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化け物  作者: 宵野 雨
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第35話 守れない約束

 私は銃弾をその男に向けて放ち続ける。


「そんなものが当たるとでも?」


「思っちゃないってね」


 私は銃を上空に向けて発砲する。


「何を撃って……」


 男はいくつもの物質を創造して私に向けて放っていた。その中には当然、物質的な質量をもっているものもあるわけで。


 先ほどの爆弾魔との戦闘で利用した火薬のコンテナが吹き上げられた、そのタイミングで私はそれを撃ち抜く。


「……ちっ」


 エンドロールから流れ込む情報が切り替わり、男がまだ生きていると主張する。とどめを刺せたかどうかすら、一瞬判断が遅れてしまう。ことごとく相性が悪い。


「どうした?この程度かよ」


「即死してもおかしくないと思うんだけどね」


 どうする?この男を確実に殺すには。認識される時点で、私の攻撃は届かない。つまり、男が認識できないタイミングで即死させる。いくら超能力が強力だろうと、死んでしまえば発動はできない。そこを狙うしかないか。


「――っ」


 流れ弾を避けきれずに頬を掠める。何が掠めていったのかは認識できなかった。


 長期戦になれば、傷を負い続けることになる私が不利だ。どこかに、一撃で気づかれずに仕留められる武器はないか?


「手札はすべて切ったか?世界最強」


「ふざけんな、チート能力者が」


 手加減されているのだろう。私を殺すだけなら簡単だ。猶更、こいつが余裕を見せているうちに殺さなければならない。

 拳銃を再度その男に向ける。これを放ったところで、私の攻撃は届くことはない。だったら。


 どれくらい弾丸が残っていただろうか。リロードする余裕もこの戦闘中に訪れることはないだろう。連射する未来を想像して……。あと3発か。エンドロールから流れる未来を見て、その事実を認識する。


 十分に可能性はある、か。


「ほら、早く仕留めてみなよ」


 煽って、その男の攻撃を誘発する。こいつの戦闘経験はほとんど皆無だ。今まで、超能力の出力に頼りきりで、ろくに駆け引きの経験はない。だから、この誘いにその男は乗る。


「お望みとあらば、殺してやるよ!」


 一斉に飛来する、物を私は横に跳んで避け、そのまま駆け抜ける。……見つけた。

 私は、一度に地を蹴り、無理やりに方向転換して、男の目の前を目指し駆ける。


「近寄ってどうにかなると思ったか?」


 私とその男の間に壁が創造され、私の行く手は阻まれる。


「それはどうかな?」


 私は上空に向けて銃を放つ。


「ワンパターンだな?」


 先ほどと同様に舞い上がっていたコンテナを打ち抜いて、爆風で砂ぼこりがあたりを包む。

 だから、私はその男の懐まで駆け抜けて、その脳天に銃を突きつけ、放つ。こいつが私の攻撃を防ぐには認識することが大前提だ。であれば、ゼロ距離の弾丸を防ぐすべはない。加えて、辺りは砂ぼこりで視界はほとんど何も見えない。であれば、私の接近に気づくことのできない男を仕留めることだって可能だ。

 突きつけられた瞬間に、防ぐすべを想像して創造することは流石に難しいだろう。


 ……そうして、私の期待は裏切られる。


「痛い、痛い、いたいいたいたい」


 脳天貫かれてるのだ。さすがに生きちゃいないと思ったのだけど……。


「最悪だね」


「ふざけるな、この俺に傷を負わせた罪は重いぞ」


 こんな理不尽と戦わされてる私のほうがひどい目に合ってるって、絶対。


「なっ!」


 銃を向けようとした瞬間、私の体に衝撃が加えられる。銃を手放さなかった私をほめてほしい。


「流石に今のは危なかったが、いいことを知れたな」


「いや、ずるくないかなぁ」


 認識できない速度で攻撃してくるならもうどうしようもないわけで。エンドロールから流れ込む情報で状況を理解する。男は、私に拳銃を突きつけられた瞬間、一か八かで強い自分をイメージした。あやふやなイメージだが、能力は応え、銃弾を防ぎきるには至らなかったが、致命傷を避けることができた。身体構造でも変わっているのだろうか。


「……ギブアップ」


 いや、無理だ。ああ、最悪。全く勝てる未来が見えない。これから私は、あっさりと殺される。それで終わり。エンドロールもそう伝えてくる。私が何か行動を起こそうとしても、起こす前に殺される。


 ……あとは任せたよ、しろ。

 あの時、私はひとつしろに依頼をした。もし、私がいなくなったら奏者のリーダーになってくれと。もし私の代理が務まるとしたら、彼女以外にはいないだろう。

 あの時の約束は単純で、私が死ななければリーダーを続けろと言われた。

 それだけで……。ごめんね。ちょっと、死なないって未来はなさそうだ。


 そっと、来る終わりを目の前に私は目を閉じる。これは報いだ。好き勝手やった私への。不相応にも世界最強にまで上り詰めてしまったしまった私への。だから、もういい。私は、主人公になれなかったけど、それなりに頑張れただろう。だから、もういいのだ。


「……ん。そんな終わりは認められないよね」


 そんなとき、突然に聞こえるはずのない声が聞こえてくるのだった。

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