第20話 次の任務
「では、続いての任務を伝えるよ」
「リーダー、ペースが早くない?」
翌日、俺たちはリーダーの執務室まで呼び出され、新たな任務を授けられそうになっていた。
「悪いとは思ってるけど、最近いろいろ起こっててね。人手が足りてないんだ」
「うーん。なら、仕方ないとは思うんだけど、新人がいるんだよ?あんまり難しいのは辞めてね」
「大丈夫。そこまで難易度の高い任務は選んでないから」
こんな感じで、俺は完全に空気となって祈の交渉を眺めている現状だ。いや、新人の分際で意見するなんてできないし、祈のように話せるほど、会話能力があるわけではない。いや、話し方が分からないという面が大きいのだが。
「……というわけで、任務が入ったんだけど、未来は大丈夫?」
「大丈夫だ」
特段、予定があるわけでもないし断る理由もない。
「じゃあ、この件は君たちに任せるよ。資料は後で送っておくから、確認しておいてね」
「りょうかーい!まかせろだぜ!」
「……」
軽い返事をする祈をフィーネは軽くにらんで、再度俺に向き直る。
「君はまだ二回目の任務だし、そこまで気負わず、頑張ってね」
「分かってます」
前回はしろに完全に任せる形になってしまったし、今回は足を引っ張らないようにしないといけないな。
そんなことを思いながら、俺たちはリーダーの部屋を後にするのだった。
「おー、いらっしゃい」
夜、獣の姿になった俺はしろの部屋にやってきていた。この体じゃ、スマホもまともに使えないし、暇なのだ。人と雑談できる場所があればそこに向かうのは当然だろう。
「しろはなんでこんな遅くまで開発やってんだ?」
いざ、雑談相手を探しにしろの部屋を訪れた俺は、今もまだ研究を続けているしろの姿を見てそんなことを聞く。生き死にの関わる組織とはいえ、こんな深夜まで研究させるよう強制することはないらしいが。
「んー、しゅみてきな?」
「最近ずっと、しろねえはやってるからね~」
しろの頭からひょっこりとアリスが現れてそう補足する。
「ま、わるいことはやってないから」
「別に責めるつもりはないんだが」
「ん。わかってる」
「私もお手伝いしてるの~」
「それはえらいな!」
どやっとそう言い切るアリスを撫でつつ、そんなことを口にする。
「ふわふわ~」
「あたまにのせてるとおもいから、ありがたい」
アリスは俺の毛の中に入り込み、暴れまわっている。見た目はしろやフィーネと一緒だというのに、こうして見ると性格は全く違うな。
「それ、くすぐったいとかはないの?」
「言われてみればないな。アリスがいることくらいは分かるんだが」
「感覚も変化あり、と」
小声でしろはつぶやく。独り言は普通の口調なんだなと思いつつ、俺は疑問を口にする。
「俺みたいな変身するタイプの超能力者もいるのか?」
「いる。けど、いしきてきにできるたいぷか、ずっとへんしんしたままがおおい」
「つまり、時間で切り替わるのは珍しいってことか」
「ん。じゃあ、つぎはきろくみせて」
しろからそう言われ俺は一枚の紙を差し出す。しろから、何時に変身して、何時に解けたかの記録を出すように求められたのだ。
「……だんだんへんしんじかんがのびてる?」
「1、2分の差だから体感じゃ全く分からなかったがそうらしい」
「ん。でも、さいきんいちどみじかくなってる」
「……そうなんだよな。タイミング的には任務が終わってすぐだな」
「いぜんにもなかった?こういうの?」
そう問われて思い返すが、すぐには思い浮かばなかった。
「覚えてねぇな。記録取る前は、傾向なんて考えてなかったし」
せいぜい、夜に体が変化する程度の認識しかなかった。数時間の変化があれば分かるだろうが、数分の変化じゃ記録していないと分からなかった。
「だったら、このあたりでかわったようなきがするとかはない?」
「そうだな……」
そう問われて、俺は少し思考する。
「考えてみれば、この組織に所属したタイミングは短くなったかもしれない」
「ん。とすると、この組織が何か関わってる?いや、それなら私にも何か分かるはず……」
「いや、感覚的にそんな気がするってだけで、確証はあるわけじゃないぞ?」
「それもわかってる、けどなんらかのかせつをたてたくなる。たぶんしょくぎょうびょう」
「研究者のさがってやつか」
「ん。でも、かせつをたててけんしょうするのはたいせつ」
しろの言ってることも分かるのだけど、常にそんな思考をしながらというのは、なかなか難しい。
「とりあえず、きょうはこれくらいで」
「分かった」
「ねえ?お兄ちゃんはその姿が嫌なの?」
今日はもう、切り上げようかというところで、アリスがそんな声を上げる。
「まあ、できることなら、戻りたいけどな」
この姿になるようになってから、不便があるかと言えばそこまでない。だから、できれば戻れるようになりたいという程度なのだ。
「だめだよ?私たちの力は、そういう意思に敏感だから。元に戻りたいなら心から思わないと」
その言葉に、俺はなぜか何の言葉も返せなかった。
「……すこし、かくにんすることがあるからくつろいでて」
俺が黙り込んでいるとしろはそんな言葉を言い残して、部屋から出ていく。そして、部屋には気まずい空気が広がる。だけど、その空気を切り裂くような言葉は口に出せなかったのだった。




