第28話 告白!?
俺は彼女のことが分からなかった。いや、分かっていたような気がする。
だから、彼女と話をしないといけない。それが分かってしまったから。苛立ちが脳内を支配する。……ひとまず、五月蠅いあの男を黙らせないと。
そう考え、俺はそのいら立ちをぶつけるようにその男に向かって腕を振るう。そうしてあっさりとその男は吹き飛び、いくつもの壁を貫いて見えなくなった。流石にもう死んでいる、仮に生きていてもまともに動ける状態ではないだろう。
そうして、俺はその少女と向かい合う。俺にとっては眩しすぎるその少女に。
「殺すわけないだろ」
「なんで!もういいの!君なら分かってるでしょ!」
「分かるけど、それを肯定するかは別の話だろ」
「君は私と!私と同類でしょ!だったら分かるはず!私にはそれしか」
きっと彼女は、俺と同じで憧れ、いやそう呼べるようなものかも分からないがそれに殺されてしまったのだろう。俺には否定する勇気がなくて、彼女にはそれがあった。それだけの差なんだ。
「少なくとも俺にとっては、祈はかっこよかった」
「は?ふざけたこと言うな!かっこいいとか、そんなの!」
「違う。祈が、かっこいいと思ったんだ」
「だから、それは私じゃない!分かってるでしょ!」
泣き叫ぶ少女の気持ちが分かってしまう。似たもの同士ゆえに、気持ちは分かる。頑張って取り繕って、それに限界が来てしまった。そんな状態なのだろう。
それが分かる。分かってしまうのに俺は彼女にどう声を掛けたら救えるのか分からなかった。だから、俺にできるのは……。
「きれいだと思ったんだ。眩しく見えたんだ。俺にはできなかったことだから。だから、頑張ってみようってそう思えたんだ」
化け物と呼ばれたとしても、俺はもう一度ヒーローにあこがれてしまったんだ。彼女が俺を連れ出してくれたから。
「違う、そんなの私がやったんじゃない。どうせそんな役割私がやらなくたっていつか誰かが君をこの道に連れて行ったんだ。君は自分が思っているほど弱くない。私と違って」
「……あー!もう!イライラするなぁ!」
「だったら、それを……」
「ふざけんなよ!俺はお前に救われた!その事実は変わんねぇんだよ!」
「なんなの!もう!私はそんなできた人間じゃないんだって!であっちゃいけないんだって!」
本当にイライラする。なんでこうも自分を卑下的に見るのかと。そして、同時にこうなるまで気づくこともできなかった俺に。俺になら分かる可能性だってあったんだ。俺にもこうなる可能性があったのだから。
「俺には諦めることしかできなかったんだ。恐怖から逃げ出すことしかできなかったんだ」
「一緒だよ!私も逃げたんだ!だって怖いから!辛いのは嫌だから!だから……」
「だから、何も考えたくなかったのか?」
「そうだよ。だから、無邪気を装って、私を隠したんだ」
「……だったら、だったらどうして俺を誘った?」
「どうしてって……。私に似てると感じたから」
「どうして似てるからって勧誘した?なぜ本性に気づかれる可能性の高い俺を選んだんだ?」
「……ああ!どうでもいいんだよそんなことは!私の行動に合理性なんてないんだ!考えてないだけなんだ!君を誘ったのは、私に合いそうだったから、そんな浅い考えしかしちゃいないんだよ!」
「合理性とかそんなのどうでもいいんだ。一旦黙って聞いてくれ。ただただ、俺は……」
彼女のことは分からない。どんな言葉を尽くそうとしても、思考を重ねても。なんの理由もなくこみあげてくる感情なんて本人以外にはわからないのだ。だから、俺にはこうして自分の心を、思いを、祈りを単純に言葉にすることしかできないのだ。
「あの時、嬉しかったんだ。俺は、一人じゃ立ち上がれなかったから。だから祈が俺に声をかけてくれて、連れ出してくれて嬉しかった。ずっと言いたかったんだ。今分かったんだ。俺がなぜ祈に惹かれたのかって。祈は諦めたとか言ってるが、実際行動は何一つ変わっちゃいないんじゃないか?頑張って強くなって、人を信じようとして。……逃げ出して、関わらないようになった俺とは違って。祈がそんな人間だったから俺は惹かれたんだ。その呆れるほどの自己犠牲精神で救われた人間もいるんだよ。だから、そんなこと言わないでくれ」
頭に思い浮かんだことを、そのままに吐き出し続ける。自分が何を言っているのかも理解していなかった。だから、俺は彼女の表情も何も見ちゃいなかった。
「……えーと、そのー、惹かれたってそういう意味でいいのでしょうか?」
「……」
だから気づかなかった。顔を真っ赤に染めた祈の姿に。……一体俺は何を口走った?いろいろと言葉を吐き出したのは分かるのだが。
自分の言葉を思い起こす。
あ、ああ!全部言ったよな?俺は。こんな状況で何言ってんだよ!本当に!
「いや、えー。あ、ああ。そう受け取ってもらっても」
今更言葉を引っ込めることもできず、肯定することしかできなかった。仕方ねえだろ!ここで嘘なんて言うのは男じゃねえだろ!?
「う、うん。返事は、もう少し待ってほしいんだけど……」
「……それで大丈夫だ」
なんだか、空気が途端に崩れ落ちたような気がする。いや事実空気は変わってしまっただろう。
「と、ともかく!私はもう大丈夫だから!……流石にくらくらしてきたけど」
「……え?」
それもそのはずで、祈は生きていることが不思議なくらいの重傷だったのだ。変なテンションになってたおかげで息を続けられたわけで……。
「まあ、私としてもさっきの言葉は嬉しかったよ。だから、少しだけやってみたいことがあるんだ」
「いや、その体で無茶は……」
全身からだらだらと血を流しながらそんなことを口にする祈を俺は止めようとするが、意思は固いようで、祈はまっすぐと先ほど男を吹き飛ばした場所に視線を飛ばす。
「ここまで言われたら、私も先輩の意地ってのを見せてあげないとね?」
あなた死にかけだし、俺があの男は吹き飛ばしたはずなんですけど……。意地見せる場面と違う……。そんな言葉が出る前に祈はその言霊を紡ぐ。




