかって思ってな」
「……あー、空気読んでくれたのかもよ?」
「だったら、あの目を押さえてる男は何だと思う?」
「私の父だね」
目を押さえうずくまる男を視界の端に捉えそんな言葉を話す。
「じゃ、こうしますか。ハルシネーションっと」
「単純に英語なんだな」
「詠唱とかめんどくさくない?イメージつけるだけなら単語が楽でしょ?」
「まあ、それはそうっちゃそうなんだが」
時折、詠唱を唱える少女を脳裏に思い浮かべながら、俺は一応ロボットの動き出しの警戒を続けるのだった。




