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化け物  作者: 宵野 雨
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第45話 ベルの父親

「……何もないな」


 近くを歩き回っては見たが、何かがあるわけでもなく、全く変わらない景色が続くだけだった。


「んー、確かに」


 ベルも特段変化のない景色に辟易とした様子で相槌を返す。


「もっと移動すべき?……いや、流石にリスクが高いかな」


「だったら、ある程度待ってから移動するか?」


「あー、確かにそれが現状ベストだと思う」


「ベストかどうかはわからないが、俺が考えられるのはこれが限界だな」


 しろやフィーネならもっといい選択が思い浮かぶかもしれないが、俺にとってはこれくらいが限界だった。祈は、うん。何も考えずに動き回るだろうなって、そんな気がする。


 そんなことを考えているうちにこつこつと足音が周囲に響き渡る。


「……その必要はなさそう」


「だな」


 誰かが近づいてきている。祈、ではないだろう。祈であったら足音はもっと軽いし、そもそも歩いてこんな場所を移動するとは思えない。


 案の定というべきか、そこに現れたのは一人の見知らぬ男だった。だが、ベルにとっては違うようで鋭い目でその男をにらみつける。


「……大きくなったな、ベル」


「えぇ……数か月しか離れてないんだけど」


「親にとっては数か月だけでも大きく変わるもんなのさ」


「そう、で、何の用?」


「分かっていることだろう」


「……家族に迎え入れてくれるとか?」


「当然だろう?すでに家族なんだから」


「あ、返答間違えたな」


 ベルは苦い表情を浮かべてそう呟く。


「なら、普通の女の子として育てて欲しいなぁ?」


「何を言ってるんだ?お前の育て方は俺が決める、それが親というものだろう」


「おぉ、恐ろしいくらいの亭主関白」


「さあ、ベル帰るぞ」


「あいにく、私は帰りたくはないからね、抵抗するよ」


 そう言って、ベルは手を横に掲げる。


「あんまり、攻撃は得意じゃないんだけど」


 周囲にいくつもの魔法陣が現れて、そこから光の矢が現れる。


「反抗期には少々遅いんじゃないか?」


「反抗というより絶縁でも叩きつけてやりたい気分だけど」


 そうして、ベルはその光の矢を一斉に放つ。それは、男に向かって突き進み、直撃し砂埃を巻き上げる。


「ほら、未来、さっさとやる」


「待って、なんで俺が使われる側になってるんだ?」


 ベルに叱責され、俺はベルとその男の間に割り込む。というか、さっきの光の矢だけで十分にダメージを与えられてそうなものだが。ベル曰く、父親は超能力者というわけではないらしい。だったら、あんな攻撃を受けたら死んでしまっていてもおかしくはないと思うのだが。


「……流石、神の子だ」


 土埃の中からそんな声が聞こえたと同時に悪寒が走る。


「っー、一般人じゃねえのかよ!」


 強い衝撃が体を襲い、俺はその一撃を受け止める。そうして、顔を上げると視線の先にいたのは男ではなく一体のロボットだった。


「本体は一般人だけど、これどこで借りたの?」


「我々の教団に声をかけてくれた方がいてな」


「うわー、胡散臭」


 そもそも、教団という名称な時点で胡散臭いとは思うのだが。


「しかも、ただのロボットじゃないだろ、これ!」


「機械は腕とか簡単に持ってくから」


「だったら、この異音を立てながら光を放ってるのはなんだよ!」


 俺は、その腕になにか力がたまってるようなエフェクトが発生しているロボットを指さしながら叫ぶ。さも、ビームを放つためにチャージしてるんですけど?対人用のロボットにそこまでの機能いりますかね?


「気合で避ける、とか?」


「無茶ぶりすぎないか?」


 俺は、地を蹴ってそのロボットの腕から放たれるであろう光線の射線から外れる。瞬間、強い光がはなたれて。


「当たったら即死しそうだな、これ」


 その光線は直径一メートル程度で地面をえぐり取っていた。


「こっちに来ないよう頑張って……」


「そりゃ頑張るけども」


 いや、このロボット怖すぎないかな。絶対ただのロボットじゃないって。


「あれに当たったら私消し炭になるんだけど、連れ帰りたいんだよね?」


 たしかに、あんな物騒なロボットで捕獲のために加減するなんてことができるんだろうか、なんて思うが……。


「まあ、どちらにせよ、あれは要警戒だな」


 殺傷能力があるにしろないにしろ、あれに当たってただで済む想像が全くできなかった。前回のように一度気絶してしまった後、助けに行けるとは限らないからな。


「こっちには飛ばさないようによろしく」


「援護は頼むぞ?」


 ここでの戦いは祈の役割をベルにやってもらうって感じだろう。祈ほどの攻撃能力はないらしいが、遠距離攻撃というだけで十分すぎる。


「とりあえず、俺の攻撃が通るかどうかってとこだよな」


 ある程度通るなら、さっさと壊してしまうのがベストなんだが、物理が全く聞かないとかだとベルの魔法でどうにかこうにか削っていくしかなくなる。その場合だと、俺がこいつを正面から押さえておく必要があるわけで、相当に骨が折れる。

 油断したら、全身が消し飛んでもおかしくない相手だしな。精神的にも肉体的にも苦しいものがある。流石に億劫だな、なんて考えながら、俺はそのロボットと対峙するのだった。

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