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化け物  作者: 宵野 雨
33/65

第33話 主人公になれなかった少女

〈sideフィーネ〉


「爆破爆破ー!」


「……元気だねー」


 爆発好きなのかな?よくわからない感性なんだけども。少なくとも、突然に爆発だー、なんて叫ぶ人の気持ちというのは理解できない。


 崩れ落ちていくがれきの隙間を駆け抜ける。一撃でもあたってしまえば、ただの人間に過ぎない私はその短い生命に幕を下ろすことになるだろう。


「っと、そろそろ」


 私は、駆ける足を止め、一気に体の向きを切り替え地を蹴る。コンテナの裏へと転がり込み、私は駆け続ける。


「隠れても無駄だー!」


 私がコンテナの裏に隠れて移動していると考える青年はその爆撃をやめることはない。確かに、彼の超能力は強力なもので、こんな薄いコンテナごとき、簡単に壊しつくしてしまうだろう。隠れたところでそれごと高火力で爆破してしまえば簡単に人の命くらい奪える。それをすれすれのところでよけ続けているわけですが……。


 そんなことをしているうちに、私の背後で巨大な爆発音が鳴り響く。


「うえー、まじですかー」


 想像していたよりも強大な爆発音に、後ろを振り返れば散々な景色が見えて若干引く。いやー、打ちぬいたコンテナにたまたまあんな爆薬が仕込まれてるなんてねー。お相手さんもついてないねー。


「いや、流石に痛々しいよな」


 なに気取ってんだ?私。分かり切ってた結果だろうに。


「っあ、あぁ」


 爆破と叫び続けていた青年もすでにボロボロだった。満身創痍と言ってしまってもいいほどで、もう立ち上がることもできないだろう。

 懐から拳銃を取り出して、その青年の額を撃ち抜く。もぞもぞと動いていた青年もその動きを止めて、力なく横たわる。流石に死んだのだろう。


「さて、『エンドロール』」


 私は超能力を発動させて、この手に本を顕現させる。

 その本をぱらぱらとめくって。


「問題なしっと」


 その内容を確認してから、私はその青年に近づいて先ほどの爆破後からちょうどいい感じの穴にでも放り込んで着火する。流石に血まみれの死体を背負って組織に戻れるほどの体力はないわけで、身体能力は通常の少女相応である私にはその場で処理するしかないのである。


 そうして、私は燃え尽きるのを待ってから帰路をたどろうとする。しかし……。


「おっと、そうはいかないぜ?」


「……いってくれたらよかったんだけどな?」


 ……。


 突然現れた男の存在に私はため息をつきつつ、言葉を放つ。そうして、素早く私は懐から拳銃を抜き放つ。


「一切、油断するつもりはないよ」


 放たれた弾丸はあっさりとその男の心臓を貫く。


「……終わり?」


 間違いなく、私の銃弾はその男の心臓を貫いた。確実に。

 手元の本をちらりと流し見て、その男がすでに息絶えていることも確認する。

 だから、つまり、私の心配は杞憂だったということになる。


「あー、よかったぁー」


 その事実にひどく安堵する。これで……。



 ここまでが、エンドロールに記された内容である。


「……最悪」


 私の放った弾丸はその男の前ではじかれてしまう。


「どうした?予想外のことでも起こったか?」


「『歌え、エンドロール』」


 ああ、だからいやだったんだ。なぜか突然現れて簡単に殺せてしまう、そんな未来の敵の男なんて。こいつの超能力と私の超能力の相性が本当に最悪だったということだろう。


 周囲に紙が舞い上がる。すべてが過去、現在、そして未来を書き記した物語だ。


「結局、お前の能力は現在から未来を推測しているに過ぎない。因果から結果を導くだけ」


「うん。そうなんだろうね。さすがに君みたいな超能力者と出会わなきゃ知ることもなかっただろうけど」


 ラプラスの悪魔という思考実験がある。簡単に言えば、今この瞬間のすべての物質の状態を知れば、たとえ思考だろうとニューロンによって構成されているに過ぎないのだから、それら含めてすべて知っているなら、未来はすべて予測可能かという思考実験だ。完全なランダム挙動をする物体があるとかないとかの話はあるが、それはともかくとして、私の能力はそれに近しいものだったということだろう。


 つまり、私の能力では突然この世界に現れた物体の未来を予測することはできない。厳密にいえば、現れることを予測できない。


「創造の超能力ってこと、か」


「ご名答!最強の能力だよ、世界最強の君にも勝ちうる」


 私は世界最強ってわけじゃなくて、勝てない勝負をしないだけなんだけど。


「……なめんな」


 確かに、男の超能力で創造されることは予測できない。だけど、創造された後なら別だ。

 エンドロールから流れ込む情報すべてを一瞬で処理しろ。そうすれば、回避可能だ。


「簡単にこの座を降りる気はないんでね」


 世界最強だなんてそんなこと認めちゃいないけど、誰かがそう言うなら私はそれに応えたい。だから、簡単に負けるわけにはいかないんだ。

 雷撃、炎、風、どれも人間が受けたら即死するくらいには極まった威力を秘めている。


 だけど、一発もらえば即死することくらい、大丈夫だろ?いつも通り、死なないルートを勝利へのルートを模索しろ。いつもやってることを一瞬でこなせばいいのだ。大丈夫、それなりに、主人公になれなかった私なりに頑張ってきただろ?

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