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化け物  作者: 宵野 雨
21/65

第21話 居場所

「ここが地図に示された場所なんだけど」


 翌日、俺たちはフィーネから渡された地図を頼りに、進んでいた。


「……なにもないな」


「そうだねー、流石に何かあるかと思ったんだけど」


 進めど進めど、見えるのは緑。木々を眺めるのは割と好きだったのだが、鬱蒼とした茂みの中を進むのは不快感があった。


「まあ、リーダーもすべてチェックしてるわけじゃないだろうからな」


 かなり組織のほうも忙しいらしいし、すべての任務についてフィーネが確認するわけもないだろう。


「それはそうなんだけどねー。リーダーはしてそうというか、そんな信頼がある」


「少なくともまだ俺にはわからねー感覚だな」


 いくら大人びているといっても人間であることに変わりないし、限界はあると思うのだが。


「……にしても、どうやってこんな任務になるような情報を集めてんだろうな」


「それはそうなんだよね。一部、政府から言われたものもあるんだろうけど、それだけじゃこんな数にはならないだろうし。まあ、現実的に考えるならしろが何か異常を検知するシステムでも構築してるんじゃない?」


「その発明が現実的かどうかは置いておいて、可能性があるとしたらそれくらいか」


「ん?何か見えてきた」


 そんな雑談をしていると祈がそんな言葉を漏らす。

 彼女の指さす方向に視線を向けると、そこには一つの小屋がたたずんでいた。


「一般的に考えるなら、山に来た人が使う休憩用の小屋だろうが……」


 だとすると、小屋の目の前にまで生えている木々があることが引っかかるし、放置されていたにしては小屋がやけにきれいすぎる。


「なぜか小屋にだけ管理が行き届いているってことね」


 偶然だろと割り切ってしまいたいところだが、フィーネから調査を依頼されていることを考えると無関係だとは思えない。


「……んー、やっぱりここおかしいね」


 祈がスマホを眺めながらそんなことをつぶやく。


「おかしいって?」


「これ見て」


 俺がそう問いかけると、祈は俺にスマホの画面を見せつける。画面に映っているのは、画面いっぱいの森の写真。航空写真のようで空中からとられている。


「上空からこの小屋は見えそうだけど、航空写真には写っていない」


 確かに、この場所は木々が茂っているとはいえ、上空から全く見えないほどではない。


「だとすると、認識を阻害する何かがあると考えるのが妥当か」


「最近建てられた小屋って可能性もあるから、組織の衛星で確認してもらうように申請はしてる。……と、来たね」


 そう言って祈は画面を俺に見せつける。そこには先ほどと同じで小屋の姿は見当たらない。


「超能力が関わってることは確定ってことか」


「……どうだろ?単純な光学迷彩の可能性も考えられる」


「光学迷彩って、そこまでできるもんなのか?」


「一般世界が遅れてるんだよ。このくらいなら、組織でも簡単にできるからね」


「遅れさせてるってわけではねえよな?」


「そこは管轄外だから知らないね~。まあ、まず君は視野をもっと広く持つことだね」


 こちとら一般人ぞ?そちらの常識にあてはめないでほしいものだ。


「とかく、原理は組織側が解明してくれるでしょう。ってことで、少しこの場で待機かなぁ。次の指示を待つ感じで」


「このまま突入とかはしないんだな」


「してもいいけど、相手の手の内が全く分からないからね。ここは、組織の解析結果を待つほうがいいと思う」


 確かに、情報は少しでもあるほうがいいか。



 そうして、俺たちは、その小屋の前で待機することになった。

 指示が来るまで、移動はできないからじっと小屋を眺めていた。


「未来はさ、組織に入ってよかった?」


 そんな中で、突然祈にそんな会話を投げられた。


「よかったかよくなかったかは何とも言えねえな。非日常の世界にはなったと感じてるが」


「そうだよね。流石に環境が変わりすぎたから、いい悪いの判断はつかないか」


「まあ、でも、少なくとも後悔はしてないな」


 まぎれもなく、それは本心だった。よくわからない世界に送り込まれ、怪我もなんなら死の危険すらもある。そんな世界、生活に変わってしまったのだがそれを後悔しているわけではない。


「ここには俺の居場所がある、そう感じるからな」


「……ほぉ~。いいこと言ってくれますな~。エモいってやつ?」


「茶化すなよ。これでもまじめに言ってんだよ」


「……これで後悔してるって言われたらさすがに罪悪感を感じてたからさ」


 確かに、思い返してみれば祈に組織に無理やりに入れられたわけだ。いくら祈が鈍感だからと言って、善悪の区別がつかないというわけではない。それに罪悪感を感じたって不自然ではないのか。


「そこまで気にすんなよ。俺が後悔してないならそれでいいだろ」


「……なに~?主人公気取ってんの~?」


 そう言って、いつも通りの無邪気な笑みを浮かべる祈。


「柄じゃねえな」


 主人公のように俺はかっこよくはなれない。だけど、同時に悪い気はしないのだった。


「さ!組織からの連絡も来たし、突入するよ~!」


 いつもと変わらない様子で、祈はそう言って片手を突き上げる。


「見つかったらどうすんだっての」


 その様子に俺は苦笑ながら彼女の後を追うのだった。やけにわざとらしい笑みを浮かべる少女を。

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