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化け物  作者: 宵野 雨
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第34話 エンドロール

 あるとき、私に超能力が宿った。それまではただの単純で、純粋な少女だった。私の超能力は主に2つの効果がある。

 一つは、過去、現在、未来が記された本を顕現させる力。そうして、もう一つはその内容を体験する力。たらればを、際限なく体験できる。だから、どんな窮地だろうと最善手を導き出すことができる。

 降り注ぐ流星だろうが、どんな戦闘技術を持った相手だろうと、絶対に負けることはない。なんど死を経験したのかわからない。ただの少女だった私は何度も人生を経験するうちに、こんな大人びた人格を形成することになってしまった。まあ、そこについては全く後悔はしちゃいないし、私という少女はそういう役割なのだろうと理解した。


 色々と、経験をしてきたわけだけどこんな超能力を得て浮かれていなかったわけがない。昔から好奇心は強いほうだった。だから、こんな超能力を得ることになったのだろうけど。

 すべてを知っている、そんな感覚すらあった。実際、知ろうと思えば何だって知れた。その結果がこれだ。


 明らかに私をメタるような、そんな登場人物が目の前に現れた。こいつの存在を確認して真っ先に違和感を感じた。我ながら、この超能力は強力すぎると思う。すべてを知って、すべてを体験できて、当たり前だけどそんなのはつまらないだろう。

 だから、世界は私の存在を許すはずがない。神様がいるとするなら相当に理不尽だ。勝手にこんな役目を負わせておいて、用済みになれば始末する。くそったれだ。


 私がこの超能力を得て、大体1年後に世界が終わった。いや、終わるはずだった。最初はたしか、超能力の暴走実験か何かだっただろうか。一応、超能力というものはこの世の中の裏ではとっくに知られている。だから、それを強くして強大な軍事力を手に入れようと考える人間が現れることも自然と言えた。


 しかし、私個人の力は小さい。炎が出せるわけでもなければ、変身できるわけでもない、そんな一般少女の一人である私に世界の終わりを止めるなんてことできるはずもなかった。何度も、私が主人公のように率先して世界の終末を止めるルートを探した。結果として、何度も死ぬ羽目になったし、結局何もできず、私は諦めた。この時点で私には、大それた活躍は求められていないのだと理解した。主人公のように壮大な冒険をして、死力を尽くして世界を救うなんてできなかった。だけど、そのまま世界が終わる様子をぼーっと眺めているわけにもいかなかった。世界を救うルートへ導く、そんな存在にならないといけない、そう考えたのだ。


 そこで私は、奏者という秘密組織を立ち上げた。最初は私の運営力も素人同然であったから何度も滅ぼされてきたけど、それらすべてを回避するルートを模索し続け、今じゃ世界有数の超能力者の組織まで至った。私一人ではどうしようもなかった世界の終わりだって、いくつも乗り越えてきた。要は神様の調整ミスだ。超能力なんてものを実装してしまったがために、世界はあまりにももろくなりすぎた。その調整役として、私が生まれたのだろう。


 懐かしいな。私の組織には、本来の世界線では敵だったはずの人間も多く所属している。例えば、しろは本来スラムの王だった父のいいなりになって、世界を終わらせるに至った。彼女の頭脳は脅威だった。彼女は本来超能力者ではなかった。だから、反転なんて超能力を得たというルートには驚いた。それがなくても、彼女は超能力を解析して再現するだけで世界を終わらせる、それくらいの人間だった。

 ほかにも、祈だって、アリスだって、玲央だってそうだ。


 そんな風に、必要で優秀な人間をスカウトし続けて、いつの間にか彼らに慕われるようになって。そんな事実がひどく嫌だった。何人も救えなかった人がいる。すべてを救うには私には力が足りなかったのだ。私はそんな人々を切り捨てて、彼らを救った。みんなが思っているほど善人というわけでもなくて、ただただ、必要な人、不要な人を判別して救う、救わないを判断するしかなかったのだ。罪悪感がいつまでもなくならなかった。


 ……そして、一番は彼らのほとんどがもともと私を殺してきたということが怖かったのだ。だって、私は確かにいろいろな経験をしてきた。だけど、一人の人間だったから、であってしまったから、一度裏切られたことは、傷つけられたことは、殺されたことは忘れられなかった。だから、一定の距離を保ったまま、彼らと関わった。しろからも言われていたけど、彼らを100パーセント信頼するのは怖かったのだ。


 ……信頼できなかった。だけど。


「あー!もう!鬱陶しいなー!」


 傷だらけの体に鞭を打って立ち上がる。こんな短時間に最善手を求めるなんてできるはずもなく、私の体には傷が増えていくばかりだった。ぎりぎり致命傷は避けることができている程度。そんな状態でも、あがく。きっと運命だ。少し強い超能力を手に入れたからと調子に乗った私を殺しに来たのだ。だけど、諦めるわけがない。次は運命が敵っていうなら、それも乗り越えりゃいいだけだろ!


 だから、答えろ。エンドロール。思考を回せ。エンドロールから押し寄せる情報の激流をすべて処理しろ。その先にあるハッピーエンドを求めて。

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