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化け物  作者: 宵野 雨
42/65

第42話 ベルの過去

〈sideベル〉


「お前は神だ」


 そう言われ続けて私は育った。いわゆる、宗教系の家だったのだろう。やけに豪華な照明やら、高そうなツボやら何がいいのかよくわからないものが溢れていた家だった。


 私はもともと孤児だった。そうして、偶然にもその家の人間に目をつけられてしまった。運悪く私には超能力が備わってしまっていた。少女だった私は超能力を隠すなんてことするはずもなく、この家族は狂った。いや、もともと狂っていたのだけど。


 最初は父やその周りの人間の言うことを疑うことなんてしなかった。だけど、こっちで言う小学生くらいの年齢になった時、疑い始めた。そのころには、魔法的な力を使うことができていたから私が魔女なのだと疑うようなことはなかったのだけど、神だなんてそんなたいそうな存在じゃないのだと理解するに至った。人生なんて、自分の無力さを痛感させるには十分だった。一度疑い始めれば簡単に思い込みは崩れ落ちた。


 きっと自分を神に思えなかったのは私だけじゃなくて父も同じだった。あんなのと一緒とは全く不本意なのだけど。私と違ったのは、神を求めたこと。ゆえに私を神の偶像として祀った。とはいえ、私の力なんて所詮人ひとり分に過ぎない。ゆえに、父の期待に応えられるようなポテンシャルは持っちゃいなかった。


「ついに見つけたぞ」


 そんな状況の中、父が外から帰って来るや否やそんなことを私に向かって言い放った。曰く、私の力を強める方法を発見したらしい。いやまあ、期待しなかったと言えば嘘になるがデメリットが大きすぎた。自我を失う可能性ありとか、肉体が人間じゃなくなるとか、いやそんなの求めてないって感じだったわけで。求めてないというか、嫌だと思うのが当然で。


 そう言うわけで逃げ出しました。その道中で、私の家の宗教には私のような複数の超能力者がいたことが発覚した。要するに、その超能力者たちに襲われた。まあ、返り討ちに、いや逃げかえりました。

 うまく人間を洗脳しながら日本にまで逃げ込んで、また襲われる結果になった。


「いやー、怖かったねー」


「なんでそんな余裕そうなんだ?」


 確か、緋色未来君だったかな?その子がそんな突込みを入れてくる。


「余裕なわけないでしょ。ただ、それ以上にめんどくさいって感情が強いだけで」


「それを余裕っていうんだけどねー」


「焦ってないわけじゃない」


 さすがに、襲われたときはビビったものです。うん、こういかれた感じの思考してないとテンパってテンパって仕方ないわけです。


「まあ、そこはいいか。とりあえず、これからどうする予定なの?」


「逃げるしかなくない?」


 これ以上この場所に居てもどんな目に合うか分からないし、彼らにもかなり迷惑が掛かってしまうだろう。


「私たちみたいなのはそうそういないよ?というか、超能力者が4人同じ学校にいるってことがレアケースすぎるし」


「まあ、どうとでもなるでしょ」


 私、緋色さん、骸さん、白沢さん、一つの学校にそれだけの超能力者がそろってるなんて異常ともいえるだろう。なんなら、目の前の二人は超能力者のなかでは上澄みだろう。白沢さんは戦っている様子は見たことがなかったから分からないのだけど。


「リーダーに確認してみないと分からないが、この組織に入って守ってもらうってのはできないのか?」


「組織ってのは?」


 その言葉を聞いて少し考える。なぜか突然連行されて理解が追い付いていなかったが、ここが日本の超能力者の組織ということだろう。そして、その組織に入るねー。


「全然かまわないよ」


 そんな話を始めた途端、どこからともなく幼い少女が現れてそんな言葉を放つ。


「どうも、ベルさん、私がこの組織のリーダーをしてるフィーネです」


「リーダーだ!突げ」


「すてい」


 骸さんがフィーネと名乗った少女に向かって駆け出そうとした途端、もう一人の幼い少女が現れ首根っこをつかんで止める。こっちの子は先ほど見た記憶がある。たしか、私の日本での戸籍を用意する方法を教えてくれた少女だ。大量の書類に忙殺されそうになった記憶があるのだけど。


「えー、しろは忙しいんじゃなかったの?」


「いそがしいけど、りーだーにむりやり」


 そう言って、両手で目を覆いこするようなしぐさをする。泣いている、ふりをしているのだろう。


「ねえ!そこでしくしくと泣かれると別の意味に見えるからやめて!」


 フィーネと名乗っていた少女がそんな突っ込みを入れている。


「じょうだん、でもりーだーにつれだされたのはほんと」


「まあ、しろもこの組織の重鎮みたいなものだから」


 こんな小さい少女たちが、組織のリーダーをやっている、と。


「こんな容姿だけど、割と私たちはすごいからね」


「読心術……、いやそんな感じはなかったし」


「そう思われるのは慣れてるからねー、ああ、でもしろは初めてだね」


「んー、わたしもどうとも、なんならべるともおなじくらいのとしだし」


「だとしたらその口調は何?」


「かわいいでしょ?」


「いや、同い年なら痛々しいけど」


「……普通にも喋れるからだいじょぶ」


「だとしたら猶更なんだけど」


 変人に囲まれた。現状を一言で表現するならこうだろう。日本に来るのは失敗だったかなぁ、なんてそんなことを思うのだった。

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