第38話 祈とベル
〈side祈〉
「……うん。行ったみたいだね」
二人が教室を出ていくのを確認した後で私は再度ベルと名乗る少女に視線を戻す。
「君は敵対するつもりはないってことでいいんだよね?」
「……ないよ。確かに超能力を使ってまで戸籍を用意しているのは異常に思うだろうけど。少なくとも私にはそんなつもりはない」
「ならいいけど、もし君が敵対しても私は容赦しないよ」
「……敵対はしない。少なくとも私は」
ああ、なるほど。
「分かった。ならすべてを話してほしいけど」
「信頼できないから、ノー」
多分、この少女は厄介ごとを抱えてる。それも相当大きいものだろう。奏者が総力をあげないといけないレベルである可能性すらある、か。
「ならいいや。もし話す気になったらすぐ話してもらうからね」
「うん。味方はいたほうがいいし」
「あ、あと、その思考を口にする癖は直しておいたほうがいいと思うよ?」
「善処する」
まあ、気持ちはわかるけどね。頭の整理するのに思考を口に出すっていうのはいい手段だから。
「じゃあ、二人を呼びますかね」
白沢太陽、あっちも私的にはよくわからないんだよね。陰陽師として骸家が有名とはいえ、落ちこぼれとしてまともに教育してもらえなかったこともあってほとんどほかの陰陽師家についての知識はない。だから、あの白沢太陽という人間がどういう人間なのかわからない。
どこかで問い詰める機会を作らなきゃな~。
「どうした?」
「うん。ちょっと考え事」
やっぱり、見た目とは裏腹に落ち着いた子だな~。
「ふーん。変な人」
「そういうことは口に出すなっての」
聖人というわけではない私にはイラっとしちゃうわけでして。
「お~、お二人さん、お疲れで」
「疲れてないでしょ」
確かに外で待ってただけだろうしね。疲れるわけないか。ただ、そこは乗ってくれるってのが人情ってもんじゃないかなぁ?ベルさんや、そんなんじゃ友達出来ませんぜ?
「そいじゃ、帰りますか!」
「え、私も巻き込まれる感じ?」
当然でしょうに!
「だいじょーぶ、私たちは家にはまだ帰りゃしねえからね!」
そう言って、私は未来の肩に手を回す。当然、理由は任務なのだけど。
「……デートならお邪魔になるから」
「いや、僕もいるから大丈夫だよ?」
「お前も来るのかよ?」
太陽君に未来が突っ込みを入れている。うーん、私たちは秘密結社的な存在なわけであまり、着いてこられても困っちゃいますなー。
「まあ、のんびりとお散歩と行きましょう」
まあ、ばれちゃいけないのは組織のことだけで、私が陰陽師だってことじゃないし、未来の身体能力もまあ本人がばれていいと思っていたら別にいいだろう。聞いたことはないから知らないけど、少しは大丈夫になっている、そんな気はする。ばれたくないっていうなら、術でも掛ければ見えないようにするなり記憶いじるなりできるし、最悪はそうするってことで。
「……断れない」
いやー、思っても口に出しちゃダメだってー。まあ、気持ちは分かるけど、私たちはそう言う存在なんで、拒否権を拒否する拒否権を発揮します、なんてね。……いや、何言ってんだろ。
「さてー、どうする?カラオケとか行く?」
「さもいつものことみたいに言うが行ったことねえだろ」
「まだないね」
「まだないな」
うん。まだ行ってないだけで、何度か行くことになるだろうね。
「あ、私は割と下手だから」
「予防線張んなよ」
「ふふ、人に聞かせるようなものじゃないので」
いやー、歌ったことないからねー。そもそも歌詞が分かる曲があるのかっていう問題。だったら行くな、提案するなって?……学生たるもの、放課後はカラオケ、それが基本でしょ?
脳内で、ひどい偏見を思い浮かべながら、私たちは学校から脱出する。昇降口は炎天下に照らされて……、だめだ私情景描写に向いてなさすぎる。つーか、脱出ってなんだ?ただ外に出ただけだろうに。
「にゃ?」
瞬間、私たちに閃光が降り注いだ。
「祈!」
未来の叫ぶ声が聞こえるが、瞬時に結界を張り巡らせ、その閃光を防ぐ。いやー、しろが打ってくるレーザーのほうがやべーぜ?この程度余裕で防げるっての。まあ、流石に目をつむったらきついけど。
「で、なにこれ?」
少し冷静になって、私はその閃光の発射元を探す。
「早いなー。いや、想定外なんだけど」
ベルが何かつぶやいている。彼女は何か知っているってことね。とはいえ、元凶ってわけでもなさそう。私たちを巻き込んだってとこかな?いや、私たちが巻き込まれたってのが正しいかー。こっちから迫ったわけだし。
「……見っけ」
周囲を観察し続け、それらしい影を見つける。瞬間、私は宙に浮かびそこへ直行する。
「おい、待て!」
「あ、君も着いてくるんだ?」
未来が私に並走してくるものでそんな声を上げてしまう。いやー、てっきりばれないほうを優先するかと。
「そりゃ、相棒なんだろ?」
「そうだね!やってこっか」
成長したもんだ。うんうん。いいことだなー。
「じゃ、私は先行するから、頑張ってついてきたまえ!」
「いや、流石に機動力が違いすぎだろ!」
彼の叫びを私は聞き流して、空を飛び回る。空気は読むもんじゃない、飲み込むもんじゃぜ?いや、冷静に考えたら、機動力の高い私が先行するってのは間違いじゃねえと思うんですよ。
そんなこんなで、唐突な襲撃の元凶へ私たちは向かうのだった。




