第43話 疑念
「じゃあ、お願いしたい」
どこからともなく現れたフィーネとしろに説得されベルが奏者の一員となることが決定した。
「ん。まあ、あのしょるいわたしたじてんできまってたけど」
「いや、怖いんだけど」
「まあまあ、もし契約しても私がクーリングオフ受け付けるからさ」
「そもそも契約に気づかせる気がないんだけど」
「そこはファイトってことで」
「雑過ぎない?リーダーなのに」
口が過ぎるなぁ、なんてことを思いながら俺は彼らを眺める。
「……」
「祈?」
俺と同じく傍観者になってしまっている祈に声をかける。やけに考え込んでいる様子で、黙ってじっとベルのほうを見つめていた。
「ん?いやー、特に何もないよー」
声をかけた途端、いつも通りのカラッとした表情になってそう言葉を返す。
「思うことがあれば言ってもいいだろ、本性はばれてるんだし」
「本性がこうなんですー!」
舌を出して、べーっ!と効果音が付くような表情でそう返答する祈。惚れてしまった俺からすればかわいらしいことこの上ない。
そうして、再度表情を真剣?なものに戻して、
「まあ、単純に、なんで襲われたんだろうなって」
そんな疑問を投げかける。
「……追いかけてきたとかじゃねえのか?」
ベルは実家から飛び出して、日本に逃げ込んだのだろうし、それならただただ、後を追って襲われたと考えるのが無難な気がするのだが。
「いや、確かに私には通用しなかったけど、彼女の魔法は相当なものだったんだよ?並みの超能力者じゃ気づけない。どうやって追跡できたんだろうってね」
「……俺は超能力にそこまで詳しくないから分からないが、何らかの発信機が隠されていたとかが考えられるか?」
「んー、可能性はゼロじゃないね」
発信機的なものを取り付けられていた、となると、あの帽子とかか?なんてことを考える。
「それはない」
「しろ?」
その会話にしろが割り込んできて、バッサリとその可能性を否定する。
「ん。かりにもここはひみつそしき、はっしんきがあればわかるしくみはつくってる」
「え、怖、初めて聞いたんだけど」
「……いのりはしってるはず」
「ありゃー、ぽやぽや期の私がやっちゃいましたかぁ」
「ん。ふわふわしたいのりはなにもはなしをきいてなかった」
「んー、ごめんね」
「いい、むしろ、きいてるふりでもしてくれるほうがしょうすうは」
「……それはそれで大丈夫なのか?」
唐突なその発言に思わず俺は突っ込みを入れる。いや、全く話を聞かない連中が多いってことだろ。組織として終わってるような気がしてしまうのだが……。
「……りーだーのはなしはきくから」
どこか遠い目をしながらしろはボソッと呟く。相当苦労してきたんだな、この少女も。同年代の遠い目をした幼女を横目にそんなことを思う。おいたわしや。
「しろは成果をすぐ出して、認められるようになったけどね。良くも悪くもプライドが高いんだよここの連中」
「おー、りーだー、おはなししゅうりょう?」
「うん。とりあえず、終了だね。ベルちゃんがここに入れるよう設定しといて」
「ん。やっとく」
フィーネがベルとの話を終えて、こちらにやってくる。
「……発信機でもないとなると」
祈はまだ考え続けていたようでそんな彼女のつぶやきが聞こえるのだった。
「まあ、ずっと後をつけてきたんでしょ、ストーカー的な感じじゃない?」
「なんで、君は他人事なのかなぁ!?」
ベルがそんな風に祈に考えを述べるとそれに突っ込みを入れる。
「自覚ないから」
「自覚あれよ、君襲われたんだよ?」
「ま、考えたって分からないことは考えない主義だから」
なんだろ、ベルって想像していたより自由人なのかもしれない。若干振り回されてる祈の姿を見ながらそんなことを思った。
「ずっと後をつけてたなら、タイミングがよく分からないんだよね。私、未来、太陽くん、三人の超能力者がいる瞬間をわざわざ狙う意味がない」
「……なるほど、そう考えてるんだ」
若干意味深な笑みを浮かべてベルはそう呟く。
「……なにが答えにしろ、君が一番の被害者なんだけどね」
何やら笑みを浮かべるベルに祈は嘆息して、顔を上げる。
「ま、考えたって答えは出ないかー。こんな考えこむのは私のキャラじゃないしね」
「キャラってなにさ?」
「君はそういういらないことを言うキャラなんだよ」
そう言って、祈は俺のほうに視線を移す。
「君は私の相棒ってキャラだしね」
「なぜこっちに振る?」
「おー、クールキャラを今更気取るの?似合わねーぜ?」
「気取ってねえよ」
それがお前の好感度につながるなら……と、これはさすがに気持ち悪い発言だな。
「じゃ、パトロール行きますかー」
「私も?」
「うん!当然でしょーに」
「入社初日から働かせるなー!」
「おうおう、新人が生意気だなぁ?」
「そっちがキャラぶれてない?」
「気にしなーい、気にしなーい」
そう言って、カラカラと笑う祈。やっぱり、彼女の笑いのツボはよくわからないなー、なんてことを思いながら俺はまたも彼女に引っ張られて外に連れ出される。なんだかんだ、俺は祈に引っ張り出され続けてるよな。そんなことを内心つぶやくのだった。




