表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
化け物  作者: 宵野 雨
14/21

第14話 初任務

(sideしろ)


 未来の武器についての相談を終え、その夜私はリーダーに呼ばれていた。


「生産部のしろに頼むことじゃないんだけどさ、任務を任せたい」


「なんで?」


 私は強い。だが、それは戦闘技術という面でのみであり、能力ありきであればせいぜい中の上程度だろう。そんな私に任務を頼むとはいったいどういう事情があるのだろう。


「しろが適任だから、それ以上でも以下でもない」


 リーダーは表情一つ変えずにそう告げる。こういうときのリーダーは何を言っても撤回することはない。つまり、引き受ける以外に選択肢がないのだ。


「はぁ……。正直、面倒だけどそこまで言うならやる」


「頼んだよ。しろ」


「また、勘なの?」


「そういうことにしておいてよ」


 リーダーの能力は謎に包まれている。世界最強と呼ばれる少女。わずか10歳にしてその地位に上り詰めた天才。私とは違って、見た目と年齢が異なっているわけではない。

 恐ろしいほどの推測や感の的中率と、戦闘では絶対に負けない、だから、彼女は最強まで上り詰めたのだ。そんな彼女の能力は不明。様々な推測ができるが、最も可能性があるのは未来予知。だからこそ、彼女は感を外さないし、負けるという未来は回避する。それが彼女の力じゃないのか、私はそう推測しているわけだが。

 それを口に出すことはしない。必要がないから。彼女の能力が何であれ、私たちを救い出したのは彼女であり、それだけで私たちが彼女に尽くす理由としては十分だ。


「了解。じゃあ、リーダー説明をお願い」


「いつもありがとね。じゃあ、説明を始めるね」


 そうして、私にその任務が与えられるのだった。



(side未来)


 そして、また今夜もまた、しろの部屋に化け物の姿でお邪魔していた。


「それで、俺たちにも協力してほしいと」


「そう。しょうじきはんたいではある。まだ、こういうにんむするのははやいきがするけど、りーだーのめいれいだから」


 こうして聞くと、リーダーであるフィーネのワンマン組織のように感じるが、しろの目には確かに意思があり、それはリーダーであるフィーネへの信頼だろう。仕方がなく従っているという様子は一切ない。


「分かった。詳しい内容を教えてくれ」


「いのりがいっしょのときにもせつめいするけど、こんかいのにんむは……。普通に話す。分かりにくいだろうし。改めて、今回の任務はある屋敷の調査。力を持ってる人間が関わっていると推測される現象が起こっているらしい。曰く、屋敷に入ると、意識を保てなくなるって」


「つまり、近づくと気絶させられる屋敷ってことか?」


「そう。気絶してしまうようなガスが近くから発生しているわけでもないし、何らかの力以外に理由が考えられないらしい」


「なるほど。被害状況については?」


「あくまで気絶させるだけだから、死者、けが人については出ていない。どうやら心霊スポットになってるみたいで、肝試しに来た若者の多くが入ろうとして気絶した状態で発見されるって現状」


「封鎖するだけじゃダメなのか?」


「それは私も思った。けど、力を持っている人間がいるならいつまでもそこにいるとは考えにくい。だから、調査をする。……でいいはずなんだけど」


「はず?」


「ん。リーダーはこの問題を解決するようにって言った。だから、何らかの理由があると思う」


「急いで解決する必要があるのか、それとも別の理由かって感じか」


「急いでの解決が必要なら、早めに準備してかつ万全の状態で取り組めるようにしないといけない」


「なるほど……」


 初任務がかなり重要そうなものになって多少の緊張はある。しかし、どんな状況であれ、諦めるのはらしくないよな。そう考え、俺は決意する。この初任務を達成すると。


「ちなみに、気絶への対策はあるのか?」


「粉末ペッパーX?」


「世界一辛い唐辛子じゃねえか!」


 え、それで気絶を回避するの?あと何気に粉末にして、摂取量増やそうとしてんじゃねえよ!


「じょーだん。気絶防止の薬はある」


 そう言って、しろはいくつかの錠剤の入った箱を俺に見せる。しろの冗談は分かりにくいな!?


「私用だから1錠しか今持ってないけど、量産はできる」


「それで回避すると……」


 その薬の効果がどれほどのものなのか、俺には分からないが、まあこの組織のことだ。気絶できなくなる薬くらい簡単に作れてしまうのだろう。


「で、一応、完成したから渡しとく」


 そう言って、彼女は俺にナックルのようなものを差し出した。しかし、前回見せられたものよりデザインやつくりは簡易的なものになっている。


「これで大丈夫なのか?」


 見た目では、前回のナックルのほうが強そうに見える。


「だいじょぶ。相手に当たる瞬間バリアを作ってそれで殴るようになってるから、直接触れることは回避できるようにしてる。むしろ軽量化されて扱いやすい」


 軽量化については、俺の力が人間離れしているからか、ほとんどの影響がないが、バリア、かぁ。本来、その存在はSFの中にのみ存在していた概念だろう。実際にバリアを一瞬で生み出せる装置なんて聞いたこともない。いや、そもそも、バリアを生成できるものなんてこの現実では見たこともなかった。


「あと、その姿でもつけれるように、サイズ調整機能も付けてるから問題ないはず。変身した時は一緒に消えないようにもしてる」


 バリアだけでも超技術だというのに……。現実味のない機能ばかり詰め込まれたナックルを見ながら俺は思わずため息を吐いてしまうのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ